第2話 8月6日

数日前に思い立ち、私は伊豆にダイビングに行くことにした。

きっかけなどは特になかった。ただ、教員という仕事の短い夏休みを、時間と金を持て余し安い娯楽のために散財するくらいなら、新しい経験を得ようと思ったというだけである。


さて、伊豆には自宅から車で向かうことになる訳だが、私は今まで長時間運転をしたこともなければ、高速道路を使ったことなどなかった。

「まぁなんとかなるだろう」という持ち前の前向きさに似た考えなしさのために、さほど不安にはならなかったが、運転してみるとこれはしんどいものであった。


まず、サービスエリアがない。

運転の途中でトイレに行きたくなっても、サービスエリアがなければトイレにも行けないし、喉が渇いても飲み物も買えなかった。

それに気づいてからはサービスエリアが見えたら確実に寄っていった。


そんなこんなで四苦八苦しながらもたどり着いた宿は、小高い丘の上にある木々に囲まれたお洒落な洋館のような建物だった。

初めて旅館を予約したため不安だったが、女将さんも旦那さん(定かではないが)も素敵な笑顔で迎えてくれた。


露天風呂は、木造の小屋のような建物の中にあり、そこからは外の木々の緑がよく見えた。

鳥の鳴き声や虫の声が美しく響き、とてもゆったりとした時間が過ごせた。

料理は、お刺身やお肉、スープなどがあり、とてもボリュームがあった。

デザートの前に出されたご飯は、どう見ても一人分ではない量であったが、何とか食べ切った。(後で周りを見て、それは2、3人で分けて食べる量だったことを知った)お腹いっぱいになるまで食べて、とても幸せだった。


さて、明日はいよいよダイビングだ。

しっかり寝なければ・・・と、思ったのだが、やはり慣れない場所では寝にくいものだった。

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