第453話 騎士団長補佐菅
騎士団長補佐、ベアトリスちゃん復活!
「妹ちゃん可愛いですね副団長」
「ウルセェ黙れ」
「お久しぶりです」
「みんな久しぶりー」
久しぶりにあった騎士団の面々の中には新しい顔ぶれがあった。きっと新人さんなんだろう、新人なのにもこんなでかい戦いに巻き込まれて可哀想に……。
「いいから早く行くぞ、乗れ」
そう言われた騎士団員たちは馬にまたがり、走っていく。
「あれ、馬が足りない?」
ラディがそんなつぶやきをした。それをたまたま聞いた団員からまさかの回答があった。
「馬は人数分しかありませんよ。カイラス団長が今戦場にいるので、残っている馬は副団長ので最後です」
「よし、ベアトリス。お前は走れ」
「いやですけど!?」
理不尽にもほどがある。が、それをいつものやりとりなのだろうと思ってくれた団員はさっさと言ってしまった。
「ちっ、あんまり暴れんなよ?」
「誰が暴れるか!」
♦️
馬というものは存外早い。騎士団で鍛え上げられた馬なら尚更である。
でこぼことした道ですらもスイスイと進んで行く馬達はとてもすごい。スピード的に俊敏性は1000くらいだろうか?
「おい、酔ってないか?」
「全然平気。私馬車で慣れてるから」
出発してからというもの時々一緒の馬に乗っているラディが私の体調を心配してくれる。私は馬車酔いが酷すぎて、『麻痺』と『睡眠』の魔法を自分にかけてどうにか耐えていたが、そのせいで麻痺と睡眠の魔法は私に効かなくなってしまった。
ついでに馬車酔いもなんか知らないけど治ったから結果オーライだ。
「もうすぐそこだ。お前は走っていくか?」
ラディが冗談めかしにそんなことを言った。
「じゃあそうするわ。先に行ってる」
そう言って私は馬から飛び降りて、駆け出した。
うん、あんだけ馬を褒めといてあれだが……私の方が早いです……。これはしょうがないステータス差があるからね。
だが、俊敏性が1000もある馬なんてとても珍しい。ステータスが何かしら1000を超えるととても優れたステータスをしているともてはやされるこの世で、俊敏性1000の馬は普通にすごい。
私が強くなる前までは量で戦うのが戦争だと思ってたけど、本当の強者にはそれが通じないんだなって改めて実感した。
そもそもこの世界の強さの比率はおかしい。
ステータスが10000を超えている猛者……例えばSランク冒険者という存在が、ミサリーと私を抜いても数人はいるわけで、なのにも関わらず1000ですごいと言われるのはどうなんだろう?
さらにその上の強さを誇っている魔王や勇者といった存在もいる。よくぞまあ千未満のステータスで生きてきたな私たち。
とまあ、そんなことを考えている間に前線へ到着した。そこにいたのは人間と獣人による混成軍だった。
獣王国とステイラル王国からの援軍……その両軍が私の方を見ている。
自分で言うのもなんだが、私の顔は戦場に似合わない。確かに目つきはちょっときついかもだけど、それを差し引いても親から受け継いだ美形がある。
戦場に似合わない女でしかも子供……それはガン見されるわな。
だが、その視線は私のきている鎧を見てどんどん薄れていった。
騎士団の鎧はとても効果的に働いてくれたようだ。防御力は私にとっては紙切れだけど、こう言う使い方もあるのだよ。
《ものはいいよう……いい勉強になりました》
なんか一人だけ違う解釈してるけど、まいっか。
後から追いついてきたラディ達が馬を降りてこちらに寄ってくる。
「お前本当に走り出すな!」
「え、でも走ったらっていったじゃん!」
「冗談だろう!?本当に駆け出すやつがあるか!それと、お前足早いな!?」
そんな会話を繰り広げていると、テントの中から見知った顔が出てきた。
「なんだ騒々しい……」
出てきたのは、カイラス団長だ。
「カイラス団長、お久しぶりです」
「お前は……ベアトリスじゃないか」
「はい、なんだかやつれましたか?」
「ふん、これも優秀な補佐官がいなくなったせいかな?」
「それは失礼しました。お国の危機ということで私も参戦いたします!」
これでも私は元貴族。所作は完璧であり、そんな私の所作を見て団員達はますます「ラディ副団長とはいい意味で違う」と囁いている。
「よし、みんな!優秀な補佐官がきてくれたぞ!これでもう勝ったも同然だな!」
はははと笑うカイラス団長。王国の兵士たちはそれをみんなを和まそうとしているのだと思っているだろうが、カイラス団長ならもしかしたら本気で言っているかもしれない。
「さて、補佐官。戦場に行く準備はできているかね?」
「もちろんです!」
「では、行こうか」
忙しなくいろんな人たちが出陣のための準備をおこなっている。
「あ、そうだベアトリス。一つ頼まれてはくれないか?」
「なんですか?」
「小隊を率いて『小隊長』として出陣してほしい」
「え?」
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