第10話


 ドラゴンに対面する。俺一人対ドラゴン一体だ。普通は勝てないけど俺は普通じゃない。つまり勝てる。


 ――聖球!


 唱えると俺の周囲に大量の弾が発生した。


「喰らえ!!」


 それを合図に飛んでいく。聖球はドラゴンにぶつかりドラゴンは悲鳴を上げた。


 ――グヴェエエエエエ!!


「余裕で勝てそうだな」


 ドラゴンの翼に穴が開いた。それによって飛ぶことができなくなったドラゴンが地に落ちてくる。


 もう勝ちは確定だろう。


 俺は更に多くの聖球を生み出した。


 だが、


「人がいる!!」


 ドラゴンが落ちる地点に都合悪く人がいた。


「白い服を着てるけど……、分からないし救うか」


 俺は無差別に人を殺したいわけじゃない。俺が殺したいのは腐れた狂信者だけ。


「間に合うか……ッッ!」


 速度を思いっ切り上げる。


「間に合った!!」


 ギリギリのところで運の悪い可哀そうな人に届いた。頭上にはドラゴンが落ちてきていて本当にギリギリのところだった。


「え!!」


 俺がお姫様だっこのように持ち上げるとその人、少女が驚いたように声を漏らす。


 あ、可愛い。


 などと言っている場合ではない。


「うをりゃぁぁああああ!!」


 髪がチリッと擦れる。より一層地面を強く蹴った。


「はぁ、助かった」


 背後からドラゴンが地に落ちた音が響く。


「っていうか聖術で守ればこんなに疲れることなかったのにな。女神の力を奪っても頭は馬鹿なままかよ」


 っと、そんなことを言ってる時間はないな。


「びっくりしたと思うけど、もうちょっとだけ続くから我慢してくれ」


 ドラゴンはまだ生きている。白服の少女に言うと俺は落ちたドラゴンに手を向けた。


 ――聖槍


 空中に輝く槍が何百本も現れる。


「いけ」


 槍たちは指示があったと同時にドラゴンに降り注いだ。


 ――ドドドドドドドド!!!!


 ドラゴンが断末魔の叫びをあげる。聖職者と俺の攻撃でもともと弱っていたところに大火力を受けて耐えられなかったようだ。


「わりと早かったな」


 ドラゴンは絶命していた。ピクリとも動かない。


 神の力をもってすればドラゴンなど敵ではないらしい。


 ただ新たな問題が生まれた。


「あの……、貴方、貴方様は?」


 少女が小首を傾げて尋ねてくる。


 今俺は顔を見られるとは思っていなかったために何の変装もしていない。その上で俺は神の力を行使してドラゴンを倒したのだ。


 ……やばくね?


「えーーっと、」


 何を言えばいいのか。いっそ何も言わないのもありか?


 ――検討中。――検討中。


 よし、


「無事みたいで安心したよ。じゃあね」


 逃げるが勝ちだ。俺は全力をもって逃亡した。

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