第13話 どう見てもクマかヤ〇ザです
「……これが、さいきん王都周辺でハンターを襲ってたハンター狩り、ですか?」
「ああ。俺が証明する。そいつは卑劣な犯罪者だ。仲間が殺され、俺もご覧のありさまさ」
アリシア、見知らぬ男性と共に王都へ戻り、正門近くにいた衛兵に捕まえた二人の覆面くんを差し出す。
その際、コイツらはハンターを襲う犯罪者ですよ、と教えたところ衛兵さんはすごく驚いていた。
「ねぇアリシア」
「なに」
「あのハンター狩り? は、そんなに有名だったの?」
「ええ。わたしがまだノア様と出会う前から活動していたわ。主に狙うのはハンター。たまに貴族も狙われるから、両親が教えてくれた。Cランクのハンターも殺されてるとかなんとか」
「ふーん……そんなに強いとは思わなかったけどね」
「ノア様が規格外なだけで、普通は対人戦に特化した犯罪者を捕らえるのは、リスクが伴うわ。平然と倒せるハンターなんて、それこそよっぽど高位の人くらいね」
「それ褒めてる?」
「褒めてる」
「そっか」
ほんとかなぁ。
コイツなにを隠してるんだ? って顔してるけど。
まあいいや。
困惑する衛兵たちに大事な話を切り出そう。
「それで、この犯罪者をそちらに渡すので、賞金とか出ます?」
「しょ、賞金? そりゃあ出ますよ……今、部下に持って来させますね」
「ありがとうございます」
よかったよかった。
これで徒労は避けられる。
「俺からも回復薬や、助けてくれた恩を返させてくれ。少ないだろうが、金を出す」
「いいのかい? あなただって被害者だろうに」
「構わない。俺がこうして生きていられるのは、君たちのおかげだからね。貰ってくれ」
「……そう言うなら、お言葉に甘えて受け取るよ。悪いね」
男から小さな袋を受け取る。
ちらりと中身を見ると、数枚以上の金貨が入ってた。
数十万とかいきそう。
いいの? 返してと言われても返さないよ?
急いで懐に収納。これでよし。
「じゃあ賞金を貰ったら僕らはすぐにハンター協会に行く。あなたは医師の下を訪ねるといい。傷だらけのままだし」
「そうさせてもらう。本当に助かった。また見かけたら声をかけるよ。ありがとう」
手を振って男は街中へと消えていった。
律儀な人だったなぁ。
ランクも結構高そう。金貨をポンッとくれるくらいだからね。
その後、待つこと数十分。
犯罪者の確認を済ませて賞金を貰い、僕とアリシアはハンター協会へ向かった。
▼
「ようこそハンター協会へ」
ハンター協会の扉を潜り、受付へ行くと、何度も聞いたテンプレが僕たちを迎えてくれる。
「依頼の達成報告に来ました。これと……これを」
今朝受けた、ゴブリン討伐の依頼書と魔石をテーブルに並べる。
ついでに二人分のハンターライセンスを提出。
すると、
「はい、確認しました。ハンター名……ノアさんと、アリシアさん? ——え、ノアさんとアリシアさんですか!?」
と受付の女性が急に大きな声を出した。
びくりと僕の肩が震える。
「の、ノアとアリシアですが……え? 何かしちゃいました、僕ら」
「いえいえ! 問題などではございません。あなた方が、あの悪名高きハンター狩りを捕縛してくださったハンターですね。先程、衛兵から連絡をもらいました。我々一同、ノアさんとアリシアさんに感謝を申し上げます!」
バッと周りにいたスタッフも含めて、全員の従業員が素早く僕らに頭を下げる。
何事よ。
状況についていけない。
アリシアも。
「アリシアさんアリシアさん。僕、ちょっとよくわかんないんだけど」
「ず、随分と感謝されてるわね。よっぽど煮え湯を飲まされていたのかしら?」
「それはもう!」
アリシアの言葉に、受付の女性が大袈裟なリアクションをとる。
「ウチの駆け出しハンターが何人、奴らの餌食になったことか! 時に貴族すら襲い、何度われわれが貴族の方々に突っ突かれたか! 高ランクのハンター様はすぐによそのギルドへ入るし、遠く出掛ける者も多い。そのせいで、なかなかハンター狩りを止めてくれる者がいなかったのです! ——そこに! お二人が、ハンター狩りを捕まえたという報告がきたじゃありませんか! 話を聞いた時はすぐに受け入れられませんでしたが、事実だとわかり、ハンター協会会長もお二人にたいへん感謝してます」
「はぁ……それはどうも。捕まえたのは偶然で、賞金も出てますからそこまで感謝しなくていいですよ」
テンションについていけない。
「いいえ! それはハンター協会の面子に関わる問題です! なので、お二人にはこの先の階段を上がった奥の部屋へ行ってもらえませんか? そこで我がハンター協会の会長が待っています。今の時間なら、部屋に会長がいますので」
「僕たちが、会長と?」
「はい」
「光栄な話ですが、お断りします」
「なぜ!? 大事なお話があるんですよ~! お願いします! すぐに終わりますから!」
「え~……めんどくさい」
「ノアさんに断られると、わたし達の首が! 飛んでしまいます! 物理的にも!」
「超怖いじゃん会長。余計、会いたくないんだけど」
うるうるした目で見つめないで。
小動物みたいに縋らないで……断りにくいよ、それ。
はぁ。
「……わかりました。行きますよ。さっさと話を終わらせて帰りますからね」
僕の言葉に泣いて喜ぶ従業員たち。
やれやれと首を左右に振って、同じように疲れた顔を浮かべるアリシアと共に、僕らは奥の通路へ案内される。
思えば初めて入るね、この先に。
ワクワク——はしないかな。
▼
階段を上がって三階へ。
真っ直ぐな通路の奥に、目的地と思われる部屋への扉が見えた。
「あそこが会長の部屋です」
すっかり気分をよくした女性従業員に導かれるまま、扉の前まで進んで彼女が扉をノックする。
無駄に野太い声で「入れ」という返事がきた。
ガチャリと扉が開く。
部屋の中には、二メートルに到達すると思われる巨人がいた。
「失礼します会長。ハンター狩りを捕まえてくれたノアさんとアリシアさんをお連れしました」
「おお、早速か。ごくろう。君は下がりたまえ」
「失礼しました」
パタンと閉じる部屋の扉。
残される僕とアリシア。
目の前には、どう見ても常人とは思えぬ怪物がいた。
「よく来てくれた二人とも。俺はこのハンター協会で会長をやってるノーマンだ。わざわざご足労、すまないな」
こここ、これが協会の会長!?
いかつッ!
ゴリラが人間の姿を真似してると言っても信じるレベルじゃん。
カタギじゃねぇよ!
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