第2話 新居の話しと、亡き夫との馴れ初め

うちの新居の一階部分は店舗になっていて、向かって左からイタリアンバル、チャイナ風居酒屋、それに、こぢんまりしたBARが入っている。しかも全店舗テラス付きで、そこでなら犬同伴ОKというではないか。なんて素晴しい。部屋は5階建てマンションの2階にあるので、ビル内にあるエレベーターは使わず、イタリアンバルの横にある階段を利用する。その方が人に会わず楽なのだ。

間取りは2LDK。8畳間を寝室、5,5畳は書斎にした。居間は割と広く15畳ある。そこに大きなテレビを設置、テレビの真正面に、寝転べる大きなカウチがあり、テレビとカウチの間には炬燵テーブルを設置。冬になったら、ここで鍋を食べるのがいまから楽しみである。

キッチンカウンターには椅子をふたつ用意。ふたつも要らなかったのだが、夫との想い出の椅子なので捨てずに持って来た。廊下に面した流し台には窓があり、早起きをした時など、朝の光を感じられるので嬉しい。

このマンションは玄関の扉を開けると、表通りに面する窓が正面に広がり、夕刻時は西日が眩しいものの、薄いカーテンを敷けば問題ない。そのベランダの窓を開け放つと、通りを渡る人々の話声や、車、自転車、飲食店の活気が耳に入る。夏場は街路樹の蝉が騒ぎ、窓を閉めていても大合奏だ。

ここに越してすぐの頃、防水加工をしてあるウッドデッキのベランダに出て、道行く人を眺めるのが晋之介の日課だった。ここ最近は暑いので、窓は締め切りだが。

「晋之介、今夜はイタリアンバルでお食事しようか」

イタリアンバルの屋号が長くて覚えられないので、わたしはいつもイタリアンバルと呼ぶ。ちなみにチャイナ風居酒屋の屋号は「チョモランマ」、こぢんまりしたBARは「アネラBAR」である。

17時半、予約していたテラス席に着くと、先に晋之介のお水が提供される。

心優しい店員さんに晋之介は良く懐いていて、いつも店員さんのエプロンに突進してしまい申し訳ない。

ここでは生ビールを頂いてから、赤ワインを2、3杯のむ。チョモランマでは瓶ビールの後に、赤ワインを2、3杯。BARでは専ら、赤ワインを永遠にという感じだ。どの店も一杯400円から500円と良心的。

お酒の話しはここまでにして、ほんの少しだけ、夫との馴れ初めを紹介したい。

夫とわたしは、高校時代の同級生。人見知りで、うつむき加減のわたしに、夫が積極的に話しかけてくれて、親しくなり、高校を卒業する年に交際。卒業後、それぞれ違う大学に進学し、就職を期に結婚したのだが、結婚への道のりは大変、厳しかった。

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