第10話 剣とシンボル
———【現在】
ネイリー 「お前の言葉信じるぞ!!くたばれええぇえええ!!」
ネイリーは最後の力を拳に込めると、猛ダッシュで走り魔獣ゴブリンに向かって飛びつく。
魔獣ゴブリンはネイリーの行動を目で追うように眺め、目の前に飛びついてきた瞬間に闇のシールドを張る。だが、ネイリーも全力で拳に力を込めるとシールドを貫き一直線で頭を思いっきり殴る。敵を100メートル先まで吹き飛ばすとガンッ!鈍い音で壁にぶち当たりスーッと床に落ち座り込む。
「な、なぜ闇に侵され…ない…?」
魔獣ゴブリンは紫色の血を大量に放出しながらドスンッと倒れる音が鳴り響く。倒れ込むと身体がピクリとも反応する事なく2人で魔獣ゴブリンを倒した―――と実感した瞬間だった。
ネイリー 「か…勝てた!!特殊能力も無いのに…」
息をハァハァと切らしたネイリーは身体に脱力を感じへたりこむと、ライトは側に駆け寄り肩に手をのせる。肩に触れられたネイリーは反射的に振り向くとライトは片方の膝を折り同じ目線でニッと無邪気に笑う。
ライト 「な?俺の言ってた通り俺ら2人で勝てただろ?」
ネイリー 「ライト…。お前に何か特別な能力でもあるのか?」
ライト 「ん?特別な能力?」
首を傾げながらライトは顎に手を当て考え込む。そして、無事に討伐した魔獣ゴブリンの方向に振り向くと、手を叩き再びネイリーの顔を覗き込む。
ライト 「あぁ、魔獣ゴブリンを倒せた理由か!俺の師匠曰く俺は闇を無力化できるらしいんだ!しかも俺の近くにいる仲間にもそれが影響するんだってさ!」
ネイリー 「っ!?ライトの師匠はどのお方なのだ?」
ライト 「名前はジイって呼んでたけど、『庶民隠し事件』で俺を庇って死んだんだ。ジイの形見がこの剣だ」
自分の腰にぶら下げている鞘にライトは指を差す。ライトが指を差す鞘にネイリーは視線を移すとチェーンがぐるぐる巻きで頑丈に縛られていた。何よりも縛られているチェーンの中にキラキラと輝く物が強調されネイリーは驚く。
ネイリー 「そのシンボル…!12
光輝く動物のシンボルをネイリーは直視する。
ネイリー (ライトは12
動物のシンボルを鋭い目つきで見つめながらネイリーは考え込む。しかし、あらゆる書物の知識、情報を引き出しても答えが出る訳も無く諦める。
ネイリー 「ライトの師匠は『元12
12
ライト 「ん~…?ジイは自分の事『俺は12
再び2人は揃ってライトの腰にある鞘を見つめる。ネイリーが動物のシンボルに目を移すと確信した顔つきで頷く。
ネイリー 「そのシンボルにも驚いたが、それよりもお前の『特殊能力』の方が驚きだ」
ライト 「そうなのか?」
ネイリー 「本来その能力は12
只でさえ字や名前を覚えるのが不得意なライトは、謎のワードのせいで更に頭は混乱する。懸命に考え込むが答えは見つからず、頭を抱え込むと次第に地についていた足をジタバタ動かす始末だ。
ライト 「あぁーー!!俺もよくわかんないや…。とりあえずゴブリン族の討伐は達成したし、グリーン村の様子を見た後に冒険者ギルドに報告しようぜ!」
ネイリー 「…考えても答えは出ないか。では、グリーン村に寄ってから冒険者ギルドに戻ろう」
洞窟の最奥にいた2人は、来た道を辿りながら足を動かす。薄暗い中、微かに灯るたいまつを頼りに階段をひたすら昇り歩く。歩き続けるとようやく、薄暗い洞窟から光が差し込む場所の方へ向かうと太陽に照らされ外に辿り着く。
緑に埋め尽くされた土地に家畜が放牧され、耕している畑には新鮮な野菜が実りまさに『グリーン村』という名に相応しい場所だ。グリーン村の門をくぐり抜けると、2人は村長の家まで向かう。
歩いている最中、ライトの視界に放牧されている羊が映り目線を移し。羊を見つめていると逆の柵から鳴き声が聞こえニワトリに視線を移す。
ライト 「色んな動物がいるなー!」
ネイリー 「グリーン村は家畜の放牧と作物が豊かだからな」
放牧されている家畜の世話をしている住民、そして壮大な畑に耕している作物に水やりをする住民を見つめ2人にとって新鮮な旅であった。
ようやく村長の家に辿り着くと、ネイリーはドアをコンコンと叩く。
「はい…―――ネイリー姫!?」
ネイリー 「あぁ、村長。久しいな」
「ネイリー姫がわざわざこの村まで足を運ぶとは!ささ!家の中へ!」
ネイリー 「いや、ここで大丈夫だ。冒険者ギルドに掲載していた依頼の件で報告だ。畑を荒らしていたゴブリンだが親玉を私と、隣にいるライトが討伐しておいた。もう荒らされる事も無いであろう」
「えぇ!!危険な依頼をネイリー姫、自らとライト様で討伐を!?―――報酬額を増やしますのでしばしお待ちを―――」
ネイリー 「いや、冒険者ギルドに渡している報酬で結構だ。では、私達はギルドに戻る」
大慌てで玄関口から部屋の中へ向かう村長をネイリーは呼び止め、報告を伝えるとと背中を向ける。村長はあたふたとしながら玄関口を見渡す。収納棚が視界に入り大慌てで漁り、物を掴むとネイリーに突き出す。
「ひ、姫様~~!!せめてこちらの物を受け取って下さい!」
ネイリー 「いや、結構―――!」
振り返ると村長の手には色鮮やかな毛糸があり、去ろうとしたネイリーの動きが止まり渋々受け取る。グリーン村の緑豊かな草や木が黄金色に染まる中、2人は冒険者ギルドへと向かい歩く。
―――【2時間後】
無事に冒険者ギルド前へ辿り着くとライトはドアを勢いよく開く。
メル 「ライト様!ネイリー様!お帰りなさいませ!」
メルは2人の表情を見た途端、笑顔を浮かべながら依頼を達成したと確信していた。
ライト 「メルさん、ただいま!」
ネイリー 「戻ったぞ。ゴブリン族の討伐を達成した」
メルは依頼の報酬を2人の目の前に用意する。
メル 「では報酬をお渡しします!」
2人は報酬を受け取ったと同時にゴブリン討伐依頼の紙は任務完了と書かれ、手首についていた■の刻印も薄っすらと消えていく。ライトはたんまり入ったお金の袋を頬に当てるとスリスリしウットリする。
ライト 「50万シルもあればしばらくは生活できるな!でもネイリーその布を貰って何するんだ?」
ネイリー 「まぁ、色々とな」
ネイリーは曖昧な返答をしながら受け取った報酬を、腰の巻いているバックの中へと収納する。
ライト 「ふーん?そうだ!冒険者ギルドには飲食店も併設されているから何か一緒に食べないか?50万シルもあるから俺が奢るよ!」
ネイリー 「いや、私はいらな―――」
断っている最中に音がぐ~と鳴りネイリーは顔を赤く染めながらお腹を押さえる。
ライト 「ネイリー気にするなって!俺ら昼食も食べてないだし。それにここのメシうまいんだぜ!」
歯を見せながらニッ!と笑うライトに、ネイリーも微笑む。
ネイリー 「そうか。食べた事も無いしせっかくだから頂こう」
2人は飲食するテーブルの方へと向かう。
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