9話 魔法習得(2)
ドォォォォォォォーーーーッッン!!!!
おれとレイシアの放った魔法同士がぶつかり、大きな音と衝撃波が発生した。
身の危険を感じたおれは瞬時に防御魔法を展開する。
おれは闇の霧を発生させてその身を護り、辺りが静まるのを待つことにするのだった——。
そして、落ち着いたのを確認すると闇の霧を解除してレイシアと対峙することになる。
レイシアもまた防御魔法を展開してその身を護っていたようだった。
「よく対処しましたね」
「まあな。それでおれの防御魔法とやらは合格か?」
レイシアはおれに賞賛の声をかける。
そんな彼女に覚えたての魔法の合否を尋ねるのだった。
「はい、もちろんです。母の期待以上でした。それに防御魔法だけでなく、攻撃魔法もね」
レイシアはくすりと笑みをこぼす。
そうか、やはり攻撃魔法のこともお見通しか……。
「母さんにはおれの行動もバレバレだったみたいだな」
彼女はおれと同様に防御魔法を展開していた。
これは衝撃波から身を護るというよりも、攻撃魔法から身を護るという意味合いが強いだろう。
その証拠にレイシアは先ほどのおれと同様に分厚い壁の防御魔法を展開していた。
つまり、おれが攻撃魔法を持ってして攻撃魔法を粉砕しようとしていたことがバレていたのだ。
魔力感知によって、レイシアの十発の連続攻撃を防御魔法で防げないと理解したおれは
つまり、分析した彼女の魔法を一瞬で再現しておれも闇の炎を扱ったということだ。
しかし、これには不安要素もあった。
それは火力調整だ。
弱すぎれば攻撃魔法が相殺できずにおれに直撃するし、強すぎれば逆におれの攻撃魔法がレイシアに襲いかかることになる。
だからこそ、あの一瞬で魔力を制御、調整、操作するという至難の業が求められた。
結果的に成功したものの、一歩間違えれば危険だった。
レイシアはここまでおれの行動を読んだ上で保険の防御魔法を展開していたのだろう。
まったく、これには参ったぜ。
すると、彼女は自慢気におれに告げるのだった。
「何年あなたの母をやっていると思っているのですか。賢く優秀なあなたなら必ずそうすると信じていましたよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。それで、今日はもう終わりかい?」
十分すぎる訓練だったと思う。
攻撃魔法と防御魔法をマスターしたのだ。
おれはもう終わったつもりで地上に帰るつもりで問いかけた。
だが——。
「何を言っているのですか。まだ始まったばかりではないですか。他にも魔法を見せますの覚えてくださいね」
スパルタ教官のレイシアはまだおれを帰してはくれないのだった——。
◇◇◇
そして、それから数時間が経ち遂にレイシアが折れる。
彼女は息を切らしながらおれに言葉をかけるのであった。
「ハァ……どうやら私の方が先に限界が来てしまったようです。もう魔力切れで今日はできません……」
ヘトヘトになって地面に座り込むレイシア。
そんなレイシアに対し、おれは疑問を示すのであった。
「何を言っているんだ? 魔力が切れたならば、大気中にある魔力を取り込めばよいではないか」
確かに、魔法を使うには体内の魔力を消費する。
だが、魔力など大気中にありふれているのだから、さっさと体内へ取り込めばよいではないか……そう考えていた。
しかし——。
「あなたこそ何を言っているのですか……。ハァ……それが自由にできたら、誰も苦労しませんよ……」
彼女の言葉におれは驚いてしまう。
キョトンとしているおれを見てレイシアの表情が固まっていく。
「もしかして、あなたはこの大気中にある魔力を好きなだけ取り込むことができるのですか……?」
「当たり前だろう。そうでなくては体内の魔力がなくなってしまうではないか」
もしかして、おれが何気なくやっている大気中の魔力を補給することも特別なものだというのか……?
「そう……なのね……。わかりました」
「おう。わかってくれたのか」
どうやらレイシアも魔力の取り込み方を理解してくれたらしい。
それでこそ……。
「いいえ! あなたが私の手には負えない逸材だということがですよ!」
はい……?
「よーくわかりました。あなたには常識が通じないということがです!」
「あなたには魔法を教える前にまずこの世界の常識を教えないとみたいですね!」
珍しく大声を出すレイシア。
しかし、その姿はとても生き生きとしており、おれを鍛え上げることに喜びを感じているようだった。
まあ、こんなレイシアの姿なんて中々見れるものじゃない。
ふっ……彼女の企みにまた付き合ってやるとするか。
こうして、おれたちは一度魔法の訓練を切り上げて地上の家に戻るのであった——。
【本日の習得魔法一覧】
《攻撃魔法》
《防御魔法》
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