第182話 デート"ミリア、リーン編"
「ごちそうさまでした!」
「ご利用ありがとうございました…………」
死んだ目の店主に見送られ、俺とミリアとリーンの三人は中華風の料理店を後にする。
あそこは王都の中心部にある有名な老舗の飲食店で、見た目通り中華風の料理を中心に提供している。
俺達は先程まであそこでお昼を食べていた…………………のだが。
ちょっとした……………いや、お店側からしたら
お昼より少し前の事だ。
午前中はアクセサリーショップに寄ったり服を見たりと、結構ぶらぶら歩いていた。
時間も時間だったので、どこか良いお店はないかと三人で探していたら、例のあのお店を見つけたのだ。
店名が書かれたのれんの隣には、"食べ放題"という文字が掘られた看板が。
当然食い付いたのは我が家一の大食らい、リーンである。
その食欲はまさに底無し。
リーンVS俺達全員でも勝てる気がしない程。
さて、そんなリーンが食べ放題に行ったらどうなるか。
そんなの決まっているだろう。
店側が破産するかリーンが満足するかのデスマッチが始まる(そんな事はない)。
快く来店させてくれた店主の顔色が、時間が経つと共に青ざめていくのがもの凄く申し訳なかった。
あの顔色の変わり様はもはや芸術的だ。
最後の方には、もう一周まわってじゃんじゃん料理持って来てたしな…………。
笑顔なのにどことなく泣き出しそうに見えたのは俺だけでないはず。
※リーンの食欲の前では正常な判断が出来なくなります。
すまん名も知らぬ店主…………今度普通に食べに行くから許して。
「はふぅ、美味しかったですね………」
「ね!特にあの…………肉野菜炒め?あれが美味しかったわ」
「分かる。あれってレバー使ってんのかな………」
先程のお店で食べた料理の一つで、前世でも馴染みのある肉野菜炒めをそのまんま異世界で再現したような料理だった。
野菜は名前が違うだけで味は覚えがあるやつだったけど、どうも肉が何なのか分からなかったんだよね…………。
美味しかったけど、こう…………なんとも言えない食感だった。
言わばレバーに近い感じ。
あれはあれでアリだと思う。
広場を通ってメインストリートに戻り、いっぱいになったお腹をさすりながら、まだ食の内容で盛り上がっていると。
不意に道の向こうから声をかけられた。
「あ、マシロ君じゃん!」
「え?あ、クリスさんだ」
人波の向こうで、こちらに手を振る蒼髪の女性が居た。
ダグラス商館で受付として働いているクリスさんだ。
今日はいつものようなスーツ姿ではなく、カジュアルな私服で何やら木箱のようなものを抱えている。
なんでこんな所に………?
疑問に思いつつ、二人が会いに行きたいと言うのでクリスさんのところへ向かう事にした。
「やー!二人とも久しぶりぃ!」
キャー!と歓声を上げたクリスさんが荷物をほっぽり、ミリアとリーンに抱きついて頬をすりすりと擦る。
確か二人とは、この前とある用事でダグラス商館に寄った時以来かな?
約半月ほど前だろうか。
あの時も同じような反応をしていた気がする。
相変わらずなようで安心した……………と言うかそこ代われ。
「え、三人は何してたの!?デート!?」
「えっと、うん…………今日はシロ様とリーンと、デートなの……」
「今日だけは私とミリアちゃんで主様を独占中なんです」
………………なんすかね。
意味ありげにニヤニヤしながら、クリスさんが肘で小突いてくる。
この人本当に裏がめんどく…………ごほんごほん。
なんでもないです。
実はクリスさん、表裏の豹変度が激しいのだ。
普段、受付嬢としてモテモテな表はおしとやかな女性なのに、裏…………と言うか素に戻るとその言動はもはやエロオヤジそのもの。
ちょっと対処するのが大変だったりする。
「てか、むしろクリスさんは何でここに?」
「ん?ああこの店、私の実家なの。今は本業が休暇だから手伝ってるってわけ」
クリスさんが後ろ手にくいっと指さしたのは、シンプルかつオシャレな装飾のなされたお店。
看板にはマッサージ店と書いてあった。
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