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 さすが関西人だな……って、あれ。シューイチって、関西人だっけ? 確かに口調は関西弁みたいだけど、ところどころ間違っていて胡散臭いし。

 そう言えば、オレはまだシューイチだけじゃなく、他のみんなのことも、もちろんミオ先輩のことも知らない訳で……。

 ああ、本当だ。オレってば、まだまだ知らないことばっかりだ。

 そんなことを考えていたオレの気持ちが分かったのか、シューイチは、

「そうやで」

と言ってから、

「それにだめな分、成長も早いかもしれへんやん。練習なら、なんぼでも付き合ってやるさかい、もう少しがんばろうや」

 にたにたと気味の悪い笑みを浮かばせる。

「まあ、最初も言ったけど、嫌なら無理しなくてええんやで。そうか、そうか。ジュリちゃんには舞台で演技する度胸なんてあらへんか。そうやなあ。ジュリちゃんは見た目だけじゃなく、中身も女々しいんやなあ」

 なっ……、なんだって……。

「誰が女々しいだって……!?」

 シューイチのヤツ、どこまでオレをバカにすれば気が済むんだ。そこまで言われて黙ってられるか。

 こうなったら、やってやる。ああ、やってやろうじゃないか……!

 シューイチの言う通り、確かに始まったばかりだ。演劇部に入部したのはミオ先輩との賭けの結果だけど、まだなにもしてない内から逃げ出すのは性に合わないし、それ以上に悔しい。

 いいや、バカにされたまま終われるかっ……!

 なんて決断した束の間。

「……つけた、やっと見つけた……!」

 がしりと突然肩をつかまれ振り向くと、ぜいはあと荒い息遣いをした変質者が立っていた。オレの喉奥から思わず、ひいっ、と短い悲鳴がもれた。

 その変質者は、よく見るとヨッシー先輩で。先輩は乱れた息をそのままに、オレの肩をさらに強くつかんだ。

 痛い、痛いっ! あの、爪がくい込んでいるんですけど……!?

「見つけた、オレの身代わり……!」

「身代わりって、あの、先輩……?」

「おい、お前。演劇部、辞めるなよ!」

「えっ?」

「いいか、絶対に辞めるなよっ!!」

 ぐわっと噛み付かんばかりの勢いで、ヨッシー先輩はオレの鼻先まで顔を近付けた。その鬼面は肯定以外の答えは与えてくれず、つい、こくこくと何度もうなずいた。

「ジュリエットー! ああ、ジュリエット、こんな所にいたんだね。心配したんだよ。

 さあ、早く部室に戻ろう……、ん? ヨッシーよ。いくらジュリエットが美しくとも、僕の愛しい彼女に気安く触れないでいただきたいのだが」

「うるせえ、この演劇バカ! いいか、ジュリには二度と近付くな」

「ほう……。パリスよ、僕から愛するジュリエットを奪うつもりかい?」

「一々気持ち悪い言い方をするな! コイツのことはなんとも思ってねえが、また今日みたいにお前のせいで機嫌を損ねて、厄介なことになるとオレが困るんだよ」

「あの、二人とも……?」

 ミオ先輩とヨッシー先輩との間で、バチバチと(ヨッシー先輩から一方的にだが、)激しい火花が散っている。

 その火の後始末をちゃんとしなかったことを、後日後悔させられることになるとは。この時のオレは露も思っていなくて……。

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