17話 レオンハルトvs ヴェルデバラン(2)

  迫り来る真っ赤に燃え上がった炎を前にして、おれは色々と思考を巡らせていく。


  レオンハルトの実力はもう十分わかった。

  そして、おれの防御魔法が通用することもだ。


  先ほどは防御魔法が破壊されてしまったが、あの魔法はおれの最強の防御魔法ではない。

  あの程度の魔法でヴァンパイアの攻撃を遮断できるということはわかった。


  だとすれば、今この攻撃をわざわざ防御魔法で受ける必要はないな。

  今度は新しいことをしてみるとするか……。


  おれはそんなことを画策する。

  母レイシアと初めて魔法の修行をしたとき、おれは攻撃魔法を攻撃魔法で粉砕するという手を考えた。

  今回もそれができないかと、おれは魔力感知をすることで分析を進める。


  彼が扱っている火属性魔法はおそらく火砲ファイヤーキャノンだ。

  レイシアは火属性魔法の適性がないため、扱うことはできないが存在は教えてくれた。


  火属性の攻撃魔法の中でも高火力かつ高速度の魔法であり、使い手の実力によってその火球の大きさは変わるという。

  つまり、直径10メートルを超えるサイズの火砲ファイヤーキャノンを扱っているレオンハルトは凄腕の魔法使いということになる。


  そして、そんな火砲ファイヤーキャノンを防御魔法ではなく、攻撃魔法で撃ち抜くとなればこちらもそれなりの魔法を使わねばならないだろう。

  そこで、おれは切り札とも呼べる攻撃魔法、闇弾ダークショットを発動することにする。

  闇弾ダークショットは今のおれにとって、最大級の闇属性攻撃だ。


  闇弾ダークショットは高速で闇の弾丸を相手に撃ち込む魔法だ。

  この魔法の良いところは連続射撃が可能なことであり、慣れさえすれば高火力の闇の弾丸が連続射出されて相手をズタボロにすることができるのだ。


  しかし、今回は連続で闇弾ダークショットを放つようなことはしない。

  真に魔力を込めた一撃で以ってして、レオンハルトの火砲ファイヤーキャノンを粉砕するのがおれの目的なのだ。


  もしもそれが可能ならば、いつかはその破壊力を持った闇弾ダークショットを連射できる日も来るかもしれないからな。

  おれはそんなことを期待して、珍しくワクワクとするのだった。


  そして、集中し、体内に巡る魔力を操作して制御する。

  すると、おれの両手の前には漆黒に渦巻く闇の塊が現れた。


  大きさは直径1メートルくらいだろうか。

  レオンハルトの特大魔法に比べればサイズは小さいが、魔力密度で見ればおれの方が何倍も高いはずだ。

 

  おれは全身全霊で闇弾ダークショットに魔力を込めるのだった。



  「ハァァァァーーーーーーッッア!!!!」



  その闇の弾丸でレオンハルトの火砲ファイヤーキャノンによく狙いを定めると、タイミングを見計らって解き放つ。

  そして、おれが放った闇弾ダークショットは螺旋状の回転をしながら、レオンハルトの火砲ファイヤーキャノンに衝突する。



  一瞬の出来事であった——。



  ドォォォォォォォーーーーッッンン!!!!!!




  隕石が衝突したのかと思うほどの爆音と爆風が響き渡り、辺りに砂埃が巻き上がる。

 おれの目論見通り、レオンハルトの特大魔法を見事粉砕したのだった。


  おれは爆風から身を護るために展開した闇の壁ダークウォールを解除する。

  そして、状況から今のおれ自身の実力を分析するのだった。


  ふむ、悪くないな。

  攻撃魔法も防御魔法も怪物モンスターたちに通用した。

  ヴァンパイア相手にこれだけ戦えるのであれば、他もそれほど恐れることはないだろう。


  危険なこの世界を十分に渡っていけるはずだ。

  おれはそう強く確信するのだった。

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