第95話 いざ情報収集へ
料理は滞りなく終わった。
ローズは多少なりとも料理を作ってるということもあってかなり戦力になった。
こちらが何をしてほしいか頼むと僕の理想通りにこなしてくれる。
あれなら自分で料理を作っても不味いものは出てこないと思うが……一体彼女はどんな料理をこれまでに作ったことがあるのか。少しだけ気になった。
まあそれはともかく未だに姦しく騒ぐアリシア達に声をかけ僕らは夕食を楽しむ。
ちなみに僕のメイク結果はやはり拒否。全力でローズにメイクさせてください! と頼んだ結果、ピエロに比べてすごくまともなメイクをすることにきまった。
よかったよかった。
取り合えず変質者になるのは止められたらしい……。
▼
盛り上がって翌日。
僕が用意した朝食を食べながらみんなで本日の予定を立てる。
「さて今日は何をしようか」
「わたくしはいつも通り諜報活動がしたいですね。ノアさん達が騎士やハンターに襲われた翌日ですから騎士やハンター達に何かしらの変化があるかもしれません」
「ハンターはともかく騎士たちはたしかに色々と厄介事を抱えているだろうね。僕らのことはもちろん仮面の魔術師と呼ばれるローズも逃がしてしまった事だし」
「そう言えば昨日は詳しく聞けなかったけどローズの魔法で逃げたのよね。あの霧の魔法」
「ええ。わたくしが得意とする水の魔法ですわ。よかったら皆さんにも教えましょうか? 消費する魔力量は多いですが逃亡には適した魔法ですよ」
「僕はたぶんもう使えるかな。元々水の魔法には適正あるし」
特殊な条件でしか習得できない聖属性の魔法以外には適正あるんだけどね僕。
「まあ。たった一度見ただけで使えるようになったんですか? ノアさんは本当に天才なのですね……ちょっと悔しいですわ。わたくしあの魔法を完璧に使えるようになるまでかなり時間が掛かったのに」
「まだ使えるかどうかはわからないけどね」
「きっとサラっと使うわよノア様は。これまでたくさん魔法を使ってるところを見てきたけどノア様が魔法の発動に苦労してるところ見たこともないもの。ムカつくくらい魔力操作が上手いわ」
アリシアまで不満そうな表情を浮かべている。
そんなこと言われても神様? のおかげだしねぇ、僕に魔法の才能があるのは。
あと無限の魔力。これが一番重要だろう。
適正はともかくあらゆる魔法が魔力を消費する。
その消費量によって魔法の効果は上下し魔法の発動がよりスムーズにいく。
まあ魔力操作が発動には欠かせない要素なのはたしかだが、最悪、僕は無理やり魔力を流して魔法を発動することができる。
非常に効率は悪いが僕の魔力は決してなくならないからね。
いくら効率が悪かろうと何の問題もない。
「ではノアさん以外の皆さんはどうです? 霧を起こす魔法、わたくし物凄くおすすめしますわ」
「わたしは遠慮するわ。魔法の適正が火や風なのよ。一番相性が悪いわ水の魔法は」
「わたしも身体強化以外の魔法はちょっと……どの属性の魔法もまともに使えないので」
「わ、わたしはちょっとだけ興味あります……けど、この街にいる魔族を倒すならあんまり時間はないのでは?」
ミュリエルが控えめな声で正論を述べる。
たしかにあんまり悠長に時間を使ってる暇はないかもね。
「もちろん魔族を倒してこの街を救う——という目的に変更はありませんが魔族は領主の館から出てきませんから。本格的に戦闘がはじまるまで時間はありますよ。ですからミュリエルさんさえよければ是非。きっと今後の冒険でも役に立つかと」
「じゃ、じゃあ……お願いします!」
「任されました」
「話は決まったね。魔法の件は二人でじっくり話してもらうとして……今日のところは二つのグループにわけて街を散策しよう。目的は騎士やハンターの調査だ」
「二つのグループ……誰と誰が一緒なのかしら」
「僕以外の四人で一つのグループだよ。僕はちょっと一人で調べ事をね」
「ノア様は一人? いくら強いとはいえ危険なのでは」
「大丈夫だよ。もし騎士やハンターにまた襲われても逃げるし、一人の方が調べやすいことなんだ」
「何を調べるつもりですか? わたくしが知ってることなら無理をする必要は……」
シャロンだけじゃない。ローズまで心配そうに僕を見る。
彼女は僕の実力をまだ把握しきれていないからね。
疑う気持ちはよくわかる。
「領主の館を見ておきたいんだ。もしかすると魔族が実際に拝めるかもしれないしね」
「でしたらわたくし達が一緒でも……」
「ダメだよ。時間の無駄だし見てることが魔族や兵士たちに視られたら面倒だろう? その点、僕なら自分の気配を消す術も心得てる。まあ任せてくれ。様子を窺うだけだから」
「……そういうことでしたらお任せします。わたくし達は固まって街を散策しましょうか。皆さんちゃんとメイクしてくださいね」
「ローズもね。今日はあの仮面を付けちゃダメだよ。一人ならともかくアリシア達と一緒に行動するんだから」
「承知してますわ。久しぶりに自分を偽ってみせます!」
そう言ってローズはやる気を見せた。
アリシア達も僕がいないということでやや緊張感を持ってローズを手伝ってくれるだろう。
……魔族のやつ、姿を晒してくれないかな。
遠距離からの狙撃とか無理だろうけど、情報は多いに越したことはない。
実物を見て何か閃くこともあるだろうし。
ということで本日の予定は決定。全員が楽しそうにメイクをはじめるのだった。
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