第15話 五重① ~妖狐~
間接照明の入った部屋だ。茶色の絨毯に白い壁紙。中央に大きなベッドがあるところは三階のメスガキの部屋を思い起こさせるが、ベッドは普通のダブルベッドだ。両開きの窓が印象的なごく普通のホテルの一室といえる。
入ってきた扉が、閉じられた。閉じたのは、もちろん……。
「……やはり五人目は君だったか、キキョウ」
「あら、お気づきでいらっしゃいましたか」
「なんとなく、そんな気はしていた。君の立ち振舞は他の誰よりも高貴で洗礼されていた。何よりも、君は、隠しきれないエッチ大好きな空気をまとっている」
白いカットシャツにタイトなミニスカート、薄っすらと赤く染まったロングの髪。美しい顔と整ったプロポーション。
アヤカシ屋に足を踏み入れ、受付で出会ったときと何一つ変わらないはずが、今の彼女からはうなじの毛がチリチリと逆立つほどの妖気を感じる。彼女はチン之助のすぐ目の前に立った。
「改めて挨拶いたしましょう。私が死亡お遊戯五重の番人にしてアヤカシ屋の主、妖狐のキキョウでございます」
「人間の、チン之助だ」
「ええ存じておりますよ。初重からずっと、見てきましたから」
言いながらキキョウは、チン之助のスラックスのジッパーを下ろす。細い指がトランクスの中に分け入り、チン之助のペニスを取り出した。力なく垂れ下がったのペニスは、白くひんやりした指のなかで徐々に熱を持ち始める。
「ふふ、熱いですね」
彼女はそう言うと両足を揃えてひざまずき、ペニスにキスをした。澄ました顔の美人にそんなことをされて立たない男はいない。
チン之助のペニスは即座に固く大きくなった。あまりに早くそうなったものだから、逃げ遅れたキキョウの頬が肉棒にぶたれた。
「おっとすまない」
「構いませんよ」
キキョウは優しくイチモツの根本をつかんだ。
「暴れん坊なのね」
形の良い唇を亀頭にあてがうと、チラチラと舌でなめながら滑るようにペニス全体をリップしていく。彼女の色白な小顔と並ぶと、カリが大きく張り血管が浮いた、太く長いペニスのグロテスクさが強調される。
甘い刺激がチン之助を支配している。もっと強い快感が欲しい、このもどかしさをもっと味わいたい。二つの相反する思考がチン之助の脳をスパークさせた。
「うう、しゃ、しゃぶってくれ」
絞り出すような声で彼は言った。
キキョウはくすりと笑うと、手を離し、口を大きく開けてチン之助のペニスを咥えこんだ。
温かい口の中で舌がねっとりと亀頭に絡まる。味わうかのようにそのまま舌を動かしていたが、彼女の目がいたずらっぽく光ると、人一倍大きい肉棒を喉の奥まで挿入した。彼女の小さな顔がスラックスのジッパーに近づき、離れた。唇のギリギリまでペニスを引き出すと、また喉の奥まで咥える。口の中ではキキョウの舌がすぼめられてペニスを撫で続けている。
「ああ……」
気持ちよさに自然とチン之助が声を漏らす。
まだ二人は服を着たままだ。キリリとした秘書風の格好のキキョウが、ひざまずいて自分に奉仕している。その倒錯感がチン之助の射精を早めた。
「もう……出る!」
余裕のないチン之助の声とともに、キキョウの口の中に白濁液が放たれる。
存分に射精をさせてから、彼女はペニスから口を離した。精液が細い糸になってキキョウの唇とイチモツをつないでいる。
彼女はその糸を指で拭うと、なめた。
「ん……んンッ」
美しい眉をひそめて、キキョウが咳払いのように喉を鳴らす。どうやら飲み込もうとした精液が喉に絡まったようだ。青臭いザーメンをようやく飲み込んだあと、口を開けて中を見せた。
「ふふ、飲んじゃった。まだまだ濃いですね」
この時チン之助の胸に去来した気持ちをなんと表そう。彼女への愛おしさや、女が自分に奉仕する喜びを感じるとともに、同量の恐ろしさをも感じていた。キキョウはセックス技工者だ。それもおそらくチン之助と同レベルの。自分はこれまで何度射精した六度、これで七度か? 残された射精回数は、あまりにも少ない。
何より、主導権を握られた上でこのペースはまずい。あっという間に搾り取られてしまい、敗北。神隠しだ。そう、これは死亡お遊戯。守勢に回っていては、勝つことは不可能。
「よかったら、少し話をしないか」
彼はそう言いながらキキョウをベッドに座らせると、背後に周り右手をシャツの中に滑り込ませる。甘い女の匂いが彼の脳の奥を熱くさせる。
「あら、お話ですか? それともエッチ?」
「エッチしながらの話で、頼む」
「分かりました。ぁン」
キキョウのシャツをまくりあげたチン之助が、黒いブラを外して乳首を優しくつまむ。
「ちょうど、私も聞きたいことがあったので。……チン之助様は今のお仕事の他に、やってみたいお仕事って何かございますか?」
想定外のことを聞かれても、チン之助の手は愛撫を止めない。流れで軽くキスをして舌を絡めたあとに、彼は聞き返した。
「仕事?」
もとより彼はなにか希望があって今の仕事をしているわけではない。生きていくために今の仕事に就き、情熱なく仕事をしている。身体に溜まる熱はすべて女達に向けて使ってきた。
「そうだな……子供の頃は、警察官になりたかった。悪いやつを捕まえて世の中を良くし、弱い人の力になりたいと思っていたんだ」
でも彼は警察官にはならなかった。当時のセフレの一人が現役警察官で、彼女によると愛人が多すぎる人間は警察になれないかもしれないと言われたからだ。それに、その時には当初抱いたほど、自身の将来への興味や熱量はなくなっていた。当時の彼の関心は、いかに女をベッドに誘うか、どうやって気持ちよくするかに向けられていた。それは今もほとんど変わっていない。
彼はキキョウをベッドの上で四つん這いにさせると、しばしストッキング越しの黒いパンティを堪能し、ゆっくりとストッキングを脱がせた。
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