第111話 洞窟へ(2)
さて。
そろそろ気がつく人も居るんじゃないだろうか。
あれ、一人居なくね?と。
いやいや、そんな事ないよ?
皆一緒に頑張ってるよ、うん………………。
別に気がついたら一人減ってる怪奇現象とかじゃないから安心して欲しい。
先程も言ったが、イナリは普段の修行やらなんやらで非常に
ここに約一名、普段のグーダラ生活のせいで堕落しきり、既に根を上げている鬼人が。
「あうぅ…………おじさんもうダメだよ〜…………。マシロ、おんぶして〜」
言わずもがな、自分をおじさんと
ぜ〜、は〜、と今にも倒れそうな息遣いで、なんとか俺の裾をちょこんと掴んで付いてきている状態だ。
日々だらけている生活が
こう言ってしまってはなんだがあまりにも貧弱すぎる…………。
まったく、しょうがないからおんぶをしてあげよう。
「お〜、さすがマシロ。なんだかんだ言ってもボクには優しいね〜。ソーカちゃんとは大違いだよ〜」
「いやたぶん反応としてはソウカが正しいんだけどね?」
「あっ!シュカ様だけずるいです!ご主人様、私もおんぶしてください!」
「ん、クロも」
「えぇ……………じゃあ交代でな」
二人の食いつきが凄まじい。
そんなにおんぶされたいのか…………?
よく分からん。
そんな感じで、わちゃわちゃしながら山道を登ること四十分。
思ったより時間がかかってしまったが、懐かしの大きな洞窟の前にたどり着いた。
ぱっくり開いた入口からは謎の冷気が漂っている。
「うぅ…………まだおしりがジンジンしますぅ…………」
「あれは完全に自業自得でしょうが」
それとは全く関係なく、自慢のムチッとしたおしりを擦りながら恨みがましい目で俺を見つめるイナリ。
実は先程、クロと交代しておんぶしたイナリがクンクンと俺の首筋に鼻を寄せて、「ふへへぇ〜…………」と頬をニヨニヨさせた事に純粋にドン引きし、思わず手を離してしまったのだ。
おしりを強打した時もきゃんきゃん吠えていたが、これは誰がどう見ても完全なる自業自得である。
…………………………まぁ俺も、背中に押し付けられる柔らかな感触を
ともかく、そんなイナリやクロとシュカと共に、洞窟へと足を踏み入れる。
しばらくは一本道が続き、冷気が強くなってきたのを感じていると、ついに前方に光が差す空間を発見した。
徐々に広がる道を行き、その空間に出ると──────。
そこは一面が氷に覆われていた。
所々がひび割れて欠片が散乱しているものの、ほとんどが綺麗な状態でキラキラと光を乱反射し、輝いている。
全員がその美しい光景に「ほう………」と息をつく。
「わぁ!ご主人様、すごいですよ!氷がいっぱいです!」
「…………おう」
いつも通り復活が速いのもさる事ながら。
イナリが興奮気味に俺の腕を抱いてピョンピョン跳ねる度に、豪快に揺れるお胸が当たってさあ大変。
こっちもすごぉい……………。
「すん…………主、この先行かない方がいい」
「ん?あ、もしかして気づいたか」
クロは近しい存在だから、この奥から漂う気配に気づいていてもおかしくない。
心配だったけどちゃんと居たようだ。
いつもならはしゃぐイナリに何か言ってもおかしくないのに、クロはじっと奥へと続く一本道を見すえるのみ。
それ程までに、その気配は大きいのだ。
「違う。女の匂い。主に媚び売る女の」
「えっ!?」
「媚び売るて……………」
しかめっ面で嫌さを全面に表したクロに、思わず苦笑いしてしまう。
すごく具体的だな……………。
今度はそんなに長くない。
唯一最初の道と違った仰々しい鳥居のような物をくぐる。
その先の空間も最初の場所と大して変わらず、目立った違いと言えば一切傷も裂け目もない氷と、中央にそびえるそこそこ高い円錐状の崖だ。
そこの上に、誰かが横たわっている。
ここからでは出っ張った氷のせいでよく見えないが、不意にちょこんと三角の何かが飛び出して、黒く細長いものがフリフリ揺れた。
「んあ〜、
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