第452話 久しぶりの獣王国

 次の日


「はぁ!今日も頑張るぞー!」


 昨日はとても疲れた。色々とね。


 うん、色々と。


「こういうのも悪くない……」


 結局レオ君はお食事しましたとさ。なんだか逆にこっちが楽しくなってくる、いやぁついつい……レオ君の恍惚とした表情を見るのが楽しい。


 《……………オフラインにしておいてよかったです》


 別にやらしいことはしてないんだけどな……レオ君はとっても紳士だからどんなことがあろうと襲ってきたりしないのだ!


 《私が心配しているのはその逆です》


 え、私?そんなことするような人に見える?


 《見えます》


 解せない……。


「まあいいわ!とにかく今日も一日有意義に過ごすのよ!」


 と言っても私がするべきことなんてほとんどない。なぜなら、みんなが色々と手を回していくれているおかげで私は何もする必要がなかったのだ。


「私もしかして何もしなくていい?」


 そういうわけにもいかないのはわかっているけど、本当にすることが見つからない。


 《では、獣王国の様子を見に行くのはどうでしょう?》


「私抜けてもいいのかな?確かにすることないとは言っても……流石に気が引ける」


 私から今回のことを提案しておいてやること丸投げって、最低じゃん。


 《誰も、それを咎めることはしないでしょう》


 それならいいけどさ。でも、なんで獣王国に行くの?あっちにはマレスティーナがいるじゃん、負ける方が難しいよ?


 《彼女の性格上、手を抜く可能性があります》


 え、なんだってそんなことを?


 《彼女自身は戦いにそれほどの興味はありませんが、戦いは『選別』に役立つのです》


 なるほど、つまりは選抜者になれそうなやつに目をつけるために手を抜くということか。いざとなったら自分が守りに行けばいいだけだしね。


 そうなると被害は大きいな。


「よし、じゃあ早速向かおうか」



 ♦️



 転移で移動した先は騎士団の駐屯地だった。


「久しぶりにここ見たなー」


 もちろん猫獣人に大変身を遂げてから転移したので、私が人間だということはバレないはずだ。


「それにしても誰もいないな。やっぱりみんな戦いに行ったのかな?」


 無事だといいけど……そう思って、うろうろしていると、


「ベアトリス?」


「その声は……ラディオス副団長?」


 聞き覚えのある声に振り返るとちょうど駐屯地の中に入ってきていたラディがいた。


「って、その前にどうしたのその傷!」


 体全身がボロボロで私とラディが初めて会った時と同じくらいボロボロだった。


「ああ、これは少し油断しただけだ」


「早く回復を!」


「問題ない、ポーションがあるからな」


 そう言っておもむろに瓶を取り出して、ぐびっと一気に飲み干した。


「他の方達は?」


「後から来るはずだ。それより、お前こそ今までどこ行ってたんだ?肩書きを渡してやったのに、用事が済んだら急にいなくなりやがって」


「あ、それはちょっと……私にも色々と用事があったのよ」


「まあいいさ。お前は俺の『妹』なんだろ?もっと妹らしくしとけよ」


 くっ!怪我しているからって私が手を出さないことをわかっているんだなこいつ!?


「わかったけど……それより、人間たちの援軍はどこにいるの?」


「あ?それなら、前線基地にいるはずだ。俺たちは治療のために一旦後退しただけだからな。ポーションをかき集めたらすぐに前線へ戻る。その時に……一緒についてくるんだろ?」


「もちろん」


「怪我はしないようにな?お前に怪我させたら周りから怒られちまう」


 ……怪我しようかな。


「騎士団の皆さんってまあまあ強かったじゃない?それなのにこんなにボロボロになるってことはかなりの強敵なの?」


 実際カイラス率いる騎士団は熟練された者たちが多く所属する精鋭部隊である。それが苦戦しているというのであれば、今回の敵はかなりの人数がいるのかそれとも……


「強敵なんてもんじゃねえ。誰もあの『女』に傷ひとつつけられやしなかった」


「ってことは、一人ですか?強いのは」


「まあな、もちろんその女が率いる軍も数が数だけに面倒だがな」


 この世は量より質の世界。秀でた1には、どんなに数がいても勝てない。


 正攻法で攻略するには大量の犠牲を払って体力切れを待つくらいしかないだろう……実際にそんな戦法を取る指揮官はいないと思うけど。


 《おそらく心配は無用です。それだけ抜きん出た能力があるのであればマレスティーナが動くはずです》


 ま、そうだよね。心配はしてない。少なくともその一人の強敵の脅威はしばらく訪れないだろう。


「おい、何笑ってんだ」


「場を和ませようとしたんだけど、無理だった?」


「この状況で笑ってるのは怖いぞ……」


 若干引いためでこちらを見ているラディ。


「次の出発は何時くらいになりそうなの?」


「そうだな、今から一時間後くらいか?」


「じゃあ、騎士団の方々に言ってきて。『騎士団補佐の鎧の準備をしてきて』って」

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