第9話 魔法

 「この時代も外は相変わらず魔物だらけね…それとも、この人が好きでこんな所に住んでるかのどっちかよね…」

  


 エリスという名を馳せた魔法使いの実力がどれほどのものなのか、試すことにした。


 程なくして私の匂いか気配か何かしらを感じ取ったであろう魔物たちが、次第に寄ってきた。


 「(集中して…指先に魔力を集約させる感じで…)」

 体を巡る魔力は想像以上に濃く、速く、膨大であった。この力が有れば………

 

 「まずは炎魔法、ファイア!!」


 轟音と共に超高熱の炎が周囲を焼き焦がした。魔物は塵一つ残っていなかった。


 「……は?」


 嬉しい誤算というべきか、はたまた想像を遥か上回っていたというべきか、そこまで強く魔力を込めたはずでは無かったが、下級であろう魔物を残滅させるには充分すぎる火力が出てしまった。


 「今度は他の属性も…火力過多にならないように、慎重にコントロールしてっと…」


 だが先程の轟音と炎熱で、気づけば周りの魔物は完全に逃げ出してしまっていた。


 仕方ない、地面に撃つか。



 

 ……数分後、訳が分からないほどの大穴が出来てしまった。



 「…この魔女、水雷風氷全部使えるのか…」


 

 ひょっとしたら補助魔法とかも一通り使えるのではと思ったが、色々試しすぎて疲れてしまったのでひとまず今日は休むことにした。



 「(この体があれば…誰にも負けることはないのでは?)」


 そう思ってしまえるほどの圧倒的な力。

 この力あれば、あの事件もなんとかなるのでは…



 「…あれ?ところで私はここで何をすれば良いの…?」


 厄介なことに、やはり頭の中には霧がかかったようなモヤモヤが点在しており、どうしても重要そうな記憶ほど思い出せないでいた。


 本来の私はあの時死んで…でも次は斬られて…


 考えれば考えるほど意味が分からなかった。


 「とりあえず、依頼をこなすなり、人に会いに行ってみようか。」


 私はひとまず、この体で暮らしてみて、あれこれ考えることにした。だが、無知な私はこのエリスという人物を知らなさすぎた。


 次の日、まずは私は依頼書にあった場所を目指すのだった。


 




 




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