俺、歓迎されたよ!

 サスヴァンが目の前に見えてきたとき、町の中から人影が2つ馬に乗ってこっちに向かってくる。武器も持ってるし、どうしたのかな?


「止まれ!!!何者だ!」


 槍を持ち馬に乗って俺達の前に来た人達は、槍を俺達に向けて厳しい目で俺達を睨みつける。なんかピリピリしてるね


「エルヴィラス皇国第三皇子ヴァン・エルヴィラスだ」

「!?失礼致しました!」 


 ウォルが臆することなく答えると、慌ててで槍を下げる人達。よく見ると少し疲れているというか、怪我してる?


「まさか、皇子様とは思っておらず大変失礼しました」

「いや、町を守るには必要な事だ。何やら怪我をしているようだが、どうしたんだ?」

「実は・・・・」


 馬に乗ってきた人たちの案内で町の中に入ってみたけど、なんだか雰囲気が暗い感じ・・・・たまに血の匂いもするし一体どうしたんだろう?シャールクから話を聞いて見るのを楽しみにしてたんだけど、砂のお家をゆっくり見れる雰囲気じゃなさそう。


「こちらへどうぞ」


 町の奥にある周りの家より一回り大きな家に案内されたけど、中から汚染された魔力を感じる。だけど、魔物が居る訳じゃなくて中に居るのは人間だ。


「これは・・・・」

「何という事だ」

「すぐに治療を・・・・!」


 中に入って奥の部屋の扉を開けると、そこには体中に汗をかき苦しそうにうなっている大きな女の人が。体の怪我を治療した様子だけど、汚染された魔力のせいでうまく魔法が効いてない。


酷い・・・・


 ボロボロな姿を見ると知らない人だけど、悲しくなっちゃう。ウォル達が急いで治療魔法を頑張って掛けてるけど・・・・


「クソっ」

「この状態になってどれくらい経ってるの!?」

「3日です・・・・」

「それは・・・・」


 うん、みんな分かってると思うけど体中に高濃度の汚染された魔力が巡ってしまっている。汚染した魔力をどうにかしないと、助ける事は出来ないね。しかも、3日も経ってるから汚染された魔力が体に染みついちゃってる。体の中を回ってるだけなら、何とか出来たと思うけど体に定着しちゃった魔力は無理だね。


「レイラン、その人を治すのは無理だよ」

「分かってるわ、だけど!!!」

「だから、俺が治すね」


 この人を治すのは人間には無理だけど、俺になら出来る。体を俺の魔力で作った水に浸しちゃえば定着した魔力だって簡単に取れちゃうんだから!


「え・・・・」

「だから、そこから離れて~」


 みんな驚いた顔してるけど、何でだろ?案内してくれた人も子の怪我している人を見て凄く悲しそうにしてるし、ウォル達も悲しそうだから俺が全部治してあげる。この程度俺には楽勝!ついでだから、町に居る人たちの怪我も治してあげようっと。そうすればみんな笑顔で楽しくなるよね!


 俺は魔法で水を作り出し、苦しんでいる女の人を包み込み体を浮かせる。俺の水に汚染された魔力を移してっと。あとは、消耗した生命力を戻してあげないとね。忘れずに、魂も浄化しておかないと。

 普通なら水の中に生き物を入れたら、息を吸えず溺れてしまうけど俺の水は特別だから息も吸えるし目も空けられる。

 汚染した魔力でダメージを負った体も治してあげてっと、


「何なんだいこれは・・・・!」


 傷を治してあげてると、体力が戻った女の人が目を覚まし吃驚したのか暴れちゃった!なんか魔法も使おうとしてるし、


「大丈夫だよ!怪我を治してあげてるだけだから安心して」

「私の怪我を・・・・?いや、私はもう駄目なんじゃないのか?」

「ぜーんぶ俺が治してあげるから安心して良いよ!」

「そんな・・・・」


 女の人は目が落ちるんじゃないかと思うぐらい見開いて俺を見ると、涙を流しながら俺の水に体を預けてくれた。


 きっと諦めてたんだろうな~そもそもこんなに体中を汚染された魔力に蝕まれているのに3日間生きてられたのが凄い。

 魔力が沢山あればある程度抵抗する事は出来るけど、生き物は汚染された魔力に弱い。俺だって汚染された魔力を使った武器で斬られたら痛いし少しだけ負傷もする。

 この人はそこまで魔力が無いのにこんなに抵抗することが出来たんだからご褒美あげないとね!


 俺の魔力と水が体中に巡り、もう汚染した魔力は何処にも無い。


魂の浄化も終わったしもう大丈夫だね!


 俺はゆっくりと体をベットに下ろし、目を瞑ったまま泣いている女の人の傍に行くと頭を撫でながら


「よく頑張ったね。もう大丈夫」

「ありがとうございます・・・・・ありがとうございます・・・・」


 涙は止まってないけど、悲しんでる訳じゃないし大丈夫だよね。


 頑張った偉い子には、よしよししてあげよう!ウォル達に撫でられると嬉しいから、俺もしてあげるのだ。良い事したでしょ!と振り返ってみると、ウォル達も目が落ちるんじゃないかと思うほど驚いてるみたいだけど・・・・どうしたのかな?


「ウォル~大丈夫?」

「え?いや、クーアは汚染された体を治せるのか・・・・?」

「うん、魂が完全に汚染されてなければ大丈夫だよ~」

「そんなことが・・・・」

「クーア様マジヤバい」


 う~ん、驚かれてるけど褒められてるってことで良いんだよね?


「グレダ様本当にもう大丈夫なんですか!?」

「あぁ、もう何処も痛くないよ」


 みんなが固まってる間に、女の人起き上がったみたい。お名前はグレダって言うんだ~


 俺はとりあえず固まってるみんなは置いておいて、起き上がったグレダの様子を見ることにする。


「無理しない方が良いよ~体と体力は戻したけど眠りまでは治せないから、ゆっくり休んだ方が良いよ」

「クーア様でよろしかったでしょうか?」

「そうだよ~俺クーア!よろしくね」

「私は砂の民の頭領を務めているグレアです。この度は本当にありがとうございました」

「「ありがとうございます!!!」」

「気にしないで~」


 グレダは長い黒髪でキレのある目をしているけど瞳は優しさを感じるカッコイイ人だ。ちょっと眠れてなくて疲れているように見えるけど仕方ないよね。痛みで眠れなかっただろうし、いくら俺でも必要な睡眠を補うことは出来ないんだよね~


「皇子、このような姿ですみません」

「いや、気にするな。それより、何があったんだ?」


 あ、グレタが皇子に話しかけたら復活した。さっきまで唖然としてたのに、そういう所はしっかりしてるんだよねウォルって。


「実は、3日前魔物による襲撃を受けまして・・・・いつも通り対処していたのですが、子供が逃げ遅れてしまい私とした事が不足をとってしまいました。砂の民として、恥ずかしい限りです子供を守りながら戦うことが出来ないなんて・・・・」

「そんな、頭領は魔物を全部倒したじゃないか!」

「倒すだけじゃなくて、次の襲撃にも対応できるようにたたくのが砂の民の戦士さ。戦えなくなる戦い方じゃ半人前さ」

「砂の民には助かっているできれば支援をしたいんだが・・・・」

「皇子気にすることないよ。私達は好きでやってるんだ、それに支援を必要としてる場所はいっぱい在るだろう?私達は頑丈だし大丈夫だよ。ま、さっきまで横になってた私が言うんじゃ説得力無いけどね」


 そう言って豪快に笑うグレタ。自虐気味に笑うグレタにウォルは困った顔してる


「いや、すまない俺達の力不足だ」

「良いんだよ、皇子達はクーア様を連れてきてくれたじゃないかおかげで助かったよ」

「グレタ強いね~3日も耐えるなんて」

「はっはっはっ砂の民だもの。これぐらい耐えてみせるさ。恩人と客人をこのままにさせる訳にもいかないからね。オリス、ネフェス食事と寝床の準備を」

「「はい!」」

「お客人こちらへどうぞ」

「グレタしっかり休んでね~」

「すまない世話になる」


 案内されて食事をとった俺達は、急いで町まで来たこともあって疲れていたのか倒れるように眠ってしまった。

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