第23話 リリアの過去④
———【リリア(12歳)】
通っていた学校が長期休暇のため、リリアは実家に帰省していた。母親のミアと共に料理を作るのが好きだったリリアは自らブロンズ街で食材を買いこむと言い伝え家を出た。そして、両親と何度も足を運んだブロンズ街の近くまで辿りつくと派手な飾り付けでお祭りでも開かれているのであろうか…と考え眺めているとリリアは何か思い出したかのような表情で口を開く。
リリア 「あっ!今日は『豊富祭』だった!お母さんとお父さんも一緒に連れてきて荷物運びの手伝いして貰えれば良かった~…。でも、久しぶりのブロンズ街だから色々みてこよーっと!」
ブロンズ街を訪れると丁度、『豊富祭』が開催されていたのでリリアははしゃぎながら買い物を楽しんでいた。教会で暮らしていた頃のどことなくオドオドとした面影は無くなり、人目を気にせず堂々と顔を上げながら歩くリリアへと成長していた。ウィンドウショッピングを終え、食材を買い終えるとカゴは新鮮で色鮮やかな野菜や果物、お肉…あらゆる食材を購入したのでカゴの中身は溢れていた。
リリア 「ちょっと買いすぎちゃったかな~?でも今日『豊富祭』だったからお得だったな~。今日はお母さんと何作ろうかな」
リリアは重たいカゴを持ちながら夕食のメニューを考え歩き続けていた。そして途中、雨がポツポツと建物に当たる音が聞こえ始め、着ていた服も濡れてきたのでリリアは足を速めて自宅へと向かう。重たいカゴを持ちながら濡れた道を歩いていたせいか少し息が上がってきた頃にようやく自宅が視界に見え始め、リリアはもう少しだ…と踏ん張り、重くなってきた足を動かし続けると、視界には家と更に幼き頃から見慣れた花が見え始めた瞬間と同時に両親が横になり倒れていた光景を見て目を大きく見開いた。
リリア 「う…そだ…嘘だ嘘だ!!」
リリアは嘘であって欲しい光景を目の当たりにし、先程まで持っていた重いカゴを放り投げ疲れていた事も気にならず息を荒げながら両親の方へ駆け寄ると背中には大きな爪痕があり、傷からは大量の血が流れていた。
ミア 「リリ…ア?」
ジルク 「う……」
リリア 「お父さん!!!お母さん!!!今、治療するからね!!」
リリアは急いで回復能力で両親の傷を癒そうとしたが、教会と学校以外は能力封印装置が装着され使えなかった。何度も何度も装置を無理矢理取ろうと試みたが、手首に装着されている装置はリリアの手首に隙間も無く綺麗にフィットされ微動だにしなかった。
リリア 「能力封印装置が外れない!!」
ミア 「リリア…。ごめ…んね…。これ以上一緒には…居られないみたい……」
ジルク 「リリア……。幸せ…に…なりなさい…。私達の…自慢の『娘』」
リリア 「嫌だ!!お母さん!!お父さん!!一人にしないで!!!」
装置を外す事よりも倒れている両親が気になり容態は息を吸ったり吐いたりする事すら億劫なようで、そのまま眠りそうなる二人の身体を阻止するかのようにリリアは焦りながら起こすように揺るがす。しかし、両親はそのまま瞼をゆっくりと閉じ始め再び開ける事は無く息を引き取ってしまった。リリアはその場から動く事が出来ずひたすら泣いていた。
———両親を亡くしてから一週間が経ちリリアは『決心』した。自慢の『娘』として両親に天国でも誇れるよう優秀な成績で卒業しこれ以上、両親のように被害者が出ても命を無くならないよう沢山の人を治療し助ける事を。
———【現在】
リリアは就寝しようと横になるものの両親の事を思い出してしまい更に眠る事が難しくなりここは心を落ち着くようにホットミルクを作ろうと考え、クリームシチューで作るときに余った牛乳を温める。そして温め終えた牛乳をカップの中に淹れはちみつを加えスプーンでかき混ぜると口に運ぶ。ライトの方を見ると毛布は吹き飛び、よだれを垂らしながら寝言で「もうお腹いっぱいで食べれないよ~」と何か食べている夢を見ながら就寝しているようだった。
リリア (ライトったら食べている夢までみて、しかもアホみたいな顔して熟睡してる……)
リリアはライトを呆れた表情で見ながらホットミルクを飲んでいると、不意に声を掛けられ振り向く。
ネイリー 「なんだ…?リリア眠れないのか?」
リリア 「あ…ネイリー起こしちゃった?ちょっと考え事しちゃって……」
ネイリー 「そうか…しかし、ライトの寝相悪いな…。私がせっかく貸した毛布を吹き飛ばしやがって…」
ネイリーもまたライトの寝相に呆れ、リリアはため息を吐きながらライトのよだれを拭き毛布を掛け直した。そして、リリアは先程、余分に温めた牛乳をカップの中に淹れながら声をかける。
リリア 「ねえ、ネイリー。何故、冒険者ギルドに入ったの?」
ネイリー 「ああ…。私は3年前起こった『庶民隠し事件』の真相を暴くために他国を周りながら情報を仕入れるために冒険者ギルドに入会した。ライトも両親を探すために他国を周る予定のようだし、一緒に同行することにした」
リリア 「ライトの両親も『庶民隠し事件』で急に姿消したんだよね……」
リリアはカップにはちみつを加えかき混ぜながら『庶民隠し事件』が起きた後、ライトの両親が突然消えてしまった時の表情を思い出し顔を下に向け悲し気な表情をする。そして、完成したホットミルクをネイリーに渡すと「ありがとう」と返答され口に運ぶ。お互いにホットミルクを飲み一息つくと、ネイリーは口を開く。
ネイリー 「ライトには辛かっただろうな…。リリアも何故、冒険者ギルドに入ったのだ?王族や貴族御用達の医療施設…サファイアローメン国にある『サファイアロイヤルズ病院』で以前は就職していたのだろう?」
リリア 「うん、実は私の両親、『庶民隠し事件』の時に両親亡くなったんだ」
ネイリー 「姿を消したのではなく、亡くなってしまったのか…」
ネイリーは酷な質問をしてしまった…と罪悪感を抱いたが、リリアは気にせず会話を続ける。
リリア 「爪痕の傷があったから魔物に襲われたのかなっ…て最初は思ってたんだ」
ネイリー 「…?何か違う原因があったのか?」
リリア 「うん、魔物じゃなくて…。魔王の配下に襲われたんじゃないかって……」
リリアの返答に驚いたネイリーはその場で立ち上がり大きな声を出す。
ネイリー 「何!?『庶民隠し事件』は3年前の出来事だったな。3年前、魔王軍は何かを狙って動き始めているのか……?」
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