第25話 ブルー村


 3人はブルー村に向う為、ひたすら歩き続けた。よその村に出かける事が少ないせいか見慣れない景色に新鮮さを感じながら充実した旅をしていた。集落から出発し始めてから数時間が経過し空を見上げると太陽が丁度真上に到達した頃だった。気温が段々と上昇する中、歩き続けていると3人は汗を垂らし疲労が出始めていたので休憩する事となり日の当たらない木陰で草の絨毯の上に3人は座り、出発前にブロンズ街で購入したお水をゴクゴクと飲んでいた。そして、水分補給をし落ち着いた頃にライトが口を開く。


ライト 「確かブルー村ってサファイアローメン国で唯一、海に面しているんだよな?」


ネイリー 「そうだな。ブルー村はサファイアローメン国で唯一、海に面しているから魚の生産量が一番多いな。」


 ネイリーは自分が知っている範囲の情報を頼りに返答すると、リリアも水分補給をし落ち着いたようで口を開き会話に交じる。


リリア 「サファイアローメン国であちこちに魚を売ってるのもブルー村からの物だよね?」


ネイリー 「ああ、もちろんだ。私達が海の幸の食材を食べるのはたいていブルー村から獲れた物だ」


ライト 「不漁が続くとサファイアローメン国で魚を食えなくなっちまうよな…」


ネイリー 「サファイアローメン国でこのような事があるのはほっとけないな。早急に原因を突き止めなければな」


リリア 「私も魚の秘伝レシピの為に頑張るよ~!」


 3人は木陰で涼しみながら遠くにある鮮やかな緑色で照られている大きな山を眺めながら呆然としていた。小刻みに風がサーっと吹いた時は3人の体温を下げる効果となり心地の良い体温まで下がるとウトウトと眠りそうになったが視界が明るいうちに少しでもブルー村に近づきたいので30分休憩後、3人はすぐに再出発した。


———【ブルー村】


 3人は冒険者ギルドから出発してから3日後が経ちようやくブルー村の門まで辿り着いた。やっと目的地に辿り着いた達成感を感じながら3人は門をくぐり抜け、歩き続けるとすれ違う住民達は顔を下に俯けたままで歩き、全く活気を感じ取れなかった。


ライト 「住人達、表情が暗いな…」


ネイリー 「…とりあえず、現状を長から直接聞くか」


リリア 「うん…」


 ブルー村の長の場所まで歩いている間に海が近いのか風が強く吹いていた。そして潮の匂いも感じながら辺りを見渡すが、やはりすれ違う人々は張りの声も無く、表情は暗いままだった。そして、長の家まで辿り着くと護衛の人々はネイリーの姿を見て驚き家の中まで招くと長も同様に驚いた表情で反応する。


サモン 「こ、これはネイリー姫!!遥々ブルー村までどのようなご用件で……」


ネイリー 「サモン村長、久しぶりだな。今日は冒険者ギルドの依頼の件で来た」


サモン 「王族自らですか!?ありがとうございます……」


 ブルー村の村長であるサモンは以前からネイリーと面識があるように反応しながら頭を下げる。そして、ネイリーは「楽に接して構わないと」言い伝え、質問をする。


ネイリー 「不漁らしいが、ブルー村では過去でもそのような事は何度もあったのではないか?」


サモン 「ええ、そうなのですが。今年は以前より魚が半分しか獲れないのです」


  ネイリーは眉間にしわを寄せ、考え事をする仕草で再度、質問をする。


ネイリー 「何か原因は分かるか?」


サモン 「全く分からないのでこちらも困っているのです。住民から唯一聞いた情報は海水の温度が以前より上昇してるとか……。他の情報は住民から聞いてくださるとわかると思います」


ネイリー 「分かった、他の情報は住民に直接聞いてみる」


 3人はサモンから深刻な表情でブルー村の現状を聞き出すと、住民からも情報を得る為にブルー村のあらゆる場所まで足を運び情報を聞き出した。しかし、どの住民に問い尋ねても得られる情報はサモンが話していた事と同じだった。


ライト 「どの人も言う事は一緒だな…」


ネイリー 「海水の温度が上昇しているようだが、それは過去にもあった事だ。ここまで長期間まで不漁になった事は…無いな…」


 ブルー村の中心部から外れた海岸沿いで波の音を聞きながら情報を整理し合っているとリリアは見知らぬ人を発見し指を差しながら声を出す。


リリア 「最後、あの人にも聞いてみない??」


 リリアが指を差した人物は肌が真っ黒では無いがブルー村で一番日焼けしているであろう…と見受けられる男性だった。健康そうな男性もまた海岸沿いで波音を聞きながら日が落ちていく風景を映す海を呆然と眺めていた。3人はそう遠く離れていない人物の場所まで歩き近づく。


ネイリー 「そこの者、少し良いか?」 


 「ん?ここの村の者ではないな…?」


 3人は健康そうな男性が立っている位置まで辿り着き、ネイリーの方から声を掛けると男性は振り向き見慣れない3人に疑わしい目で村の住民では無い…と気付く反応を見せる。


ネイリー 「あぁ…冒険者だ。この村が不漁で調査を求むと依頼を受けてな、情報収集をしている最中だ。現状の情報を聞いてもいいか?」


 自分の事を王族と鼻に掛けずにネイリーは同等の目で男性に対応する。ライトとリリアはその目線こそがネイリーの尊敬している所でもあった。


サバル 「俺の名前はサバルだ。最近、不漁で困っている。このままだと今年の『豊富祭』を不参加になってしまうぐらいだ……」


ライト 「魚が他の地域でも食えなくなっちまうのか!?」


リリア 「そんなに!?」


 咄嗟に反応した2人にサバルは頷きながら淡々と話す。


サバル 「ああ、このままだとブルー村の収入利益が全く稼げなくなってしまう…」


ネイリー 「かなり深刻な問題だな。何か異変は無かったか?」


サバル 「海水温度が高くなったぐらいだけど、別にそれだけじゃ不漁になるハズは無いんだ。ただ…。陸地から離れれば離れるほどまだ魚は結構獲れるんだ」


ネイリー 「陸地の近い所の魚を獲りすぎたのか?」


 ネイリーの質問に対しサバルは首を横に振りながら口を開く。


サバル 「いや、毎年と同じ量を獲っているだけだ。ただ陸地からあまり離れると急に海が荒れた時に帰ってくるのが難しくなるから皆、あんまり行こうとしないんだ。だって…急に海が荒れたら死んでしまうかもしれないだろう…?」


ライト 「確かにそうだな…」


リリア 「さすがに命無くなったら…ねえ……」


ネイリー 「…忙しい中すまないな、情報をありがとう」


サバル 「いや、いいよ」


 ネイリーはサバルにお礼の言葉を掛け3人はその場を離れようと背中を見せ歩き始めると、低いトーンで声を出す。


サバル 「…いつまでブルー村にいるんだ?」


 3人は背中を見せ歩き始めていたが、再度サバルの方に顔を向けライトは反応する。


ライト 「ここの調査が済むまでいるぞ?」


サバル 「そうか。ありがとうな」


 すっかり日が落ち夜に近い頃に3人はブルー村の宿屋へと向かう。


———【ブルー村の宿屋】


 3人はブルー村の宿屋に着き、食事を済ませ寛いでいた。3人は考え込むポーズで硬直したまま情報を整理していた。


リリア 「何が原因なんだろ~?よくわからないなぁ」


ライト 「……」


ネイリー 「……」


 リリアがブルー村から聞き出した情報を整理しながら考えていると、食事を済ませてからずっと黙り込んでいたライトとネイリーは思わぬ発言をした。


ネイリー 「いや、この村はただの海水温度が上昇して一時的に不漁っぽいな。1週間もすればすぐ元通りに獲れるようになるだろう」


ライト 「そうだな、もう少し調査してダメそうだったら冒険者ギルドに戻るか」


 リリアは会話に追い付かず疑問を抱きながら戸惑っていると、ライトは急に紙に何か書き始めペンを置くと紙を突き出すように見せる。


———【今、この宿屋は何者かに囲まれている】と書かれていた。

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