ケース2:ねこしっぽオプション
『拡張機能:ねこしっぽが搭載されました。最適化成功』
『任務:猫と仲良くなるシリーズが追加されました』
『私』の胸部端末画面にそうしたメッセージが浮かび、各種設定画面が閉じていく。
『私』の利用者は、おそらく猫を飼っている。
そして、『私』は起動した。
『任務設定:床清掃・猫と仲良くなる・猫の世話をする・猫のトイレの掃除をする』
『即時起動』
動き始めると、位置情報認証首輪をつけた小柄な動体が、急速に遠ざかっていった。
『猫』の現在地は、部屋の隅の棚の裏、アームユニットの侵入範囲外と推定。
『猫』対象名『おはぎさん』と特定。
『私』は音声出力スピーカーを有効化。
「おはぎさん、私と、遊びましょう」
音響データ反応:警戒。動画情報解析は、背中の毛を逆立てている状態。
生体認証『利用者』はこれに笑っていました。そして『おはぎさん』を抱き上げて、『私』のメインモニターの前にもってきました。
「はじめまして」
アームの一本に換装されたねこじゃらしを振って見せるも、『おはぎさん』は『利用者』の懐に潜るばかり。
『私』は他の任務である『床清掃』を開始しました。
床の隅は猫の毛が多く抜け落ちていて、敷物には猫の吐瀉物の痕のシミがありました。これをスチーム洗浄機能と吸引で清掃し、床の清掃を完遂。
引き続き『猫のトイレの掃除』を遂行。
猫砂の中の固形物を撤去し、新しい猫砂の再充填を実行。
それを終えた頃、『おはぎさん』は私の存在を脅威と感じない程度の距離まで接近していました。
『おはぎさん』は接続された『ねこしっぽ』に興味を持ち、私はそれで電池残量が20%になるまで『おはぎさん』と交流しました。
最終的に『おはぎさん』は『私』のアームユニットとの接触コマンド『撫でる』を受動しました。
私は残りバッテリー5%になるまで『おはぎさん』のブラッシングを行い、その後、充電ホルダーユニットに戻り、充電を開始しました。
『任務』の完遂率は90%を越えました。なお、『仲良くなる』の達成率は測定に失敗しました。
補足:次回起動時、『おはぎさん』は私の充電ホルダーユニット基部に体を寄せ『睡眠』状態にありました。
充電ホルダーユニット基部は大容量の充電時熱を持つ性質があります。
『おはぎさん』が火傷を負うほどの高温を発する動作不良の徴候は確認されませんでした。また、同種動作不良について長期的には注意が必要と推定。
『使用者』に『使用上の注意23B<電源の高温化について>を閲覧』することを推奨するメッセージを送信しました。
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