第71話 有名な三人

「ああ!みてみて!私の名前あったよ!」


「ほんと?よかったわね、レイ」


 合格発表は試験の次の日だった。

 一度家に帰って私は寝たのだが、どうやら寝る部屋がすで用意されていたようだ。


 そこでみんな寝泊まりしたそうな?


 まあ、私には関係ないけどね。


「ベアちゃんのあった?」


「ちょっと気になってんだけど、いつからベアちゃん呼びしてた?」


「え、ダメ?」


「別にいいけどさぁ」


 気恥ずかしいからねぇ?


 まあ、私もレイナのことをレイと呼んでいるためお互い様か……。


「あれ?ベアちゃんのなくない?」


「まじ?」


 それがほんとだったら嬉しいな。

 そもそもの試験に落ちたのであれば、これから脱出法考える必要もない。


「すみません!追加で次席と首席の名前も張り出させていただきます!」


 上級生?

 制服を着た人が紙を持ってきて、それを掲示板に貼る。


 そこには……。


「あ!あったね!よかったよかった!」


「どうしてだよぉ……」


「ベアちゃん?次席だったのがそんなに悔しいの?」


「そういうわけじゃないけどさぁ?」


 編入試験で次席だろうと、別に編入した後も次席ですと名乗れるわけではない。

 普通に受験して入った貴族たちの中にも次席はいるわけで、決して私が名乗れるわけではない。


 むしろ私が名乗って喧嘩ふっかけてもらおうか?


「首席の子。名前、聞いたことないな?」


「今回の編入試験は貴族だけじゃなくて、一般市民……領民も参加できるってことらしいから、きっと領民の方でしょ」


「へー!仲良くならないと!」


「楽しそうね……」


 私は合格発表と同時に渡された紙を見て、自分の教室まで向かっていくのだった。



 ♦︎♢♦︎♢♦︎



「はぁ、Aクラスか……」


 Aクラスにだけは入りたくなかったが、こればっかりはしょうがない。

 この学院では、成績によってクラス分けされるのだ。


 そしてAクラスはその中でも一番頭がいい部類。

 まあ、成績トップら辺を維持してる人たちがいるってわけ。


 それすなわち、生徒会メンバーのほとんどがここにいるんだよ!


 腐ってやがる!


 どうしてこうなった!?

 私は筆記に関しては0点もいいところでしょ!?


 なんでAクラスなんだよ!

 それに、


「それでね!ベアトリスはね!」


「あはは、そうだったんだ」


 なんでレイは首席と話で盛り上がってるわけ!?

 どんなコミュニケーション能力してんだよ!


 コミュ強かよ!


「ん?どうしたのベアちゃん。疲れてるみたいだけど……」


「なんでもないわ、気にしなくていいわよ」


 一応いつもの態度に戻しておく。


 今は先生は朝のホームルームを行なっている最中であり、私たちは、呼ばれるまで待機しているというのが現状である。


 そして、


「三人とも。準備できたから、入ってきてちょうだい!」


 女の先生が、中から顔を出して、私たちを連れていく。


 しかもなんで私が先頭で?

 最悪すぎる……。


 いや!


 先頭が一番注目を集めると限ったことではない!

 なぜならこっちには美少女が二人もいるのだから!


 男どもだけでもきっとそっちに視線がいくに違いない!

 私なんて目つき悪いだけの普通の女の子。


 もはや顔面偏差値が中の下!

 だから、大丈夫!


 まだ……泣くような時間じゃない……ぐすん。


「はい!今回編入してきた友達を紹介します!では、一人ずつ自己紹介してください!」


 どの順番で自己紹介するかと先ほど相談したのだが、結果レイが最初で首席が最後ということになった。


 まあ、成績順ってことだよね。


「あ、レイナ・フォン・アステルナと申します!えっと、得意なものは魔法です!あの、よかったら、と、友達になってください!」


 ぺこんとお辞儀をするレイ。

 リュース辺境伯……辺境伯の娘なだけあって、お辞儀の所作は完璧なんだけどね……緊張しちゃったら噛んじゃうよね。


「あれって、『呪われた少女』じゃないか?」


「辺境伯の……」


「でも、呪いは解けたって噂だぞ?」


 何かヒソヒソと話している生徒たち。


(呪われた少女?もしかしてレイのこと?)


 確かにアルビノではあったものの、呪われてなんかいなかったけどなぁ。

 まあ、でも治ったって話になってるんだったら別にいいだろう。


「次は私ね」


 レイが一歩下がり、私が一歩前に出る。


「ベアトリス・フォン・アナトレスと申します。得意なものは特にはありませんね。以後お見知り置きくださいませ」


 きれいに所作を決め、一応笑顔で最後を締めることができた。

 私の笑顔がどれだけ恐怖を与えているかはちょっとわからないが、礼儀としては、こうするほかないのである。


「アナトレス……公爵家!?」


「あれって、『神童』じゃない?」


「え?あの勇者と互角だったっていう……」


「でも、単なる噂話でしょ?」


「勇者本人が言いふらしてるらしいけど……?」


 おい、勇者。

 てめーなにしてくれてんだ!


 帝国に帰った後でも、私のことを苦しめてくれる!


「じゃあ、最後は……」


「はい、私ですね」


 その少女……首席の番になる。


「はじめましてオリビアと申します。私は貴族ではないので、右も左もわかりません。どうか、仲良くしてください」


 貴族ではないらしいけど、礼儀作法は教え込まれてるのかな?

 きれいな所作でお辞儀ができている。


 茶色の髪が揺れる動作が可愛いな。


 男子生徒には人気でそう。

 女子には……わからんけど。


「もしかして、『聖女候補』じゃない?」


「あの聖女の!?」


「神官様にも認められているみたいだし、ほぼ確定だろ」


「それにしても、可愛い……」


 男子ウケはめっちゃ良さそうだね。


「はい!というわけで、今日からこの三人と仲良くするように!朝の授業が始まりますので、教科書を準備しておいてください!三人は空いた席に座ってちょうだいね」


 そうして、私たちの自己紹介は終わった。

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