第304話 二人の編入生
日曜日が終わり、みんなが大嫌いな月曜がやってくる。また書類地獄に飲まれるのかと、少し残念な気分になるが、授業をするというのは楽しいのでまあ嫌いではない。
放課後にはクラブもあることだし!
「さてさて、今日は何かあるのかな〜?」
まずは連絡事項のチェック。回覧板のように回ってくる本日の連絡事項が書かれたプリントが私に手渡される。
私が回される最後の一人で、後はこれを理事長に届けるわけだが、今日はなんだか書かれていることが多かった。
「む?編入生?」
本日より、外国からの編入生が来るそうだ。人数は二人。
二人同時に編入ということは、まあまあ珍しいことらしく、先輩教師たちも少し驚いていた。そして、その二人の配属先はといえば……。
「え、私のとこ?」
私が担任を務める特別クラスである。
特別というか、異世界人しかいないからある意味特別。
他の生徒よりも待遇されることはないが、全員揃ってこの大学院の成績上位者たちだ。なお、それは実技試験の話であり、座学はボロッボロの者も多い模様。
異世界の時から同じクラスメートだったうちの教室に、新たに外国から編入生を追加するなどおかしな話ではある。
が、そういうこともあるのだろうか?
と思って先輩教師たちに聞いてみたところ、「他の教室はすでに30以上の生徒いて、20人しか生徒がいないあなたの教室に任されたのでは?」という意見と、「外国の王族が一人いるから」という意見もあった。
へー、片方は王族なのか。
だが、王族だからといって私が教育を甘くすると考えたら大間違えだ。
「よーし、じゃあそろそろ顔合わせの頃かな?」
と、考えていると
「失礼します!」
と、声が聞こえてくる。あれ、なんだか聞き馴染みのある声のような気がしたが……まあいいだろう。
「はーい」
職員室の扉を叩く音に反応して私が机から振り向くと、そこには……
「ええ!?」
♦️
「シルと言います」
「ターニャだ!よろしくなのだー!」
「と……というわけで、今日から皆さんと一緒に学んでいくシルさm……シル君とターニャ……ちゃんです」
どうしてこうなった?
いや、別に二人がここにいることに不満はない。友達……というか、知り合いがうちの学校に入ってくれたのは普通に嬉しい。
だがしかし!違うじゃん!?なんで私の教室な訳!?なんで私が二人の指導もやらなくちゃいけないの!?
シル様は既に私が教えることなさそうだし、ターニャに関しては絶対に授業に集中できるこに思えない……。
「というわけで、二人とも席についてください」
「はーい」
「はい」
用意された席に二人を座らせたところから、ホームルームを終えた記憶がない。
気づけば私は二人を裏庭の方へ呼び出して、尋問にかけていた。
「どういうことお!?」
「お久しぶりだね、ベア」
「お久しぶりなのだね、ベア!」
だめだ、会話になっていない。
「えーっと……なんでここにいるの?」
「もちろん、君に会いに……ごめんごめん冗談です」
拳をゆっくりと構えたが、それをおろす。
「父上にはコッテリ搾られたけど、なんとか許しは得たよ。それと、お兄様がここにいるかもしれないって聞いて父上は喜んで僕を送り出してくれた」
「ターニャは?」
「僕の部下ってことになってるから、鬼族を引き連れて王国へ来たよ」
「え……ってことは鬼族の方たちもここに……」
「流石にそれはできなかった。だから、今は『旧公爵領』を使わせてもらってるよ」
旧公爵領。私の地元である。
「そう……って、ちょっと待って!?悪魔がいるんじゃない、そこ?」
私が公爵領に近づいてこなかったのは下位の悪魔がいるからだ。彼らを倒すのは簡単でも、その目からあの悪魔の主人である少女に見つかりかねなかったからだ。
鬼人が強いとはいえ、勝てるか?
「ああ、それについてはもう心配なさそう」
「何かあったの?」
「悪魔たちはほとんど地面に伏していたんだ。まるで拳で殴り潰されたかのように顔が潰れてる悪魔さえいたよ」
おっと?
「それにね、不思議な目撃情報もあった」
「というと?」
「メイド服を着た幽霊が、うつろな目で鬼族たちを見つめていると……」
「ごめん……」
「え?」
それ、私のメイドです。
「そ、そうだったの?」
絶対にそうです。
うちの専属メイドさんはね、元冒険者なんですよ……。
「じゃあ、その人とも合流できそうでよかったね」
「ええ……あの子が鬼族の話に耳を傾ければだけど」
私がいっそのこと出向いてしまおうか?二年も留守にしてしまったし、悪魔の数もだいぶ少なくなっているとのこと。
だったら、私が直接出向いて会いに行ってしまおう。
今度の土曜日あたりかな。
「久しぶりに会えると思うと……何だか感動しちゃうわね」
「それはよかった」
「それで……シル様の目的はなんなの?」
まあ、もうすでにわかっていることではあるが。
「お兄様はどの教室?」
「シル様の教室の二つ奥」
「わかった」
そういうと、学院の中に走っていき、そのまま廊下を走っていく。
「全く、廊下は走っちゃダメって決まりなんだけどな」
「ベア先生!注意に行きましょう!」
ターニャのその顔は注意しにいく、というよりも……興味津々という顔をしていた。
「ええ、早く行きましょ」
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