第13話
「ついこの前教会のほとんどの聖職者が亡くなりましたよね? なのにもう補充が入ったらしいです」
何やら教会の動きがおかしい。スイネに言われ俺は調査を始めた。
まず最初に信者たちの祈祷を覗いた。
「祈祷中は思考を覗けるとか女神の力、反則過ぎだろ。これなら何を企んでるか一瞬でわかるぞ」
などと調子こいて十数分。
「あれぇ、誰も変なこと考えてないっぽいな。スイネの思い過ごしか? でもそれにしては動きが不自然なんだよな」
最近教会の動向を探っているが意図が不明なことが多かった。
女神の力を使っても分からないことはある。屋敷に籠って調査するのも限界かなと俺は街に出ることにした。
「ついていきます!!」
「危険だからだめ!」
俺が屋敷を出ようとしているとスイネが進行の邪魔をしてきた。
「危険なことするんですか?」
「……教会に行くだけだから危険なんてイッサイナイヨ」
「やっぱりあるのですね。なら私もついていきます」
引く気はないらしい。どうしようもないので連れていくことにした。
こっそりと女神の加護を大量に与えたので取り敢えずの危険は防げるだろう。
教会に行くまでに一応街中で聞き耳を立ててみたが真新しい情報は手に入れられなかった。
強いて言えば最近教会に配属された聖職者は皆に微塵も好かれていないということだろうか。
なにやら前任がドラゴン退治で犠牲になったため仕事が忙しいらしい。だが、それにしては愛想がないとか。
ちなみに、ドラゴンを退治したのは謎の聖騎士と言われている。唯一の証人が聖女だったからそうなってしまった。
「姿を隠す聖術で侵入するかな」
「そんな便利な力があるんですか?」
「聖術って想像よりもやばいものばっかりなんだよ。拷問用の聖術を見つけたときは冷や汗をかいた」
聖なる術の名に恥じる力には随分と驚かされたものだ。
「それじゃ俺は中を探ってくるからスイネはここで待機してて」
「わかりました。退路は私に任せてください」
「……やけに素直だけどどうかした?」
尋ねるとスイネはむすっと頬を膨らませた。
「レストさんは私を何だと思ってるんですか。私にだって潜入は少ないほうが良いって知ってます」
「ああ、ごめん。行ってくるよ。陽が沈んでも戻ってこなかったら帰ってていいからね」
そんな冗談を言って俺は聖術で姿を消した。
「おお、自分でも自分の身体が見えないのか。……不便だな。まあ何とかなるか」
五感が研ぎ澄まされている今ならどうにかなるだろう。
俺は堂々と正面から教会内に入っていった。
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