第11話 冒険者ギルドの料理
冒険者ギルドに併設されている飲食店。2人は席につくと周囲の冒険者達はテーブルの上にジョッキと食べ物が置かれ、情報交換をする者。はたまた依頼で失敗した愚痴や依頼を達成して自慢をする者などガヤガヤと賑わう。
テーブルに置かれているメニュー表を2人は開く。メニュー表には料理のイラストや飲み物が文字で記載され、ライトは顎に手を悩みに悩む。
ライト 「ネイリー。食べたい物はあるか?」
ネイリー 「いや…。私は何でも構わない」
ライトは頷くとメニュー表をパタンと閉じる。そして、調理台でフライパンを大きく振る男性に目を移す。
ライト 「モルハさん!オムライス2つとオレンジジュース2つ頼むよ!」
ライトの大きな声にモルハが反応すると、顔をあげ笑みを浮かべる。
モルハ 「あいよ!ライトは本当にオムライス好きだな」
ライトの好物を分かり切っているモルハは笑みを浮かべると、目をフライパンに移し止まっていた手を動かす。
ライト 「俺、自分でオムライスつくれねーもん…」
モルハ 「はは!ライトは相変わらず料理下手だもんな!待ってな、今作るから!」
モルハはフライパンを動かしながらライトに返答をする。そして、ライトはネイリーに視線を移すと真顔で見つめられ気付く。
ライト 「俺の顔を見つめてどうした?」
首を傾げるライトだが、ネイリーは真顔で見続ける。
ネイリー 「いや、ライトに質問があるのだが…。私は魔獣ゴブリンの攻撃を食らった後、なぜ闇に浸食されなかったんだ?」
ライトは依頼の件で記憶を遡る。グリーン村の側にある洞窟で戦った魔獣ゴブリンとの戦闘シーンまで遡ると手を叩く。
ライト 「あー、あの時な。闇を無力化する特殊なシールドをネイリーの前に作ってたんだ!んで、魔獣ゴブリンの武器とシールドが破れないまま一緒にネイリーは叩きつかれたんだ」
一瞬の出来事だったシーンをネイリーも同様に記憶を遡る。魔獣ゴブリンに触れる事も出来ずにひたすら回避するネイリー。ライトに声を掛けられ振り向いた瞬間、目の前に突如、魔獣ゴブリンに接近され棍棒を振るわれたこの瞬間。ライトはこの瞬間、ネイリーの前に特殊シールドを張っていた。
ネイリー 「では、私の身体に当たったのは魔獣ゴブリンの武器では無く、ライトが作ったシールドだったのか?」
ライト 「そうだな。だから闇に浸食されなかったんだ」
どの能力者もシールドは作成する事が可能だ。能力が高ければ高いほど大きなシールドを作る事ができ、更に使いこなせば身体を包み込むシールドを作れる。しかし、闇を防ぐ事が出来るシールドは特殊能力者のみだった。
魔獣ゴブリンとやり合った出来事を思い出し、答えが見つかるとネイリーは納得した顔で大きな息を吐く。
ネイリー (やはり、ライトには特別な力があるようだな……)
テーブルの上に肘を置き、目を閉じているとコトンっと皿が置かれた音が鳴る。目を開くと目の前にはオムライスとオレンジジュースが置かれていた。
「オムライスとオレンジジュース、それとモルハさんからのサービスです」
女性の給仕が置くサービスの品がテーブルの上に置かれる。カチコチに凍った白い物が透明な食器の上に乗っていた。
ライト 「これ…アイスクリーム!高いやつじゃん!!モルハさん良いのか?」
感動の余りに輝いた瞳を見せるライト。調理台でフライパンを振るモルハを見つめる。
モルハ 「ライト最近シルバー1に昇格したばっかだろ?それのお祝いだ!」
ネイリー 「私まで良いのか…?」
モルハ 「ライトにはこれからも手を焼くだろうからこれからもよろしく頼みますよ!」
ネイリーは口角をあげると、モルハに頷く。
ライト 「まだ仲間になってくれてないんだよ…。まぁ、食べようぜ」
2人はスプーンを片手で握ると、オムライスを端からすくいあげ口に運ぶ。
ライト 「ん~~~!やっぱモルハさんのオムライスはうまいなぁ!!」
ネイリー 「…っ!凄く美味しい」
口に運び味を堪能すると2人の顔は輝き、至福な顔でオムライスを堪能する。
ライト 「な!モルハさんの料理上手いだろ!ネイリーはオムライス食べるの初めてか?」
スプーンですくったオムライスをゴクンっと飲み込むと、ネイリーは頷く。
ネイリー 「貴族校でもメニューにあったが選んだ事は無かったな。それに王宮でも出された事が無いから初めてだ。こんなに美味しい料理だったとは想像以上に驚いた」
ライト 「そうか!それは良かった!」
その後、2人はオムライスを綺麗に平らげると、オレンジジュースとアイスクリームにも手を伸ばし食事を楽しむ。
会計を済ませ、2人は冒険者ギルドの外へ出る。日は既に落ち、辺り一帯が真っ暗となる中、2人はふと空を見上げる。真っ暗な空には雲1つも無く、星達は誇らしげに輝く。
ネイリー 「ライトは明日も冒険者ギルドに来るか?」
ライト 「ああ!俺は毎朝、冒険者ギルドにいるぜ」
空を見上げる2人。ネイリーは真っすぐに視線を落とすと、隣にいるライトの方へ身体を向ける。
ネイリー 「ライト、私は『庶民隠し事件』の真相を暴きたい。……私と一緒に冒険をしてくれないか?」
空を見上げていたライトも視線を落とす。ネイリーの方へ身体を振り向けると、笑顔で返す。
ライト 「ああ!俺も父さんと母さんを探しているんだからもちろん歓迎だ!でも王族なのに大丈夫なのか?他国にもいくんだぞ?」
ライトの問いに頷く。
ネイリー 「時期王は私の弟であるエルダーだ。それに王…父上にはサファイアローメン国の為に冒険者ギルドで庶民の困っている依頼をこなして信頼を得る評価稼ぎをしたいって言ってあるから大丈夫だ。許可は得ている」
ライトはネイリーに手を広げ前へ突き出す。
ライト 「じゃあ、ネイリー!これからもよろしくな!」
前に突き出すライトの手を握りネイリーは顔を見つめる。
ネイリー 「ああ。こちらこそ」
2人は互いに手を握ると握手をし、正式な仲間となった。そして、満天な星空が広がる中、2人は肩を並べそれぞれの家へと帰宅する。
―――見知らぬ土地にて視界は薄暗く、土地が荒れ果てた場で大きな城が建設されていた。玉座のような椅子に見知らぬ人者が腰を掛け呟く。
「サファイアローメン国のグリーン村に新たな拠点を作ろうとしたのだが…。闇の能力を持ちながら失敗してしまったか…。もしや12
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