第29話 ブルー村の闇
———その日は寝るのが早かった為、リリアは少し早めの夕ご飯を宿屋のキッチンを借り作り始めた。
ライト 「リリア!今日のご飯は何を作るんだ!?」
調理の支度にかかる為、リリアはマジックバッグから調理器具や調味料、食材を順々に取り出しキッチンに置いていく。キッチンからそれ程、離れていない位置でネイリーは静かに椅子に座りながら見つめていた。
リリア 「ふふ…。今日わね、サケのホイル焼きだよ!!今が旬だってサモン村長が話していたこの魚で調理するんだ~♪」
ネイリー 「ほう?美味しそうだな」
ライト 「そのサケのホイホイってやつ早く食いて~!」
晩御飯が気になるライトは居ても立ってもいられずキッチンの周りにべったり付くようにウロウロとしながらはしゃいでいた。
リリア 「ライト!楽しみではしゃぐのは良いけど、少し行儀が悪いよ?そんな人にはご飯抜き!」
ライト 「ハイ。スミマセン…」
ネイリー (まるで母親と子供みたいな会話だな…)
指摘されたライトはテーブルの方へと歩き大人しく椅子に座る。ネイリーは目の前に座ったライトの顔を見つめながらため息を吐いていた。
―――【30分後】
料理が完成しリリアは3人分のサケのホイル焼きをそれぞれ取り分けて皿に移しテーブルの上にパンと共に置き並べる。
ライト 「いっただきまーす!!―うん、うめぇえ!」
ネイリー 「いただきます。…美味しい」
リリア 「ふふ!良かった!いただきまーす!」
ガツガツ食べるライトは途中、口に運ぶ速度が速いせいか喉に詰まらせ一気に水を飲み干す。その光景を見つめながらネイリーとリリアは呆れた表情でクスクスと笑っていた。ご飯を食べた後はすぐに寝る準備をし早めだが就寝する事にした。
———【翌日】
リリア 「朝方前だからまだ明るくないね…。寒い~~~!!!」
時刻は3時頃、3人はサバルと昨日に決心した場所、ブルー村の海岸沿いにて大きな岩に隠れながら待つ。まだ日が出ていない時間帯、風が強く海の波の音は大きく響くが3人にとっては温度が低く肌が寒く感じていた。寒さに耐えきれないリリアは手を温めようと手を合わせ自分の体温の息を吐いていた。
ネイリー 「リリア、私が持ってきた毛布を使ってもいいぞ?」
リリア 「え~。野宿してた時にライトが使ったやつかぁ…。まぁ、寒いよりはマシか。ネイリー、借りるね!」
リリアはマジックバッグから毛布を取り出し、体を覆うように掛ける。
———【1時間経過】
ライト 「今は4時ぐらいか?」
リリア 「うん。多分そのくらいかな?ちょっと空が明るくなってきたね。」
ネイリー 「今の所、何も無いな…」
3人は海岸沿いで妙な事がないか待ち伏せしているが特に何も起こらなかった。
リリア 「やっぱり『見かけない船が何隻が見かけた』って言うのは気のせいだったのかなぁ?」
ネイリー 「…もう少し、様子を見てみよう」
大きな岩から3人は顔だけ出し海を呆然と眺めていると、日が出始める時間帯になり海はオレンジ色に染まるようにキラキラ輝いていた。
リリア 「わぁ!海がオレンジ色に~!綺麗な景色だね」
ネイリー 「本当だな。海がある場所じゃないと見られない景色だ」
ライト 「絶景だな~!!ブルー村にきてよかったな」
オレンジ色に染まる海を3人は目を輝かせながら眺め、心が満たされている最中だった。そして海に見惚れていると何者かが歩いている姿がリリアの視界に映り、小さな声で2人に話す。
リリア 「…!誰か歩いてきてるよ!」
リリアの小さな声を聞きとった2人は緊張感の中、視点を移すと気付いた人物とは他に3人連れて歩いている場を確認した。
ライト 「あ!!サバルだ!」
ネイリー 「何をする気だ…?」
サバル達は海から近距離の位置まで辿り着くと何か詠唱をし始めると海の上に急に船が現れ3人は驚いた表情でヒソヒソと会話をする。
リリア 「アレって…。魔法じゃない!?」
ライト 「魔法道具か?」
ネイリー 「いや、あれは『転移魔法』だな。どこかの場所から船を転移させたのだろう」
サバル達は転移魔法で船を何隻か出し終えた後、全身から黒いモヤのようなものを纏い放出していた。そして身体は人間の形を保っているが肌は黒く、爪は鋭く、目が赤く豹変し妙な姿へと変身した。
リリア 「あ、あの姿って!!!」
ネイリー 「やはり『魔人』だったか…!書物のイラストと一緒だ」
リリア 「どうする…?勝てるかな?」
ライト 「倒すしかないだろ!!」
躊躇する2人に対しライトはいても立ってもいられない様子ですぐに動き始め『魔人』達の方へと一目散に走りながら鞘から半分、剣を抜き構える。
ネイリー 「ライト待て!!全くアイツは!リリアは私の後ろで援護を頼む!」
リリア 「う、うん!!」
躊躇していた2人だがライトが急に動き始めたので追うように走りながら戦闘準備に構える。
ライト 「サバル…。お前がブルー村の不漁の原因を作った犯人なんだろ…?」
全力疾走で走ったライトはようやく魔人化したサバル達の位置まで辿り着き、少々息を切らしながらも大きな声を出し話す。そして声が聞こえた方向に魔人全員はライトの方へと振り向き不気味な笑みで口を開く。
サバル 「ははは!!お前たちは『冒険者』か。さっさとこの村から出ていけば命が助かったのになぁ!」
そしてライトの背後から2人はようやく追いついたのか息を切らしながら辿り着く。近距離で見慣れぬ魔人達を見つめながらリリアは手に汗を握る程に緊張していたが、ネイリーは冷静で平然を保ったまま叫ぶように声を出す。
ネイリー 「サバル!お前はブルー村の村長の息子だったのだろう!?」
サバル 「……吐き気がする。人間なんて生き物、醜くて哀れで強欲で手に入れる為なら手段も選ばない醜い生き物」
リリア 「ブルー村の人だったのに何故こんな事をしているの…?」
サバル 「理由はただ一つ!!あの方に喜んでもらえるだけのみ!」
大きな声で笑い終えると魔法を唱えたかのようにパッっとサバルの目の前に剣が現れすぐに握りライトの方へ斬りかかる。しかし、直ぐに鞘から剣を抜ける姿勢だったライトも反射的に剣を抜きガードするとカンッ!!と互いに武器が交じる音が鳴る。
ライト 「くっ…!力が強い!!」
ライトは剣で攻撃をガードするがサバルの身体から更に黒いモヤの放出が増え始める。何とか持ちこたえていた大勢をライトは維持するのが難しくなりそのままサバルに吹き飛ばされ隠れていた大きな岩にゴンッ!!と身体が当たり鈍い音が鳴る。
ネイリー 「ライト!!…くっ!リリア!私の側から離れるな!」
リリア 「聖魔法詠唱するね!」
ネイリーは視界に槍を持っている魔人が映り咄嗟に飛びついて拳で攻撃をするが武器でガードされ互角になる。そして、リリアは聖魔法の詠唱が終わり『
ネイリー 「くっ!!強い…!!」
リリア 「全く効いてない!!」
ネイリーは槍を持っている魔人に隠れていた大きな岩より更に遠くへと吹き飛ばされる。
リリア 「ネイリー!!」
目で追うようにネイリーを見ている間に槍を持っている魔人はリリアに狙いを定め素早く移動し武器を振るう。しかし、リリアはその隙を見逃さず咄嗟に目の前にシールドを貼り防御する…が、相手の力が強いせいかそのまま体は吹き飛ばされ3人はそれぞれ違う場所へと倒れ込む。
ライト 「っっ…!!この前の…魔獣ゴブリンとは…全然格が違いすぎる…」
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