第10話 結末
外へ出てから数十分後、ようやく依頼の場所にたどり着いた。
場所は薄気味悪い洞窟のような場所だった。
依頼書曰く、ここでは昔、よく鉱石が取れていたらしいが、強い魔物が複数住み着いてしまったらしく、討伐してほしいといった内容だった。
魔物の出現もそうだが、人里からかなり離れたこの場所には、中々人も寄り付かないらしく、足を進めるにつれ長らく放置されたような廃材や道具が多く見受けられた。
「(…まぁ、こんな薄暗くて場所も遠くて、何が出てくるか分からないようじゃ、誰も依頼を受けたりしないわよね…)」
しばらく進んだところで、魔物ではなく人の気配を感じた。
しかし、辺りをいくら見回しても人影は見当たらなかった。
「気のせいかな…?この体にもまだ慣れきっていないことだし…」
頭の中を一抹の不安がよぎった。
ひょっとすると私は今危険な状態に置かれているのかもしれないと。
だが、危険を感じるには遅すぎた。
次の瞬間、何処から現れたのかも分からない程の人間が、一斉に飛び出し、襲いかかってきた。
ざっと2.30人くらいだろうか。この数の人間が気配をほぼ完璧に消して身を隠していた。その事実だけでも恐ろしかったが、加えて一人一人の攻撃技術や速度も並外れたものではなかった。
防御魔法を駆使してどうにか回避できてはいた。しかし、武器を持った複数人がかりの攻撃が立て続けに来るこの状況は、もはや絶望にも近かった。
なにしろ、多勢に無勢である。
「がはっ!!」
遂に大きめの一撃を受けてしまう。
どうにか体制を上手く立て直し、追撃を受けることは避けられた。
ふとここで一つのことに気がついた。人間たちの目に、いや、存在そのものに正気が宿っていない。動きも、どこかぎこちない部分が垣間見える。誰かに操られてでもいるのであろうか。
もし何かに操られているとしたら、気配を殆ど感じ取れなかったのにも説明がつく。だが、同時にこの大人数を使役できる程の実力者が近くにいるということでということでもあった。
突然、ピタリと彼らの動きが止まった。
かと思うと、全員がその場に崩れ落ちた。まるで操り糸が切れたかのように。
直後、私の体は一瞬にして吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、大量に血を吐き出してしまった。
使えるか否かも分からなかったが、咄嗟に回復魔法なるものを使った。
やはりこのエリスという人物は相当なものらしい。魔法は成功し、すぐに傷が塞がった。だが、体が受けたダメージを全て消すことは出来なかった。
死の足跡が近づく。
「(まさか、この時代でも、私は圧倒的な力で殺されてしまうというの?)」
死神の鎌がまるで目前まで迫ってきているかのような感覚に襲われた。
そして、暗闇から一人の魔女が現れる。
「まさか、あんなのにのこのこ誘われて来るとはねぇ〜」
これまでに感じたことのない魔力量と殺気。
「一族の恨みは、たーっぷり晴らさしてもらうからね!!!」
何か悍ましいものが魔女から放たれた。
突然すぎる幕引き。
それがこの体での最後の記憶であった。
次に目覚めたのは、見慣れた学園であった。
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