第16話 天廻

 あぁ。思い出した。


 私たちはもうじき死ぬ。


 くそっ、記憶が戻るのが遅すぎた……


 もっと早くから動けていたら……



 

 ──あれ?このまま行くと、ひょっとして、私はまた再び輪廻するのか??


 一周目、私は確かにこの地で死んだ。そして……



 「私は────」

 同時に、光り輝く天の裁きが降り、辺りの人間は一人残らず消滅していった。



 「……んんっ……」


 恐る恐る目を開ける。

 そこは、想像通り少し前までいた戦場ではなかった。

 だが、想像していた方のでもなかった。


 体を包むフカフカな感触。所々絢爛な模様の見える天井。ほんのり差し込む月の光。

 おそらくここは寝室だ。そして、夜……ということは……


 最初は一瞬何がどうなっているのか分からなかった。しかし、自分の体をあちこち触ってみて、確信した。


 騎士ヴァン。かつて征伐戦で名を馳せた英雄の一人。だが────


 

 窓から何者かが侵入してきた。


 くそっ、分かっていたのに、今回は反応が遅れてしまった。


 侵入者は一瞬で距離を詰め、私の喉元に向け一閃。


 「????」

 確か、以前私が殺されたのは外のはず……

 分からなかった。記憶が違う??事実が変わった??

 あーでもどのみちこれもう無理なやつだ。

 

 目を瞑り、死を受け入れる。



 だが、しばらくしても痛みが何も襲って来なかった。恐る恐る目を開けると、剣が寸前で止められていた。


 「……貴方は本当に、騎士ヴァンなの?」

 侵入者は不意にそう問いかけてきた。

 

 部屋が暗いため相手の顔や表情はよく分からなかったが、やはりその口調は、どこか聞いたことのあるような声だった。


 「貴女は……一体誰なの??」

 私は恐る恐る侵入者に聞いてみた。


 「……分からないの。何も思い出せない。私が誰で、何のためにこんなことをしているかさえも。」


 ──かつての私のようにもしかしたらこの人物も、似たような境遇を辿らざるを得ない状況なのかもしれない。そう思った瞬間────


 「……ごめんなさい。やっぱりが許さないみたい」


 止まっていた剣が動いた──そう思った瞬間、激痛と共に私の意識は遠のいていくのだった。



 

 私の予想通りなら、おそらく次は────

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その物語はバッドエンドしか迎えないとしても 神白ジュン @kamisiroj

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