第6話
図書館はエアコンが効いていて、とても涼しかった。図書館には何度か来たことはあるけど、あまり人が来ることはなかった。
だから、私たちがひそひそ話したところで、誰も注意はしない。
生活に必要なものは近くにあるから田舎とは言わないが、みんなはもっとテーマパークとか映画館とか非日常のキラキラした空間を味わいたいのだろう。
私は乃愛に、持ってきた数学と英語の課題を教えてもらった。
乃愛に解き方を教えてもらって、自力で問題を解いている間、乃愛は本を読んでいた。文庫本のサイズでページ数の多い本だった。
乃愛はもう宿題を全て終わらせたのだろう。さすがは乃愛だ。私とは違う。
宿題を一通り教えて貰って、数学の簡単な計算と英単語とイディオムの問題が解けずに残った。あとは自力で解けるだろう。
水分補給などでたまに勉強を離れることはあったけど、ろくに休憩もせずにぶっ通しでやっていたから、そろそろ終わろうかと図書館にある時計を見るともうすぐ午後四時になろうとしていた。
勉強を始めたとき、乃愛は本の初めの方のページを読んでいたけど、気づけば七割くらいは読んでいて、ページ数の多い紙束と少ない紙束が左右に分かれていた。
図書館の閉館時間が午後五時だったから、私たちは図書館を出る。
そこで乃愛に渡したいものがあるから公園に行かないかと誘われた。
渡したいものなら別にここで渡してくれてもよかったが、きっと乃愛なりの時間の稼ぎ方なのだろう。
私は彼女の誘いに乗った。
私は自転車を押しながら乃愛と歩いて、公園に向かう。
自転車は公園の前に停めた。
公園も図書館と同じく人気がほとんどなかった。たまに散歩をする人が通る程度だ。
夕日のオレンジを見ていると、乃愛と過ごした教室での穏やかな日々を思い出す。思わず顔が綻んだ。
私と乃愛は公園のブランコにそれぞれ腰掛けた。
乃愛は座るとまず私に虫除けスプレーを渡してくれた。乃愛は完璧だ。きっと当日に慌てて準備なんてしていないのだろう。
虫除けスプレーを使って、乃愛に返す。
子供の頃を思い出して、少しブランコを漕いでみた。こんなにブランコって小さかったっけ。子供の頃からこの公園でよく遊んだけど、ジャングルジムも滑り台ももっと大きかった……。この事実は私に、時の流れという残酷な真実を教えた。
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