第26話 ブルー村の謎


———【今、この宿屋は何者かに囲まれている】と書かれていた。


 書かれている紙をライトから突き出されリリアは困惑するが、ネイリーは冷静な表情で紙に何かを書きながら口を開く。


ネイリー 「明日はブルー村の市場でも見に行かないか?」


 ネイリーは紙に【会話を合わせろ】と書き、突き出すようにリリアに見せる。


リリア 「ウン、ソウダネ。ココニハ、ナニガウッテルンダロウ」


 会話を合わせるようにリリアは必死の返答をするが、芝居が下手なせいかロボットのように片言になってしまいライトは笑いを堪えながらも場を和ますように声を掛ける。


ライト 「魚が少しでも売ってるかもしれないから、リリア!その時は何か作ってくれよ!」


リリア 「うん!魚料理振舞っちゃうよ~!」


ネイリー 「私は海で獲れる素材を見ないとな」


 ライトの誘導が上手くいき、リリアはいつも通りの明るさを振舞った。しかし、ネイリーの発言でライトは以前、渡されたハンカチらしき得体のしれない物を思い出し冷や汗をかき始め、あえて何も言わず黙り込むように存在感を消した。ライトはそのまま黙り込み会話に交じる様子は無かったが、一方リリアは気になったようで食いつくようにネイリーに声を掛ける。


リリア 「ネイリーは何か物を作っているの?」


ネイリー 「これでも刺繍が得意なんだ。何か他の物でも作れる物がアレば…と思ってな」


リリア 「へ~!意外!ネイリーもやっぱり女子だね~!」


ネイリー「今度、時間があればリリアにも何か作ってやろう」


リリア 「わ~!!ネイリー!ありがとう~!」


 ライトは哀れな表情をし黙り込みながら、頬を赤くして喜んでいるリリアの顔を見つめながら内心呟く。


ライト (リリアもあの得体の知れない物が与えられるのか…。リリア!これも試練の内だ!)


ネイリー 「ライト、急に静かになってどうした?」


 急に黙り込みながら思いも寄らぬ表情をしているライトに対し、ネイリーは紙に【黙っていると怪しまれるから何か話せ】と書き突き出す。ライトは紙を突き出されあたふたと焦る仕草を見せながら咄嗟に考えた返答を返す。


ライト 「ハハ。ネイリーサンノ、ツクッタハンカチ。トテモ、ヨカッタナ」


ネイリー 「全く…。嬉しいのは分かったから、ここで褒めるのは照れるからよせ」


ライト 「ゴフッッッ!!!!」


 ネイリーは照れた表情で背中を軽く叩いたつもりだったが、嬉しくて勢いがついてしまい強く叩きライトはむせる。


リリア 「ライトったらネイリーにハンカチ作ってもらったんだ~!王族が作るハンカチって何かクオリティが高そう~!」


ライト (ある意味クオリティが高すぎだぞ!アレ!!!)


 リリアは王族であるネイリーが作った『ハンカチ』を目が輝いた表情で想像しながら楽しんでいたが、ライトは間違えた返答など出来ない選択に生きた心地がしない心理だった。しかし、3人はその後ブルー村でどのような物が食べ物があるのか…どのような素材があるのか…と想像しながら和気あいあいと会話は弾んでいた。


 そんな楽しんでいる3人の姿をある人物が宿屋の外の窓から眺めながら小声で会話をしていた。


 「王族……?冒険者じゃなかったの?」


 「ネイリーと言ったな。サファイアローメン国の『暴力姫』じゃないか?」


 「王族だと下手に手出しは出来ないな……。手を出したら12聖将せいしょうが間違いなく動くぞ」


 「もう少し様子見だ」


 ある人物たちは話し合った結果、その場を離れる事と判断し宿屋から消えるように素早く去っていった。

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