第2話 開戦
目を覚まして外を見渡すと、やはり征伐戦初日とあって通りは賑わいを見せていた。準備に走るもの、騎士団を一目拝もうと出てくる一般市民、所々には私の所属する学園の証をつけた学生らしき人物も既に見える。
「とうとう初日が来たかぁ〜っと、早く準備しなきゃ!」
多少慌て気味にエマは支度を始め、武器防具と道具の最終確認を行い、学園生徒の集合場所へと向かう。
「やほやほ!魔法科序列一位のエマちゃん!」
集合場所へ向かう途中、背後から明るく元気な声で呼び止められる。
「何よ、フレイ…相変わらず朝から元気ね…」
剣術科序列三位のフレイ。男子を押し退け序列三位の成績を修める天才である。その明るく元気な振る舞いは学園随一。どうやってその体つきで剣術科で三位まで上げることが出来たのか不思議なくらい華奢で綺麗に整った体型をしていて、男子からの人気ももちろん高い。
「だーって、今日は待ちに待った征伐戦初日よ!テンション上がらないの??」
「私をあんたみたいな戦闘狂にしないで。」
「ええ〜?序列一位の時点で充分頭狂ってる部類だと思うよ〜」
綺麗にまとめられた紫紺のポニーテールをゆらゆら揺らしながら、私の目の前をウロウロするので、いっそのこと焼き払って痛い目に合わせよう…とも思ったが接近戦で彼女に一切勝ったことが無いので、渋々フレイの会話に付き合いながら、気づけば集合場所に着いていた。
「あれ、リンじゃない!」
「エマ!!隣にいるのは剣術科のフレイさんね、はじめまして!」
「はじめまして!!剣術科序列三位のフレイだよ〜!よろしくね!…って色々もっとお喋りしたいけど、ちょっと先行かなきゃだから、またね!!」
「じゃあ今回の征伐戦が終わったらみんなでまた集まりましょうね!!」
剣術科はまた少し別の場所に一度集まるらしく、私とリンはここでフレイと手を振って別れた。
「ところで、リンは今回不参加じゃなかったの?」
「そもそも参加出来ないはずだったけど、追加で医療班に学園からも派遣が決まったから、急遽行くことになったのよね、まぁでも、医療班完全に裏方みたいなものだから。」
屈託のない笑顔でそう話すリンを見つめていると、今日が征伐戦であることを忘れてしまいそうになる。
加えて、ここ何十年もさほど被害が出ていないこともあって、この都市自体の雰囲気は戦いの当日であろうが、流石に緩み過ぎているように思えて仕方が無かった。
「…まぁ、今回もこれまでと同じようにすぐ終わるでしょ…」
一時間後、先頭の部隊が交戦を開始したとの連絡が入った。学園の生徒の中では、戦いが始まったことにより緊張し始める者であったり、余裕そうな面を浮かべていたりする者など、多種多様であった。
「よぉ序列一位サマ、ご機嫌斜めか?」
「うっさいわね脳筋ベリル、何かご用?」
待機と移動を繰り返す中、私の隣にいた茶髪の大男が話しかけてきた。
「相変わらずクールだねぇ、せっかく征伐戦に参加できるってのに、テンション上がらねぇのか?」
「どうせ今回も前回前々回同様、私たち学園生徒の出番もなく片付くでしょうよ…それこそ私たちの出番ってなったら…その時はやばい時なのかもしれないけど…そのために今まで修練を積んできたのでしょう?」
「まぁ十中八九そうだろうよ、でも最悪そうなったとしてもあんたが出る前に序列二位の俺様の炎と雷の魔法で全部おしまいって訳よ!」
「どうせあんたは強力なやつぶっ放すことしか考えてな……」
途端に強烈な地響きが都市を襲ったかと思うと、すぐさま遠方で大爆発のような音が聞こえてきた。
ほんの数分、混乱はあったものの、都市はすぐに落ち着きを取り戻した。
だがすぐさま発せられた教師の指示の声に、生徒達の約半分は驚くこととなる。
「第一陣を構成していた騎士団の多くが敗北し、第二陣、三陣もかなり苦戦しているそうです。これから貴方達にも戦ってもらわねばなりません。」
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