第8話 再開
目覚めると、そこはベッドの上であった。
無意識に数分前に切られた部分の感触を確かめた。
だが、切られた後の様なものも、出血も何一つ見当たらなかった。
体を起こし、辺りを見回した。
そこは見たこともない部屋であった。
よくよく部屋の隅まで見ると、魔法書のような物や、液体の入った瓶のような物が見受けられた。
不意に自分の胸のあたりを触った。
そこには確かな感触があった。
「…女性の体…?元の体に戻れた…?」
しかしその考えはすぐ打ち消された。
おもむろに立ち上がり、自分の姿を確認しようと部屋を歩いた。
どちらかといえば、整理整頓されていない部類に入るであろう部屋であったが、幸いにも、鏡はすぐに見つかったので、姿を確認することが出来た。
その鏡に映ったのは、女性の体であったが、本来の私の体ではなかった。
髪は艶やかな金色で、所々黒色の毛が混ざっていた。
他人からすればぱっと見では分からないかもしれないが、エマの本来の体よりも身長が高く、よりスラっとした体つきになっていた。
手足も見るからに華奢で、自分で言うのもなんだがかなり異性にモテるのではないかと思ってしまうほどの美貌であった。
「また別人の体に乗り移ってしまったというの…?」
必死に頭を回し、記憶を思い起こそうとするも、肝心な部分は全く思い出せなかった。
ふと、部屋の隅を見ると、高貴そうな帽子とかなり年季の入った杖の様なものが目に入った。
辛うじて覚えているエマであった頃の記憶を手がかりに、一つの解を導き出した。
「おそらく私は、今度は魔法使いの身になってしまったみたいね。」
少しでも情報が欲しい…そう思い、机の上の書物や紙に目を通し始める。
[『依頼書 エリス・アンジェラ様』]
『偉大なる魔法使いと専ら評判の貴女様に直々に依頼を…』
その魔法使いの名前には心当たりがあった。
「騎士ヴァンや私たちが生きていた時代よりもさらに少し遡った頃、絶大な魔法を武器に戦っていた大魔法師…」
どうやら、とんでもない魔法使いになってしまったらしい。
「…うーん…でもこの人が何をどうしていたかなんて、全く分からないのよね…失踪したのか、殺されたのか、それとも普通に天寿を全うしたのかすら…」
結局、悩みはしたが行動しないことには埒があかないと思い、必要になりそうなものを手に取り、外へ出るのであった。
外は、案の定魔物で溢れかえっていた。
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