第115話 宴会
「うへへぇ〜、やっぱりセンリのお酒は美味しいねぇ〜!」
「わっはっは!当然じゃ、ワシが年月をかけて丹精込めて作った物だからのぅ。…………どれ、お主のクニの郷土料理とやらも食させてもらおうかの!」
氷でできた崖の上から、上機嫌な笑い声が二つ聞こえてくる。
お互いお酒や手土産の料理などを持参して、仲良く
二人の周りに置かれているのは、何かの肉を薄い皮で包んだ
そして、センリが自分で作ったらしいお酒の入った氷の入れ物等。
久々の再会に弾む会話を
「お二人共、すっごく楽しそうですね………!」
「だね。こりゃシュカ連れて来て正解だったな」
そんな二人を下から眺め、イナリと顔を見合せながら頬を綻ばせる。
俺達は俺達で二人からそれぞれ料理を分けてもらい、あっちほどでは無いが盛り上がってプチ宴会中だ。
二人は一緒でもいいって言ってくれたんだけど、二人っきりの方が出てくる話題もあると思い、一旦はこんな感じで分かれてやる事にした。
「主、クロもそれ食べたい」
「はいよ。ほれ、あ〜ん」
「あ〜…………んっ」
俺の膝の上に頭を乗っけて寝っ転がるクロのリクエストに答え、先程の小籠包のようなものを箸で取って食べさせてやる。
熱いから気をつけてね?
小籠包の肉汁は軽く凶器だからな……………。
前世で横浜の中華街に行った時に熱々の小籠包を食べたんだけど、その時は無意識に一口で半分くらい食べちゃって、マジで死ぬかと思った。
もう熱いのなんのって。
おかげさまで舌を火傷してしまった。
そんな経験則があるので、ぜひクロには注意して欲しい。
クロはこくりと頷き、ふー、ふー、と息を吹きかけると……………………………ばくしっ!と一口で小籠包を口の中に収めてしまった。
「あっ!?」
「もぐもぐ……………ん、美味しい」
えぇ…………よく大丈夫だね………。
なんと、熱々の肉汁をたっぷり含んでいたであろう小籠包もどきを一口で食べてしまったのにも関わらず、平然と
オマケに感想を言う余裕さえあるらしい。
テンプレよろしく猫人族は猫舌とかって訳じゃないのか……………。
あ、ちなみにクロは何も、好き好んでこんな体勢で食べている訳では無い。
傷は回復魔法で癒したものの、クロがセンリとの模擬戦の際に使ったと思われる技の副作用で、体が動かす度に悲鳴を上げているのだ。
本人
あのクロにすらここまで言わせるのだから、相当肉体へのダメージが高いことが分かる。
痛み的には全身筋肉痛に近い感じらしいが………………明らかに比べ物にならないくらい今の方が重症だ。
これに関しては魔法じゃどうしようもないからなぁ…………。
俺達にできるのは、こうやって身の回りのお世話をしたりするくらい。
センリに聞いた限り結構頑張ったらしいので、ご褒美の意味合いも込めていっぱいちやほやしないと。
「あ、クロさんこれもどうですか?"サンダーバイソンの丸揚げ"、ですって!」
「ん、食べる」
「ですよね!……………えっと、はい、あ〜ん」
「んむ、もっもっ……………」
イナリがどこからか持ってきたサンダーバイソンの丸揚げとやらを、必死に大きな口を開けてかぶりつく。
揺れる頬はまるでリスのようにパンパンだ。
その微笑ましい光景を見て、イナリはニヨニヨしながらふへへ………と幸せそうなため息を漏らす。
どうしたイナリ。
「えへへ…………なんだか必死に食べてるクロさんが小動物っぽくて、つい………!やっぱりクロさん可愛すぎます!」
どうやら今の状態のクロの可愛さにあてられて、それはもうメロメロらしい。
胸にズッキュン来たそう。
きゃー!とはしゃぎながら今度はフォークに肉を刺して、雛のように口を開けて待つクロに食べさせた。
分かる、その気持ちすっごいよく分かる。
「主、頭なでて〜」
「任せんさい!よしよし」
「んぅ〜………」
今のクロはちょっぴり甘えん坊だ。
いつも通りクロのきめ細やかな髪や耳を、クロが…………と言うか俺が満足するまで色んな方法で撫でたりもふったりしまくる。
クロが好きな耳の付け根をモフると、普段の無表情が若干崩れて気持ち良さそうに目を細めた。
あー、本当にクロの猫耳は触り心地抜群だ……………もう一生触ってられるね、うん。
されるがままのクロから少し手を離す。
すると、動けない体を必死に伸ばして、もっと撫でて!とでも言うかのようにグリグリ頭を押し付けてきた。
可愛い。
可愛すぎる。
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