第16話 五重② ~妖狐~

 引き締まった太ももと、パンティに隠れきれていない白いお尻があらわになる。

 この瞬間はいつもたまらないな。チン之助はそう思いながらパンティの隙間に指を這わせた。

 クチュリ。

 いやらしい水音が部屋に響く。

「んン……」

 控えめに外気にさらされたサーモンピンクの膣口をかき混ぜ、その手触りを楽しんだあとに彼女の腟内(なか)に指を入れる。一本、二本。

「んうン、ふっ、ふっ」

 手と膝をベッドについた姿勢のキキョウが、抑えきれない喘ぎ声を漏らした。

 いきなり手を大げさに動かしたりはしない。ゆっくりと指を奥へ進め、第二関節まで埋まったら引き出す。そしてもう一度中へ。今度は指先にほんの少し力を込めて膣壁をなぞるように。

「ん、ぁんン! はぁはぁ……。ふふ。お上手ですね」

 はらりと前髪のかかった顔をチン之助に向けてキキョウが言った。彼女の美し顔を見ているうちに、ぐったりとへたばったチン之助のチン之助も少し力を回復してきた。もう少しすればあと一回はできそうだ。そこが勝負の分かれ目になるだろう。

 チン之助の長い指をきゅうきゅうと膣が締め付ける。指の挿入に伴って膣口からは愛液がとろとろと湧き出、発情した女のにおいが男の鼻を捉える。

 チン之助は指を引き抜くとぺろりと舐めた。

 彼ほどの熟練者が本気で愛液を舐めれば、相手の体調などの生体情報を取得することが可能だ。

 脳内にデータが表示される。


 名前:キキョウ

 種族:妖狐

 性別:女性

 年齢:***歳

 身長:165cm(耳を含まず)

 体重:52kg

 精力:23,000 ~ 45,000

 特筆事項:直近の三十年では一度も……


 種族妖狐!? それになんという精力。いや、それよりも衝撃的なことが特記事項に書かれていた。

 『直近の三十年では一度もイカされたことがない』

「なんてことだ。君は……」

 チン之助が絶句する。彼が気付いたことに、キキョウも気付いた。彼女は男に向かって座り直すと、妖艶な笑みを浮かべた。

「あら乙女の秘密を盗み見るなんて悪い方ですね。……ええ、私は妖狐。人ならざる身として長くの生を生きており、多くの傑物、逸材と褥をともにすることもありました。しかれども、ここ数十年にわたり私を満足させうる人間はおらず、身の疼きを抱えておりますわ」

 両足をMの字に立て、チン之助を挑発する。どうせお前も惨めに負けるのだろう、と。

 そのキキョウの細身の体が、強い力で抱きしめられた。彼女の背に手を回し、頬に頬を合わせ、チン之助はさめざめと涙を流す。

「人間が、不甲斐なくてすまない」

「え、ちょっと」

「君のような美しい女性を満足させられなくてすまない。すべての女には、セックスで幸せになる権利があるのに、男たちが力及ばなくてすまない」

「あ、あの」

「君ほどの性豪が、満ち足りぬセックスを繰り返すなど、世界が間違っている。俺が必ず、君をイカせてみせる。君を幸せにする。必ずだ!」

 突然のことにあたふたしていたキキョウは、愛の告白とも取れるまごころのこもった言葉に微笑した。相手の首に手を回し、心のこもったキスをする。

「……はい」

 その潤んだ瞳は、あるいは涙が浮かんでいたのかもしれない。だが、瞬きのうちに目はもとに戻り、次の瞬きでいつか見た縦の瞳孔になった。

「ですが私は死亡お遊戯最後の番人。あなたのその言葉がベッドの戯言にならぬよう、どうぞ死力を尽くして挑んで下さい」

「言うまでもなく」

 チン之助の言葉にキキョウは再度微笑し、瞳孔は元に戻った。

 かくして二人は正常位で相対した。チン之助はスーツとスラックスを脱ぎ去り、ワイシャツの袖をまくり上げた姿。キキョウはブラを取り去りカットシャツは胸まで上げられ、ミニスカートも腰までずりあげられている。

 精巧な刺繍がほどこされた黒いパンティーをチン之助が脱がす。

 男の自慢のイチモツは気力十分。とろりとした蜜を流し、ひくひくと充血するヴァギナにあてがい、ゆっくりと挿入していった。

 膣が異物を認識し、ひくひくと壁を動かし締め付ける。

「あ……」

 キキョウが声を漏らす。

 二人はしばし抱き合っていたが、どちらからともなく腰を使い始めた。

「ァン、うン、ンん、はっ、はっ、はっ」

「フッ、フッ、フッ」

 肉のぶつかる音、淫水がかき混ぜられる音、そして二人の湿っぽい息遣いが部屋に響く。

 入り口をかき混ぜるように何度もつく。次は奥を。ストロークのリズムを変えてキキョウの弱い部分を探ろうとしていく。

 しかし相手もさるモノ。自分のために必死になる男に愛おしさを覚えているようだが、同時にその顔には余裕の色が見える。

 平常心、平常心だチン之助。男は自分に言い聞かせた。

 彼女の膣のうねりが、美しい曲線を描く白い腹が、その上の弾むように動く乳房とピンク色の乳首が、汗と快感に乱れつつある美しい顔が、艶のある長い髪が、その上ずった声が、キキョウのすべてが射精感を高める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る