第26話 冥府デート
さて。どこに誘うか。
水族館や動物園、遊園地に映画館、それに……。
「分かった。凪紗さん。キミとのデートはここだ」
「なによ。もう決まったの?」
「ああ。行こう」
歩きながら僕は露店を巡る。
串焼きやリンゴ飴などを頬張りながら、目的地に向かう。
「ここって……」
「そう。プールだよ。凪紗さんの水着がみたい」
「この、変態!?」
いいじゃないか。水着を見たくても。
「健全な男子高校生ならそんなもんだ」
「う、嘘でしょ。アタシの男子高校生像が」
初心にもほどがある。
「まあ、楽しもうよ」
「うぅ~。分かったわよ」
凪紗さんは女子更衣室に入ると、僕は男子更衣室に入る。
ここでは水着のレンタルがある。
派手なのや露出が多いのはないが、それなりにいろんなものを取り置いているらしい。
あくまでも店員さんの意見だが。
僕が着替え終わると、出口辺りで待つ。
着替えは女性の方が時間がかかるからな。
「ま、待った……?」
しばらくして凪紗さんが呼びかけてくる。
その恥じらう姿は可愛らしい。
薄緑色のビキニ姿。
彼女の幼い体系をごまかせるようになっているらしい。
「うん。よく似合っているよ」
「あ、ありがと……」
これでも肝が据わっている方だ。凪紗さんとのデートを楽しませてやる。
プールで軽く泳ぐ僕と凪紗さん。
ウォータースライダーや飛び込み台。
流れるプール。
様々なプールで遊んでいると、僕は切り出す。
「そろそろプールも終わりかな?」
「ええ。もう?」
「ああ。次に行こう」
「もう。仕方ないわね」
声音が明るくなっている。
もうちょっとかな。
近くにあるゲーセンでも行くか。
僕は凪紗さんを連れてゲーセンに行く。
「ここって不良とか、悪い人がいるんじゃ……」
「ずいぶん昔のイメージだね。ここはみんなが遊べる場所だよ」
でもお金がかかるんだよな。
「じゃあ、遊ぼうか? 何がしたい?」
「うーん。あれ!」
凪紗さんが年相応の顔で指さす。
その先にあったのはクレーンゲーム。
「お。いいよ。どれが欲しい?」
「そこのパンダイルカがめっちゃ可愛いねん」
関西の人?
「ま、とってみるさ」
僕はコインを並べ、クレーンを動かしていく。
そのクレーンがぬいぐるみを徐々に動かし、商品取り出し口に運ぶ。
「ああ。もうちょっとだったのに!」
「すぐに取れるさ。安心して」
六回目でクレーンの穴から出てくるイルカのぬいぐるみ。
確かパンダイルカと言ったか。
「はい。大事にしてね」
「うん!」
ペコリとお辞儀をする凪紗さん。
「しかし、あれだね。キミはまだ遊び足りないよね」
辺りを見渡すと、リズムゲームが目に入る。
「一緒にあれやろうか?」
「何々どういったゲーム?」
「リズムに合わせて足下のボタンを踏むタイプのゲームだね」
軽く説明すると、凪紗さんは興味津々でゲームを始める。
僕が隣の筐体でリズムを取り出す。
凪紗さんはリズムに合わせて動くのが得意らしく、ミスを一回もせずに踊り終えた。
「すごいね。何かやっていた?」
「アタシ、元々はアイドルだからね! でも酷いファンが……」
そこまで言っておいて切り上げるのか。
気になるじゃないか。
でも想像はできる。
「まあ、アタシくらいの可愛さなら、当然のことだけど!?」
裏返った声でそんなことを言われてもなー。
「まあ、可愛いのは事実だね」
「~~っ!?」
顔をまっ赤にする凪紗さん。
「じゃあ、今度はあの格闘ゲームでもしようか?」
「格闘ゲーム? どんなことをするの?」
「あー。ボタンが三つあるでしょ。それでコンボを決めていくんだ。入力したボタンによって技が決まるんだ」
「うーん。よく分からないね」
「一度やってみようか?」
僕は手加減するつもりでボールのようなキャラを選ぶ。
凪紗さんは一番コンボが決まりやすいキャラを選ばせる。
「下下右右左左」
「ええと。こう?」
画面内のキャラが動きに合わせて攻撃を開始する。
「そうそう。いい感じ」
僕のはコンボが難しい上に、威力も低い。
ハッキリ言って見た目が可愛いだけのマスコットキャラだ。
「これは、どう?」
凪紗さんがうまくなっていく。
ドンドンとコンボを決めていく凪紗さん。
僕はそれをかわし、コンボをつなげていく。
「そんな簡単にはやられないよ」
「むっ。これでどう!?」
躍起になった凪紗さんは苛立ちを露わにする。
YouWin。
画面に現れた文字に、しまったと思う。
これでは楽しむ前に終わってしまう。
「むむむ。もう一回!」
「……いいよ」
逡巡したのは彼女が意外にも負けず嫌いだったことだ。
もう一回すると、今度はコンボの出すタイミングやかわすタイミングが微妙に調整されていた。
まあ、勝つけどね。
今度は一撃もいれさせずに、攻撃を加える。
「むむむ! これじゃあ!」
YouWin。
無情にも凪紗さんは負けたのだ。
勝ち誇る僕にギリギリと歯ぎしりをする凪紗さん。
相当な負けず嫌いらしい。
「もう一回!!」
「分かった。分かったから」
僕の首を絞めて、要求してくる凪紗さん。
リアル格闘ゲームはやめてくれ。
「ようやく解放された……」
「さあ。やる!」
凪紗さんの声にビクビクしながら格闘ゲームをやる。
暴力的な女の子って怖い。
今度は手加減しよ。
「あ。今手加減したでしょ? ごまかされないんだから!」
これもダメかー。
しばらく格闘ゲームをしていると、ギャラリーが集まってくる。
「うわ。あの少年、えげつね」
「まさかクルッピーのコンボでかわすとはな」
「あれだろ。無敵時間を利用したかわし方。えげつないぜ」
ギャラリーの声音で凪紗さんがバンと筐体を叩く。
「もういい! 次行くよ!」
「あー。はい」
僕は少しビクビクしながら立ち上がる。
次は何をして遊ぶか。
ゲーセンにはたくさんのゲームがある。
「もう。すっきりしたい気分ね」
「それならこのシューティングゲームなんてどう?」
これなら協力プレイ――二人で一緒に目標に向かって戦える。
「いいよ。やろう」
「この銃で画面に出るゾンビを倒していくんだ」
「なるほどね。今度は味方?」
「味方だよ」
にこりと微笑むと凪紗さんは少し不満そうに頷く。
画面に出てくるゾンビに向かって銃を向ける。
ターゲットスコープが出てきて、トリガーを引く。
発射された弾丸はゾンビの頭を撃ち抜く。
「おお。やるじゃん。じゃあ、遠慮なく!」
僕もトリガーを引き絞り、ゾンビを蹴散らしていく。
「いいね。これはスカッとする」
にこりを笑みを浮かべる凪紗さん。
まさかここに来て凪紗さんが本気になるとは。
「うりゃうりゃうりゃ!」
凪紗さんは声を荒げ、ゾンビを撃ち抜く。
「はは。やるね。僕も負けられないね」
ゾンビを撃ち倒すと、右端から順番にヘッドショット――頭を撃ち抜いていく。
ゾンビがやられて行くほどに、どんどんゾンビが増えていく。
お陰で画面がゾンビだらけだ。
そろそろゾンビを100キル――100体倒している。
確かこのゲームは指数関数的に難易度が上がっていくはずだ。
100キルを達成すると、一発では倒せないゾンビが現れてくる。
「なるほど。二発は必要になってくるんだね」
「それだと、こっちの間がもたないわね」
冷静に分析し、二人で一体のゾンビを狙うことにした。
「右、次左。右右左。下」
ゾンビの現れる瞬間を口に出して、二人で狙う。
200体のゾンビを倒すと、さすがにこちらも攻撃を受けるようになる。
3回の攻撃にあい、僕は倒れてしまう。
「あとは頼む」
「え、ええ――っ!」
と、すぐに凪紗さんも倒れてしまう。
どうやら弱気になってしまったらしい。
それで敗北した、と。
僕の存在が大きかったようだ。
これで凪紗さんのことを味方に出来た、はず……。
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