第11話
女神を喰らい、ドラゴンを叩き潰してから大体10日ぐらい経った。その間俺はと言うと、
「あー、まだ寝てるんですか? もう陽は昇ってるんですよ」
スイネの屋敷で世話になっている。
「もう起きてるからそんなに騒がないでくれ。頭が痛くなる」
ふかふかのベッドから降りて軽く頭を回す。
「それなら早く言ってくれればいいんです。ずっと部屋に籠っていたので使用人も困ってましたよ」
それは悪いことをしたな。でも、だからと言って殿方の寝室に無断で入ってくるのはどうかと思うぞ。
「とりあえず着替えるから外に出てってくれ。話はその後で良いだろ」
「は! ……すみません!!」
顔を真っ赤にして慌てふためきながら扉を勢いよく閉めた。
全く、朝から騒がしい。……ほんと騒がしいな。
何気もなく俺は笑ってしまった。
「それよりも面倒なことになったな」
俺は今問題を抱えている。ああ、別にスイネが面倒とかそういうわけではない。
寧ろスイネは俺のために両親を説得して俺を屋敷に住まわせてくれているし感謝はすれども、脚を向けて寝られないぐらいだ。
――天覗
「さて、今日は改善してるかなぁ」
女神を喰らったことで俺は女神に捧げられるすべてを得ることができる。それは物体だけに限らない。非物質であっても俺は信者から貰えるわけだ。
それを応用して俺は信者が祈祷しているときにその人の心の内を覗けるようになった。
だが、それが裏目に出てしまった。
「はぁ、今日は少しぐらい改善されてるといいなぁ」
淡い期待をもって信者の心を覗く。
教会内で真っ白な服を着た可愛らしい少女の考えていることを覗いた。
『女神様、私はあの時の殿方にいつお会いできるのでしょうか。もうかれこれ10日も待ち焦がれておりますのに一向に殿方とお会いできません。私の信仰心が足りないのでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。私は信者からは聖女と呼ばれ、女神さまの寵愛を最も頂いていると自負しておりますもの。ああ、ですがですが、最近の私はおかしくなっています。女神様の寵愛を最も頂いているというのに私はそれすらも不要だと思ってしまいます。今の私には女神さまの寵愛よりもあの殿方の御寵愛こそを求めてやみません。ああ、どうかどうか、哀れな私を許してください。私は生まれて先日まで女神様しか愛せないと思ってやみませんでした。なのに裏切るようなことをしてしまいました。ごめんなさい。ごめんなさい。でも私はもうあの殿方なしでは生きていけないのです。毎朝毎晩あの殿方を思い出すだけで胸が締め付けられ全身が火照って仕方がないのです。どうかどうか、片思いしかできない哀れな私を導いてください』
はぁぁあぁぁ……………。
俺はこんなことをかれこれ10日も続けている聖女に大きなため息をついた。
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