第181話 デート(5)
「───────主、着替えた。見て……!」
カーテンを払い除け、とてとてこちらにやって来たクロ。
今度のはショートパンツに無地の黒色のシャツと、シンプルかつかっこ可愛い服装に変装していた。
「おー!似合ってるぞクロ〜!」
「んぅ〜」
褒めて欲しそうにピコピコ動いていた猫耳ごと頭をわしわし撫でると、クロは気持ち良さそうに目を細め声を漏らした。
しっぽもブンブン振られてご機嫌である。
可愛い系もありだけど、やっぱクロはこっち系の服が似合うなぁ…………。
シンプルイズベストってのはまさにこの事だろう。
ドヤ顔でふんすっ、と鼻息を漏らすクロもまた愛おしい。
「ふっふっふっ!真打は遅れてやってくるものですぅ!」
「ぬ!?」
「なん…………だと………!?」
バサッと大仰にカーテンを振り払い、謎なまでに堂々としたドヤ顔で胸を張って出てきたイナリ。
さりげなく暗に前座扱いされたクロが衝撃を受け、対してイナリの姿を捉えた俺は言葉を失った。
肩出しニット…………だと………!?
イナリが身にまとったベージュのニット。
さすがドヤ顔をぶちかますだけあり、その破壊力は凄まじかった。
肩周りはほとんど露出していて、惜しげなく晒されたシミ一つない肌と豊満な谷間がとにかくエロい。
肌が見えてる分、胸の強調のされ方がえげつないぞ……………。
ちなみに下はニットに隠れて履いているのかいないのか分からず、むっちりした太ももを途中までしゅっとさせた黒のタイツもまた大変よろしかった。
鼻を押さえながら、無言で感謝のサムズアップ。
クロのジト目がすごく痛い。
「いや、ほんと…………ありがとうございます………」
「えへへ〜!喜んでいただけたようで何よりです!」
ぴょんっ!と試着室の台から飛び降りて、イナリが突撃気味に俺に抱きつく。
触れた場所から柔らかさが直に伝わってきて、一瞬トリップしそうになってしまった。
すげぇ、胸ってあんなに揺れるもんなんだな…………。
呆然とそんな事を考える。
ムスッとしたクロに頭をグリグリされた。
どうやら顔で考えてることがバレバレだったらしい。
そんなにだらしない表情をしていたのだろうか。
期待するような二つの上目遣いの眼差しに答え、頭をポンポンする。
しっぽが先程以上に左右に荒ぶってブンブン音を立てた。
可愛い。
可愛すぎる。
「実はですね、ご主人様。最初はこっちのに着替えようと思ってたんですよ」
「ん?どれだ………………………………ガイン、集合」
「?おう」
「「…………?」」
イナリが何気なく取り出した、その"着る候補"であったと言う洋服。
俺は思わず二度見してしまった。
素晴らしく綺麗な二度見。
すぐさま浮ついた気分は一周まわってすんっと落ち着いた。
遠目で俺達を見守っていたガインを手招きし、端の方で男二人肩を組む。
「…………………ガイン、なぜあれを持っている」
「あ?なんだ、お前あれの事知ってんのかよ」
とある事情のため、コソコソ声で話す俺とガインに二人から疑問の視線が送られるが、ちょっと待ってて欲しい。
「そりゃ知ってるけど…………逆になんでガインが知らないんだよ」
「知り合いの行商人に押し付けられたんだ。俺ぁ要らんから、欲しいならやるぞ?」
「マジで?」
真剣な声色で聞き返した俺に若干ドン引きしながらも、ガインは快く承諾してくれた。
よし。
さて、皆さんも気になっているであろうイナリが"試着候補"に上げていた衣服。
その名も─────────"童貞を殺すセーター"だッ…………!!
俺は多くを語るつもりはない。
が、先程イナリが着ていた肩出しニットより
………………てかそれを堂々と着ようとしてたイナリって…………。
※気になる人は"自己責任で"調べてみてね!
その後、さらにファッションショーは続き、色々と大量にお買い上げして"服屋ガイン"を去った俺達は、再びメインストリートに戻った。
ちょうどお昼時だったので、そのままそこら辺の露店でパンやら串焼きやら
「はふはふっ………!ちょっとこの時期食べるには熱すぎるけど、美味しいね」
「ん。肉汁たっぷり」
「あつっ!?うぅ………舌を火傷しちゃいましたよ………」
小籠包ってあんなに肉汁溢れるものなんだね…………。
猫舌な分、警戒しながらちびちび食べてた俺と、なぜか全く意に返さないクロは無事に食べることができた。
しかしそんなこと知らなかったイナリは、思いっきりかぶりついて痛い目に会っていた。
デザートのフルーツの盛り合わせも美味しかった。
食事を終えると次は武器屋に寄った。
実は今までクロが使っていたダガーが、市販のものすっごい安いやつと判明したからだ。
せっかくだからオーダーメイドで武器を作ってあげたいところだが、さすがに一日じゃどうしようもないので、ひとまず良質なダガーを一つ買ってプレゼントした。
クロ専用の武器を作るのはまた今度だ。
武器屋を出たあとは、近くの市場で適当にぶらぶらしながら露店を見て回った。
アクセサリーやビーズ、骨董品や食器に怪しげな壺まで、色々なものが売りに出されていた。
さすがに道端のシートの上に、某カードゲームに出てきそうな人面の壺が置かれているのには驚いた。
絶対あれ呪われてるだろ…………。
ちょっと怖かったので見なかったことにした。
ここでは二人が本とネックレスを買ってくれた。
服やスノードーム、くしとかのお返しだそうだ。
一生大事にさせていただきます…………。
こんな感じで、夜までひたすら色んな場所を巡って俺とクロとイナリ、三人のデートは幕を閉じた。
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