第163話 もう1つの結末
「くっ、クソ………!!」
マシロとミリアがイチャイチャ(?)する草原からそう遠くない森林の境目で。
ガサガサと背の高い雑草を掻き分けて歩いてきたのは、赤黒い肉の触手を伸ばした生首だった。
言わずもがなエビルである。
大量の出血で意識が
最悪の屈辱だ。
あんな小娘に無様にやられ、こんなにも惨めな姿に成り下がってしまった。
エビルは歯を食いしばり、憤怒で血を流す。
(覚えていろ………!必ず殺してやる………!!)
「──────────いいえ、そうはさせません」
「っ!?誰だ!」
ばっ!と振り返り、声のした方向に威圧を込めた魔力を向けて叫ぶ。
すると奥から四人、種族の違う少女達が姿を現した。
おそらく吸血鬼族であろう漆黒の翼としっぽ、角が生えた金髪の少女に、猫人族と思われる白髪猫耳幼女。
そしてもう二人は……………人族だろうか。
気配は何となく魔族にも似ているものの、姿は完全に人族そのものである。
なんとも言い難い不思議な気配の持ち主だ。
(それにしても、実に
この程度なら今の状態でも十分に倒せ得る。
「やはり人族とは実に愚かな種族だ…………」と内心ほくそ笑む。
なにせ自分からエネルギーになりに来たのだ。
滑稽なことこの上ない。
ついでに少しでも力を回復しようと、意気揚々と触手を伸ばした次の瞬間。
ゾワワッ…………!!と背筋に悪寒が走り、エビルは思わず飛び退いて距離を取った。
冷や汗が止まらない。
「あら、意外と冷静なんですね」
自分を睨む一対の瞳。
別に魔力や気迫で圧をかけられている訳でも無いのに、ただひたすらに体が硬直して動かない。
(なんだ、これは…………!?)
言うなれば根源的恐怖。
その吸い込まれるような瞳に相対してはいけない何かを感じる。
無防備なこの状態でもこれだけの明確な実力差があるのだ。
魔力が解放されればあっという間に殺されてもおかしくない────────。
"おそらく、万全の状態でも敵わない"。
そう思考が浮かんだ時にはもう逃げ出していた。
しかし。
ザンッ!!
「がっ!?」
的確に放たれた不可視の風の刃がエビルの頭部を縦に真っ二つにし、続いて放り込まれた黒い炎で灰も残らず焼き払われた。
悲鳴や恨み言なんて呟く暇もない。
あまりにも一瞬の出来事だった。
「……………あなたが、執拗に大勢の方の命を弄んだ報いです」
「むぅ、ただやっつけるだけじゃ優しすぎないかな?」
「ですです!あの男、許せないです!」
これまたあっという間に消火された焼け跡を前に、若干不満げな表情でうがー!と手を振り上げたのは先程の猫人族の幼女と、明るいオレンジ色の髪を腰まで伸ばしたチャイナ服の少女。
どうやらエビルの所業がどうしても許せないらしい。
それに関しては同意する。
だけれども。
先程、エビルにとどめを刺した紺色の髪の少女はため息をつきながら。
「私達の目的はあくまで"───様"の相手として相応しい方を見つけること。過度な干渉は"───様"のためにもなるべく避けなきゃ」
「うぅ〜、でもぉ!」
「"───さん"の石頭ぁ!頑固者!お胸まな板!」
「………………あら、"───"ったらそんなにお説教されたいの?普段からまともに働かない癖に口だけは随分と達者ねぇ………!」
「ぎゃああ!?痛い、痛いですよぉ"───さぁん"!!」
「ちょ、お二人とも落ち着いてください!バレちゃいますよ………!」
ビキッ!と額に青筋を浮かべた少女が、じたばた暴れるチャイナ服の少女を捕まえて頭を両の拳で挟み、ゴリゴリと音を立てる。
結構騒いでしまっているので、向こうにいる"彼"に見つからないか吸血鬼少女は大変心配である。
「"───しゃま"、あの人がそうなんですか?」
「え?あ、はい、そうですよー。あの方ならきっと、何とかしてくれます」
二人の視線の先には、ミリアを連れて我が家へと向かうマシロの姿が────────。
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