第3話 久々のターゲット
秀司は、明人から渡された一枚の写真を渡される。
そこには四十代くらいの男が、茶色の古臭いコートを着ている姿であった。
「こいつは?」
秀司は、この写真を見て、明人に説明を求める。
ひょっこり、顔を乗り出して、涼音も写真を見る。
「結構、おじさんだね。でも、熟練の技術を持っている感じ」
「そうだな。こいつの名は、須崎清隆。年齢、四十六歳。俺達が追いかけている組織の何らかの秘密を持っていると思われる人物だ」
「なるほどね。このおっさんが……」
秀司の目に映る男は、一筋縄ではいかなそうな匂いがした。
「で、奴の居場所とか、掴んでいるのか?」
「それがサッパリ。この写真も十日前のもので、警察の追跡システムで、何とか、足取りを掴もうとしたのはいいんだが、結局分からずじまい。だが、この東京のどこかにいることは、分かっている」
「その心は?」
「奴は、誰かと取引をするからだ?」
「何のために?」
「現在、日本で取引するとなれば、【粉】だろうな。昔みたいに銃刀法違反は、少し緩和されたが、それでも【粉】は、取引禁止されている。その取引場所さえ分かれば、こっちから仕掛けることもできるだろうな」
「粉ねぇ……。麻薬か……」
秀司は、それを聞いて、呆れ果てていた。
麻薬の取引が、この日本では、秘密裏に行われているのは知っている。
麻薬の流れとして、最終的には、『金』に辿り着く。
「目的は、資金集めって言ったところか……。くだらないな、この男も……」
「まぁ、そう言うなって、お前にとっては、情報が必要だろ。『あの日』の心理を知るためには……な」
「面倒くせぇーが、調査してみるか。涼音、それでいいか?」
「私は別にいいよ。ここ最近、喫茶店の仕事ばかりでつまんなかったし……」
涼音は秀司の意見に納得する。
「分かった。何かわかったら、俺に連絡してくれよ。くれぐれも殺さないようにしてくれ。後処理の事とか、考えてくれよ。俺が、どれだけ、隠ぺいしてきたことやら……」
明人は、残りのアイスコーヒーを飲み干す。
「その場の流れ次第だな」
「はぁ……。これだから、心配なんだよ。昔のお前に戻らないかと……」
「安心しろ。昔よりかはマシだって、少しは……」
「そうかい。だったら、後の事はよろしくな。俺は、本職に戻らないといけないから帰るな」
明人は、立ち上がって店を出ようとした。
「ああ、そう、そう。涼音ちゃん。秀司の事、頼むよ」
「はーい! 任せてください! 何と言っても、この私がいれば、秀ちゃんが死ぬ事はありませんから!」
「頼もしいね。それじゃあ、失礼するよ」
と、明人は店から姿を消した。
「さて、明日から忙しくなりそうだな。店の事も考えないといけない。やっぱ、誰か野党しかねぇーよな」
「そうそう、秀ちゃん、とにかく、二人で頑張ろう!」
「お前はいいよな、お気楽で……」
嬉しそうな涼音を見ながら、秀司は、明人から受け取った写真をポケットに入れた。
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