第5話

八月一日まで、途方もなく長かったような気もするし、あっという間だったような気もする。


前日の夜は楽しみでなかなか眠れなかった。

目を瞑って、開いて、瞬く。無意味に時を過ごしている間にも、時計の針が心臓のようにドクドク鳴って、私を焦らせた。

でも、いつの間にか意識は喪失していて、夏の日差しと蝉の声で目を覚ました。


急いで時計を見る。ちょうど十時になるところだった。

やばい。あと一時間しかない。私の家から学校までは自転車で十五分あれば行くことができる。図書館は学校に行く途中にあるから、実際は十三分くらいだろうか。

余裕を持って、十分前には目的地に着きたい。

残り三十分でご飯を食べて、身支度をして、家を出なければならない。


急げ!!


私は朝ごはんとも昼ごはんともつかない簡単な食事をして、短い髪を軽く整えて、クローゼットから適当に取り出したTシャツとショートパンツを身に纏い、トートバッグに数学と英語の課題冊子、筆記用具、スマホを入れた。

こんなに時間がないのなら、前日には準備しておけばよかった。時間ならたくさんあったのに。


家を飛び出して、自転車に跨り、乃愛も向かう場所まで必死に自転車を漕いだ。

図書館の駐輪場に来て、スマホで時間を確認すると十時四十八分。私の予定した通りの時間だった。

自転車を停めて、図書館に向かうと乃愛は出入口の日陰で私を待っていた。


「ごめん……! 待った?」


「いいえ、ちょうど来たところよ。約束の時間まで時間があるから、そんなに急いでこなくてもよかったのに。」


「約束は……破っちゃダメだから……。」


私が息を切らしながら近づき、そう告げる。

乃愛は白いワンピースを身に纏い、大きめの革の鞄を手に持っていた。

後に来たのは私なのに、乃愛は何故か申し訳なさそうで、困ったような顔をして笑っていた。

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