俺、可愛い子を見つけたよ!

「え!?いや、確かにクーア様なら何とかできると思うけど、そこまでして貰う訳には・・・・」

「あれ?ウォル~グレタにここに来た理由話してないの~?」

「あぁ、まだ伝えていない。町を見たかったんだろ?その後ゆっくり話そうと思ってな」

「あ、ごめんね」

「いや、気にすることは無い。折角砂の民の頭領であるグレタが案内してくれるんだからな。それに俺達も楽しんでいる」


 確かにこの町に来てから色々あったし、昨日は話す暇もなく寝ちゃったもんね。今日だって朝早くから、町を見て回ってるんだから話す時間なんて無かったよね。


「あの皇子、ここに来た理由とは?」

「あぁ、少し落ち着いて話せる場所はあるか?」

「それならこちらに」


 グレタが案内してくれたのは、小さなお店で外に居ても植物の良い匂いがお店から香ってくる。でも、生命力が溢れてる植物の匂いじゃないんだよな~不思議。


「良い匂い!」

「ちょっと待ってください。シリア居る~?」

「はいはい、居ますよ~あら、グレタどうしたの?」


 お店から出てきたのは、くるくるした長い髪のゆったりとした感じの女の人だった。髪に緑色が混ざっていて、綺麗だけどそれより気になるのが・・・・


「植物の匂いがする~」

「あら、初めましておチビさん」

「初めまして~クーアだよ!」

「丁寧にありがとうね、私はシリアここでハーブティ屋を営んでるの。植物の匂いがするのはそのせいね。お鼻に合わなかったかしら?」

「ううん、良い匂いだよ~植物の匂い俺好き!」

「それなら良かったわ。ささ、中へどうぞ~」


 シリアに続いてお店の中に入ると中は植物の匂いで溢れていて、テーブル2つとカウンターがある小ぢんまりとした落ち着くお店だった。所々に刺繍した布が飾ってあって可愛いし・・・・なにこれ?小さな置物が置いてある。シャールクに少し似ているけど触ってみるとふわふわしてるし、柔らかい。


「それは私が作ったぬいぐるみよ。可愛いでしょ?」

「うん!!」


 これぬいぐるみって言うんだ。可愛いし、柔らかいのも良い。これシリアが作ったって言ってたから、売ってないんだよね?良いな~欲しいな~これなんて言う動物なんだろ?


「ねぇシリア。これなんて言う動物なの?」

「これはスナネコよ」

「スナネコ?」

「えぇ、本当にたまにしか見れないけど砂漠に棲んでいるスナネコって言う動物で見れたら幸運が訪れるとも言われてるのよ」

「へ~見れるかな?」

「運が良ければね」


 砂漠に棲んでいるんだ~後で探してみようかな?でも、見つけても連れていくことは出来ないし、このぬいぐるみが欲しいな・・・・

 シリアは俺がずっと見てることに気づいて、ぬいぐるみを俺に持たせてくれたけどより欲しくなっちゃうな~。椅子に座らせてもらったけど俺には高かったので、ウォルの膝に乗りぬいぐるみを弄る。


「それで話っていうのは何だい?」

「ここは今水不足だろ?」

「あぁ飲む水は何とかしているが、それも今にでも無くなりそうさ」

「実は、クーアが水源を見つけたんだ」

「なんだって!?それは何処にあるんだい?」

「ここから馬で一日程の場所にある」

「それならすぐに人手を出すよ、一日程度なら危険も少ないし定期的に取りに行けるね」


 う~ん、どうして君はそんなに可愛いの?布で作られてるって事は分かるけど、動物の姿になるとこんなに可愛くなるんだね。ポツンとある目も、綺麗だしキラキラしてる。


「いや、その事なんだが・・・・実はクーアが水路を引いてくれているんだ」

「はぁ!?そんな事一人で出来る訳が」

「嘘じゃないぜ、クーア様凄いんだよね。たった一人でこの町の近くまで水を引いてきちゃってるんだよね」

「凄いとは思っていたけど、クーア様はいったい・・・・いや、恩人に余計な詮索はしないよ」


 布を買えば俺でも作れるかな?魔法を使えば出来そうだけど・・・・それは何か違う気がするんだよね。この子だから良い・・・・って感じなんだよね。それにそもそも布を買うお金持ってないし!


「あぁその方が助かる。ここら辺だとサスヴァンが一番水不足だろ?それでクーアの好意によってこの町に水を引こうと思っていたんだ。それで、枯れた井戸に水を通してもらおうかと思っていたんだが」

「あぁ・・・・その肝心の井戸が汚染されているって事か・・・・私はなんて事を」

「町を助けるためだったんだろう?仕方ない事だ」

「そうね、私の探知も万能な訳じゃないから」

「あぁ頭領として判断しただけだろう?騎士として、その判断を尊重する」

「救おうと思って駄目にしたらとんだ愚か者だよ」


 絶対に大切にするし、大事に持っておくからこの子売ってくれないかな?お金が無いから何かと交換って事になると思うけど、何か有ったかな?

 人形さんは大事だから駄目だし、魔物のお肉とか骨あとは俺が好きな粒々した果物ぐらいしか入ってないな~。後は、キラキラした石ばっかだし石じゃこの子と交換は出来ないよね?。俺の水はどうかな?俺の全力を注いだ水なら交換できるんじゃないかな?


「グレタ、あの井戸を掘るのは町全員で決めたことよ。そんなに自分を責めないで」

「クソっ折角町を救えるかもしれないのに・・・・」

「あぁあの井戸なら町の中で住民が行きやすい場所にある。水を通すならあそこが一番だが、そこでクーアに浄化を頼もうと思っているんだ」

「でも、あそこの汚染は酷くて・・・・」

「まぁクーアに出来るかどうかは聞いて見ないと分からない。クーア?」


 俺が全力を注げば、飲めば人間は永い間生きられるようになるし魔力も上がる。死にかけていた人なら蘇生できる程の力を持った水になると思う。力が欲しい人間って多いんでしょ?でもシリアって力が欲しそうなタイプじゃないよな~


 う~ん、人間が欲しがりそうな物ってなんだろう。シリアは植物が好きみたいだから、ここを緑の楽園にしてあげるとか?


「クーア様?」

「クーア様~」

「クーア?おーい、クーア?」

「んえ!?何?」

「大丈夫か?何か考え込んでたみたいだが・・・・」

「大丈夫!それでな~に?」

「俺の魔力を使って井戸の浄化は出来るか?」

「う~ん・・・・足りないね!地下深くから汚染された魔力が来てるから元を絶たないと」

「じゃあ俺の魔力も使ったら~?」

「4人合わせても足りないと思う」


 結構大きな汚染されたの魔力溜まりがあるから、4人は人間にしては魔力が多いけどみんなの魔力を使っても浄化しきれないね。


「そんな・・・・私の魔力を使っても無理かい?」

「うん、無理だね」


 グレタの魔力は4人と比べると少ない。町の人全員の魔力を合わせればもしかしたら出来るかも?だけど水と大地の再生は無理だね。


「クソっ・・・・」


 グレタはガンッとテーブルに拳を叩きつけた。


「じゃあ、俺がやっていいよね?」

「・・・・俺の魔力も使ってほしい」

「?足りないよ?」

「それでも良い。少しでも足しになるなら」


 ウォル達に無理はさせたくないんだけどな~でも、仲間外れは良くないよね。


「分かった~どれくらい使った方が良い?」

「俺の限界まで使ってくれて構わない」

「俺のも使って~クーア様!」

「私のも」

「俺も」

「少ないけど私のも使って欲しい」

「は~い、じゃあ井戸に行こ~!」


 スナネコの子と別れるのは悲しい・・・・でも早く井戸を浄化しないと。でも、最後に抱きしめるぐらいはしても良いよね?バイバイ、スナネコさん


「シリアさん、質問なんだがこのぬいぐるみを売って頂けないだろうか?」

「え!」


 貸してもらったぬいぐるみを、元の場所に戻そうとしたらウォルがシリアさんに聞いてくれた。


「えぇ気に入ってただけたみたいだから、その子はクーア君にあげるわ」

「ほんとに!?」

「えぇ、井戸を直してくれるのでしょ?お礼としては、足りない気がするけど私から贈らせてね」

「わーい!ありがとうシリアさん、ウォルも聞いてくれてありがとう!」


 やった!やった!貰えたぞ~絶対に汚れないようにしないと、布って時間が経ったら破けちゃったりするんだよね?なら、時間を止めちゃえば壊れることも汚れることもないよね。


 俺は喜びのあまり店の中を駆けまわり、ウォルに抱き着いたりみんなに俺の子になったスナネコさんを見せてあげる。


「良かったな」

「うん!あ、そうだ。シリアさんにお礼あげる~」

「あら、大丈夫よ。足りないくらいなんだから」

「じゃあ、これでハーブティ作って!俺飲んでみたいし、残りは全部あげる!」


 ウォルに頭を撫でてもらいシリアさんへのプレゼントを、俺の持ち物から出す。これは、俺が生まれた湖の中に生えててすごく良い匂いなんだよね。水の魔力を沢山持ってて、そのまま食べても美味しいよ。


「!それは・・・・ちょっと私には無理ね。難しすぎるわ」

「そうなの?残念」

「えぇ代わりに、井戸が直ったら私お手製のハーブティをご馳走するわ」

「楽しみ~それじゃあ、井戸に行こ~!」


 良い匂いがする植物を出した時みんな固まってたけど、良い匂いだからかな?シャールクなんて尻尾がピーンとなっていて面白かった。ウォルに抱っこして貰って、お店を後にした俺達は井戸に向かうのであった。

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