第11話 希望と禁術とスケベ老人

 リンはいつ崩れてもおかしくない状態の書庫に入り、一筋の希望を探していた。

 この書庫が崩れてしまえば私は一巻の終わりだ。次第に焦ってしまう気持ちをどうにか抑えつつ、探した。しかし、何も数分経っても何も見つけられずにいた。


 

 かつて交わした言葉を思い出す。

 「(エマは確か…魔力がどうのこうの言ってたわよね…)」


 立ち止まって体内の魔力を集中させ、研ぎ澄ます。魔力に関してはエマ程ではないが、普通の人よりは自信はあった。


 書庫自体はなんとか形を保っている。逆に言えば、その保持するための力が集中しているところを見つけ出せば…



 

 見つけた。

 書庫の最奥──1番右付近。


 すぐに怪しそうな本棚を片っ端から動かす。


 案の定あっさりとそれらしいものは見つかった。


 何かに反応するように、扉が出現した。


 「(こんなに簡単なところにあったのに…何で今まで気づかなかったんだろう?)」


 躊躇なくドアノブに手をかけ、開けた。何が待ち受けているのか分からない、だがそんなことは言っていられない状態であったため。恐怖も何も無かった。


 

 地下へ降っていく薄暗い道。


 少し進むと、明かりが見えてきた。



 「……こんな空間が……でも、誰もいないわね」



 

 誰もいないならと、本棚や机の上に置きっぱなしの状態の本をあちこち物色すべく、部屋の中心部分は向かったその時────



 「は?なんじゃ??なんで知らん人間が入ってきておるのじゃ!?」


 突然の声に驚いて、その場に尻込みしてしまった。


 「ん?ひょっとして攻撃やら何やらで表の結界諸々が弱まってしまっていたのか?」


 どうやら、簡単に場所が見つかったのはここを守る結界が弱まっていたためらしい。


 「ふーむ、ここの学園の生徒さんかな?まぁ悪い奴ではなさそうじゃな」


 そう言い終わるや否や目の前にボンっと煙が突然出たと思うと──そこには初老くらいの老人が杖を片手に立っていた。

 

 「ほう、お前さんのワシに対するイメージはそーいう感じなのじゃな」


 「は…はい??」


 「私は相手のイメージに合わせて体が具現化してしまう──おっと、変に難しいことは後にしようか。それよりお前さん、どうしてここが分かった?何しにここへ?どこから来た?どこ住み?歳は?彼氏は?バスt……」


 「あっ!あの!!この場所とあなたは一体なんなんですか!?」


 さまざまな質問に加えてちゃっかりセクハラに該当しそうな質問まで聞かれそうな気がしたので、思いっきり遮ってこちらから質問することにした。


 「ここはかつて存在したという禁じられた魔術を封印しておく場所。そして私はかの有名な大魔女、エリス様の一番弟子じゃ」


 「大魔法使い、エリス…その名前は知っています。弟子がいらっしゃったのですね」


 「そうじゃ、と言っても会ったことがあるのは数回だけじゃがな。──まぁここに来たということは、何かしらあるんじゃろな」


 この人物なら、何か運命を変えられる術を知っているかもしれない。そう考えたリンは、この老人に若干の不安を抱えながらも、話題を切り出すのであった。


 


 


 

 

 


 

 

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