第28話 人と闇
ライト 「ああ、あいつ『人』だけど闇を纏っている」
リリア 「!!!」
ネイリー 「な…!!!」
ライトの口から思いも寄らぬ言葉が出た瞬間、2人は驚きを隠せない表情で口を開けたまま硬直する。沈黙の間が空いたが、各々と人と闇の関係性を冷静に整理し終えた後にようやく声を出す。
リリア 「『人』なのに闇を纏うって…!?人は闇に侵されたら死んでしまうんじゃないの!?」
ネイリー 「魔王軍の中に人の形をして闇の能力を扱える者、『魔人』がいるらしい。書物に記載されていたのだが。もしかすると『魔人』なのではないか?」
王宮内で以前、閲覧した情報をネイリーは腕を組みながら口に出すと聞き慣れない情報に2人は動揺の反応を見せる。
ライト 「『魔人』」っていうのがいるのか?」
リリア 「『魔人』もきっと魔王の配下だよね…?」
ネイリー 「その可能性は大だな」
実際に目にした事もない未知の情報について3人は考え込む。しかし、確信的な情報が無い上に話し合いを続けた所で答えは見つからないであろう…と考え、ライトは2人に提案をする。
ライト 「…。とりあえず明日も市場行った後、情報収集をしないか?」
ネイリー 「ああ。わかった」
リリア 「『魔人』かぁ…。ちょっと怖いね」
———【現在】
あっという間に『シーフードピザ』を平らげた3人は一息した後、昨夜に宿屋で話し合った件を回想しながら言葉を交わす。
リリア 「今日はどこで情報収集しよっか?」
ライト 「ブルー村の村長にいつ頃から不漁になったのか具体的に聞いてみないか?」
ネイリー 「そうだな。村長に聞いてから改めて整理しよう」
3人は話し合った結果、座っていた白いテーブルからその場を離れ店員にお代を支払いを済ませると足は昨日に訪れたサモン村長の家へと再び向かっていた。
———【ブルー村の村長の家】
ブルー村の村長の家の前まで辿り着くと、ネイリーの顔パスという名の最強アイテムを所持しているが、昨日に護衛の人達は既に3人との顔の認識がある為、すんなりと家の中へと通してくれた。家の中へと入ると、サモン村長は水槽の中で育てている金魚にエサを与えていた様子で3人の足の音に気付き振り向く。
サモン 「皆さま、おはようございます。昨日は住民から何か情報を得られましたか?」
サモンの挨拶に3人も各々と『おはよう』とあいさつを交わす。そして、本題である情報を改めて聞き入れる態勢でネイリーから口を開く。
ネイリー 「昨日ブルー村の住民から聞いてみたが皆、言う事は村長と一緒だったな。海水の温度が上昇している…と。村長、いつ頃不漁が続いているんだ?」
サモン 「一か月ほど前からですな…。毎年、この季節になると大量のサケが収穫できるのですが、少量しか獲れないのです。」
リリア 「道理で市場でも少ししか見かけなかったのはそういう事か~!あたし結構好きな魚なのに~…」
大好きな食材の中であるサケが少量しか獲れないと聞き、リリアは肩を降ろすように落ち込む表情を見せる。隣で落ち込んでいるリリアを傍目にネイリーは聞いた情報を整理しながら更に質問をする。
ネイリー 「一か月前からか…。何か他に異変はなかったか?」
サモン 「特に…あぁ。そういや見かけない船が何隻が見かけた事があるというのは住民から聞いたことがあります。ただ霧が濃くてよく見えなかったみたいなので気のせいだったかもしれないです」
ネイリー 「霧が濃い…?朝方か?」
サモン 「そうでしょうな。船を出すのは皆、朝早くですから」
ブルー村の不漁問題で新たな情報を得ると、ライトは2人の会話の間に話しを割るように声を出す。
ライト 「サモンのじいちゃん、聞きたい事があるんだけど良いか?」
サモン 「ん?何でしょう?」
ライト 「『サバル』と言う住民は知ってるか?」
『サバル』の名を聞いた瞬間、サモンは驚きを隠せない表情で口が開いたままだが、その名をどの場で聞いていたのであろうか…と考えが過りながらも返答をする。
サモン 「…!?―『サバル』は私の息子でしたが『30年前』の魔王軍との戦争で亡くなりました」
ライト 「サモンのじいちゃん、辛い話をして悪かったな」
サモン 「いいえ。ブルー村を何卒よろしくお願いします…」
3人に対しお辞儀をするサモンに別れの挨拶を済ませ、その場を後にし周辺に誰もいない場所まで速足で移動する。そして、新たな情報、謎の情報を聞いた3人は落ち着いてもいられない素振りで会話をする。
リリア 「『サバル』さんって村長、サモンさんの息子だったの!?どういう事!?私が昨日見たのは幽霊だったのかなぁ…?」
ライト 「しかも、30年前に亡くなってるらしいぞ…」
ネイリー 「…。やはり『魔人』の可能性が大きいな。それに昨日、宿屋の周りを囲んでいた奴らも『魔人』の可能性が大きい」
リリアはもしや昨日に幽霊と話していたのでは無いか…と考え始め身体が恐怖心で震え始めていた。雲の多い空を見上げながら暫く3人は黙り込み、冷静に事を整理出来るまで沈黙の間が空いた後、最初にライトが口を開く。
ライト 「サモンのじいちゃんが朝方に『見かけない船が何隻が見かけた』って言ってたよな」
リリア 「うん。霧が濃いから気のせいかもって言ってたけど…」
ライト 「今日は早く寝て明日、明け方前から昨日サバルがいた海岸沿いを張らないか?」
ライトの提案にいつもの2人ならすぐに首を縦に振り賛同していたが、この場限りは乗り気に乗らないのか目線を斜めに逸らし返答する。
ネイリー 「それは構わないが。…今回ばかりは『魔人』が何体いるか分からないぞ?グリーン村の時はゴブリンの『魔獣』が1匹だけだったからまだ勝てたものの…」
リリア 「12聖将が相手にする敵が何体もいたらちょっと厳しいよ…?」
ライト 「この村をこのままほっとけない」
乗らない返答にライトは自分の意思を曲げず、真っすぐな瞳で2人に率直に話すと折れたのかついに首を縦に振り賛同した。むしろこの場で賛同しなくてもライトの瞳を見る限り、依頼を途中で投げ出さずたった一人でも遂行する勢いだった。
ネイリー「わかった。明日決行しよう」
リリア 「うん…。分かった」
———その日は寝るのが早かった為、リリアは少し早めの夕ご飯を宿屋のキッチンを借り作り始めた。
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