第12話
正直なところ俺は人を殺すのが苦手だ。俺が狂信者を殺せるのは単に復讐の炎が燃えているからに他ならない。
ゆえに復讐心を掻き立てないような信者は殺さないし、殺そうと思っても殺せないだろう。
俺は根本的な部分で小心者なのだ。
そのせいで俺は聖女の扱いに困っていた。ついこの間にこの街に派遣されていた聖女は毎日朝昼晩に女神に祈祷を捧げている。
本当は覗きたくもないが、聖女となればそういうわけにもいくまい。もしかしたら教会内のとびっきりの情報を持っているのかもしれないのだから。
「くっそぉぉおおお、なんだよあの聖女はー」
朝食を終えた俺は屋敷の庭で声を抑えながら叫んだ。いい加減にストレスがたまるというもの。
「どうかなさいました?」
「何もないよ」
「一秒でバレる嘘はつかないでください。それで何かあったんですか?」
しばし思考して答える。
「人の好意ってどうすれば消せるのかなーって」
女性のことは女性に聞くのがてっとり早いだろう。俺はナイスアイデアとばかりに尋ねた。
しかし、俺の気分とは裏腹にスイネは顔を曇らせる。
「……そんなに私は煩わしかったでしょうか?」
……………………チーン。
「いやいや、誤解誤解だって!! 俺の言い方が悪かった! 謝る謝るから、な、泣かないでよ」
目頭を熱くするスイネを前に俺は考え得る限りの慰め法を試し、何とか誤解を解いた。
「結局どうすれば良いと思う?」
「一人の女性として言わせてもらうとなると、やっぱり一度は向き合ったほうが良いと思います。レストさんが好意だと感じたのなら真摯に対応してあげてください」
スイネは俺とは違って人ができてるな。そりゃそうか。俺みたいに復讐なんかしそうにないし。
「ありがとう。おかげで方針が決まった。イケメンを大量に送ったりして好意を逸らそうと頑張ってたけどやめることにするよ」
信託を使って街中のイケメンを聖女にアタックさせたけど全員が轟沈したんだ。全員自信なくしてたし、正直悪いことをしたと反省している。
聖女の方は当面は放置ってことにしようか。
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