第5話  侵入するには

 駅から歩いて約十五分——


 秀司達は、二十五階もある高層マンションに来ていた。


「さて、ここからどうするかな」


 秀司は、高層マンションの扉の前で戸惑っていた。


 自動ドアの向こうには、監視カメラ、そして、部屋番号を打ち込んで、住人から開けてもらうための機械、もしくは住人が外から鍵を使ってはいるしか、選択肢はない。


「どうするって、普通に雪菜の部屋番を押して、入れてもらえばいいじゃん! そんなに難しい事なの?」


「お前、ここに何回きたと思っているんだ? 来るたびに攻撃されているのを忘れたのか?」


「おー、そうだった、そうだった。雪菜の家って、厳重警戒でフル装備しているんだっけ?」


「そうだ。それに、あの監視カメラ、ハッキングされている確率は高い」


「なるほど、なるほど」


 うんうん、と頷く涼音は、秀司の解説をしっかりと聞いた。


「それでどうするかだよね。今回はどうするの?」


「それは堂々と、正面から行くんだよ」


 自慢げに秀司は言った。


「はぁ? どういう事?」


 涼音は、何言ってるんだ、こいつ。という表情をしていた。


「どうせ、他にも裏口はあるが、雪菜が監視カメラを設置していないわけがないだろ? だから、正面から入る。それもちょっとしたコネを使ってな」


 秀司は、正面から入り、機械の前に立つ。番号を打ち込むと、呼び出し音が鳴りだした。


 番号は九〇四。


「あれ? 由紀なの番号って、五〇三号室じゃなかった? なんで?」


「いいから見てろ」


 そう言われると、スピーカーの向こうから、女性の声がした。


「はい、どちら様でしょうか?」


「あ、すみません。私、以前、あなたとお会いした三上と言います。塩月さんの知り合いでして、今日は、彼女の部屋の掃除できたんですが、呼び出しても出てくれないんです。もしかすると、寝ているのかもしれないので、申し訳ありませんが、この自動ドアの方を開けてもらえないでしょうか?」


 と、いつもは聞いたこともない爽やかな表情で、爽やかな口調で話をする秀司を見て、涼音は、寒気が走った。


「ああ、塩月さんの! 分かりました。すぐに開けますね」


「ありがとうございます」


 女性が、扉のロックを解除すると、ドアはスライドして、開かれる。


「嘘……」


 簡単に開いてしまったことに、涼音は唖然とした。


「ほら、涼音。行くぞ」


 先に歩き出す秀司。


「あ、待って、秀ちゃん!」


 後を追う涼音は、疑問に思った。


「ねぇ、なんで、あの人は開けてくれたの?」


「あ? それは、このマンションの出入りをしている間に顔見知りになったんだよ。お前も十回くらいは、すれ違っているし、話もしているぞ」


「え? そうだったの?」


「たぁ? ここに来ると、雪菜の事しか頭にない奴はこれだから……。別にいいけどな……。これで、五階まで階段を使って移動することができる」


 秀司達は、五階まで階段を上り始めた。

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