第15話 戦場
待機場所でしばらく待っていたが、中々指示が来ることはなかった。
だが確実に何やら先程から教師陣や兵隊の動きが慌ただしくなってきていた。
おそらくこの学生の中には実践経験が乏しく戦い慣れていない生徒もいるのであろう、次第に不安や心配な声が出始めてきていた。
「おう、流石に序列一位は落ち着いてんなぁ!」
不意にガタイの良い男子生徒が話しかけてきた。はて、名前は誰だったかな……?
「私たちが仮に戦場に出たとしても、魔法部隊はどのみち後衛なのだから、そんなに身構える必要はないはずよ?」
「まぁそうだよな。けどよ、さっき先生たちが話してたのを聞いたんだが、今回はどうやら魔物の数がこれまでより段違いに多いらしいぜ?」
なるほど、今回は敵量が多いのか。にしても、そこまで慌てる程なのかと疑問に思った。
数分後、その疑問は悪い方向に晴れることとなる。
「第一陣の部隊が壊滅、その他各部隊にも被害が出ているようです。よって、貴方たち魔法科の生徒にも戦場に出てもらわなければならなくなりました。すぐ準備をしてください」
教授が普段より更に落ち着いた声でそう生徒たちに言った。その目つきは真剣なもので、冗談の類では無さそうだ。
途端、生徒の一部は恐怖で震え始めたり、不安な声を上げ始める人が増えた。
──どうせ負けて、結局はみんな死ぬのだから、今泣いたり騒いだりしても結末は変わらないのに。
唐突にそんな考えが頭に浮かんだ。
どうやら先に剣術科の生徒が出陣するようであった。魔法科と違い、男子生徒も多く実践慣れしているのか、大半の人間が自信満々な表情で戦場に赴いていった。
──あぁ、こんな自信満々な生徒の大半はあっけなく死ぬのか。
不意にそんな考えが頭をよぎった。
ついに魔法科も戦場に赴くことになった。だが、剣術科と異なり、魔法使いたちは基本的に後方支援や後衛から強力な魔法で範囲的に殲滅する役割を担う。加えて私たちは学園生徒であるため、中でも比較的に安全な場所に配置された。
──安全圏?そんなものがあるのか?だってここは戦場であることに違いないのに。
数時間後、人間軍は絶望を知ることになるのだだから………
縁起でもないことを考えてしまった。
…………縁起でもない?これが事実ではないのか??何故、私は私が死ぬこと以外に人間軍が大敗して、大人たちだけでなく生徒たちも大勢死ぬことを考えてしまっている??
…………分からない。私が頭の中で無意識に考えてしまっていることは本当に私の空想なのか?
既に戦闘は始まっている。皆それぞれ魔法の詠唱を始めている。皆必死な顔で戦っている。
魔力切れというわけでもない。なのに、頭があまりにも痛い。
この地に立ったことで、記憶の断片がいくつか戻ってこようとしているのか?きっとそうだ。それ以外には考えつかない。
側から見たら、この時私の顔はかなり苦しそうであったのかもしれない。数人の生徒がこちらに顔を向けて心配そうにしていたが、構っている余裕などなかった。
────そうだ、あれは確か、私の魔力が底をつきそうになった頃合いに……
思い出した。
私たちだけでなく、都市も。鳥籠のように囲まれ、逃げることなく、天の裁きによって跡形もなく殺されるのだ。
となれば、まだ時間はあるのでは?
私の魔力にはまだ余裕がある。時間的に、これを伝えれば被害を抑えられるのでは。
そう思った私は振り向いて絶望した。
既に都市が籠のようなもので囲まれ、光の光線が降り注ごうとしていた。
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