サファイアローメン国編

第2話 冒険者ギルド

———3年前に父と母は急に姿を消した。


 3年前当時、急に姿が消えてしまう現象が起きた。王族や貴族は何故か被害が少なく、庶民に多かった。


 ライトは家から外へ出ると馬車が通る固い土の道を歩く。


ライト 「今日も冒険者ギルドで依頼依頼~っと!」


 両親を探すためにライトは学校卒業後、収入が安定しない冒険者になった。


 冒険者に就職する者は依頼によって報酬が異なる為、収入は安定しないが、冒険者の証として冒険者パスポートを提出すれば各国自由に入国出来た。


ライト 「今日の依頼は何があるだろうなぁ」


 そんな事を考えながらいつものように冒険者ギルドのドアを開け中へと入る。


 中に入ると沢山のテーブルと椅子が並べられ、ガヤガヤと騒がしい冒険者は椅子に腰を掛けながら雑談や情報の共有をしていた。冒険者ギルドの受付嬢はライトの存在に気付いた瞬間、自然と笑顔の表情で元気に挨拶をする。


 「おはようございます、ライト様!」


ライト 「メルさん!おはよう!」


メル 「今日の依頼は…」


 2人が話していると間に割り込むようにドアがバァン!と激しく開く音を鳴らす。冒険者達は一斉に静まりドアを開けた人物に注目する。冒険者達の目には爺さんが映り、急いで走ってきたのか息を切らしながらその場で立ち止まる。


 「うちの孫が魔物に捕まったんだ!誰か助けてくれないか!!」


 メルは受付越しだが落ち着きのない、爺さんに声を掛ける。


メル 「こちらで詳細をお伺いします。報酬はいくらを設定しますか?」


 メルの声で爺さんはヨロヨロになりながら受付まで歩く。


 「報酬はワシがあげられる物ならなんでも構わん!!頼む!!」


 具体的な報酬が決まらず、メルは困惑した表情する。


メル 「大体の報酬を決めて頂くと有難いのですが…報酬によって皆さん依頼を受けるか受けないかを決めますので…」


 爺さんは服の上から下まで物が無いか慌てて探し始める。上着のポケットの中に手を入れると、ようやく物が見つかり受付カウンターに置く。


「持ってるお金がこれで後はこのアクセサリーしか…」


 出された物はお金100シルとかなり古いアクセサリーで誰の目から見ても、明らかに価値があるとは思えないものだった。


メル 「どなたかこちらが報酬で魔物討伐をお願い出来ませんか??」


 周りの冒険者達に対して大きな声でお願いする…がざわめく。


「魔物討伐であの報酬は…」

「魔物討伐の報酬は最低でも10万シルだろ…。俺の冒険者ランクはそこまで高くも無いし…」


 この冒険者ギルドには『冒険者ランク』が設定されている。冒険者ランクにより、どのような依頼を今までこなしてきたか分かるような仕組みだ。


 冒険者ギルドに登録されている人達は自分のランク相応のバッジを冒険者ギルドから配布される。依頼主によってはランクの条件が決められているものもある。


―――【冒険者ランク】


 ここで一度、冒険者ランクの説明を大まかにしよう。


 ブロンズ→シルバー→ゴールド→プラチナ→ダイヤモンド→スターとの順でランクが昇格し、ブロンズの中でもブロンズ3→ブロンズ2→ブロンズ1→シルバー3と細かく設定されスターが最高評価とされている。


 王族や国家に関する仕事は最低でもゴールド以上の能力が必要であり、今回の魔物討伐はシルバー1以上の能力が求められる。


 シルバー1以上の能力があると月に約100万シルも稼げる事があるので冒険者ギルドの中でも安定で稼げる程度だった。


―――【現在】


「万が一でも闇に浸食されたら困るし…」

「浸食されたらどれだけ治療に金が掛かるやら…」


 冒険者達は次から次へと爺さんから目を背けていく。


 「だ、誰か頼む!!孫が孫が……!」


 爺さんは冒険者達から目を背けられ、段々と涙目になる…が、ここでようやく1人が手をあげる。


ライト 「じいさん!俺がやるよ!」


「ライト!お前正気か!」


 ライトの発言で周りの冒険者達は一斉に驚く。そして、ライトも受付カウンターに駆け寄り爺さんの隣に立つ。


メル 「ライト様はつい最近シルバー3に昇格されたばかりですが…」


ライト 「俺、そのアクセサリー欲しいからやるよ!」


 ライトは緊張感が無い顔でヘラヘラと笑い報酬の指輪に指を差す。爺さんは依頼を受けたライトを見ると涙を拭う。


 「引き受けてくれるのか!!ここから近くにある山中で孫が魔物に捕まったんだ!」


 目の前に立つ爺さんの話しにメルは頷くと、ライトの方を振り向く。


メル 「おじい様、詳細は分かりました。ライト様この依頼はシルバー1以上の方推薦の依頼ですよ?」


 メルは依頼に関して注意を促すが、ライトの顔からは一切の不安、緊張、怖さも無く自信に満ち溢れていた。


ライト 「大丈夫!まかせろ!俺はこのアクセサリーが欲しいから引き受ける!」


 2つもランク上の依頼に対して物怖じせずあっさりと受けるライトの顔を見てメルは顔を俯ける。メルは呆れたようにため息を吐くが、表情はどこか嬉しそうな笑顔をし、再び顔を上げ爺さんの方を振り向く。


メル 「おじい様の依頼を掲載する為契約魔法を掛けさせて下さい。ここから近くにある山中でお孫様を助ける為に魔物討伐の依頼で間違いありませんね?」


 爺さんは頷く。


 「ああ、そうだ」


 メルは手を爺さんの身体まで伸ばす。


メル 「レメート?」


 メルの手首に渦巻く魔法陣が出始め、爺さんの手首にも魔法陣が出る。


お爺さん 「レメート」


 爺さんが了承すると互いの手首から魔法陣は消え、依頼主との契約は完了となった。爺さんの手首には依頼が終えるまで小さな■の刻印が印された。


メル 「では次にライト様、報酬の契約魔法を掛けます」


―――冒険者ギルド管理者であるメルはトラブルを防止するために『レメート』と契約魔法を掛ける。


 冒険者ギルドでは以前依頼を受けて倒してもいないのに報酬だけ貰いにきたり、違う依頼と勘違いし違うものを討伐したりするトラブルが多かった。


 複数人等で依頼を受けて一人だけ報酬を占領したり、前もってどのように報酬を受け取るか事前に決め依頼の詳細を再度確認し契約魔法を掛けるようにしたのだ。


メル 「ライト様。報酬はこちらの物で間違いありませんね?」


 受付カウンターの上に置かれた100シルと古い指輪にメルが手を伸ばすと、ライトは頷く。


ライト 「あぁ、大丈夫だ!」


 メルは先程、爺さんに契約魔法を掛けた動揺に手を伸ばす。


メル 「レメート?」

ライト 「レメート」


メル 「契約完了です。」


 ライトの手首にも■の刻印が印され、契約魔法を掛け終える。


ライト 「じゃ、行ってくる!」


 ライトは冒険者ギルドを早々と後にし依頼完了の為、近くの山中に出かける。


「ライトは確かに強いが今回は魔物だぞ…」


 1人の冒険者は早々と出かけた、ライトの後ろ姿を見つめながら呟く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る