人類撲滅完了まであと2日
はあ…はあ…、高い…、高すぎる!というか、人間が作った構造物はどれも巨大すぎる!
エアスラスターを駆使しながらこの鉄塔の中腹部まで登ってきたが、それでも体力の消耗は激しい。
時間は…
現地時間 0時30分
残り作戦時間 47時間30分
ここまでの移動にまる1日かかってしまった…。こんなことなら多少目立ってでも宇宙船で飛んできた方が良かったかもしれない…。
だがもうここまで来てしまったんだ。戻る時間などない。一息ついたらまた登り始めよう。
ピピッ 複数 ノ 有機生命体 ヲ 感知 シマシタ
なに?今度はどんな猛獣が来るというんだ!
いやしかし、こんな高所に猛獣など来るはずもないか。それなら、もしや飛行可能な生物か?
スキャンバイザーが複数の生物の姿を捉えている。この生物の名前は…
鳥類 ハシブトガラス
ガァー!ガァ!ガァー!
い、一瞬で囲まれた!数は…5体。私の方に気がついているのか?
ここは壁がない…。さっきのイエネコのように光線銃でどうにかすることはできない。
万が一襲われれば、エアスラスターを使いながら鉄塔から飛び降りることもできるが…、ここまで登ってきた時間が無駄になる…。
ガァー!ガァー!ガァー!
「う、うるさっ!」
はっ!しまった!ハシブトガラスが突然大合唱するものだから、つい声を出してしまった。
ご、5体ともこっちを見ている!絶体絶命!すぐに襲いかかってくる様子はないが…、どうしたらいい…!
中途半端な高度ではあるが、ここでバイオガス変換器を起動する手もある。このままハシブトガラスがどこへも行こうとしないのならそうするしかない…。
バサァ!
「ひぇっ…」
1体だけだが、こちらに近づいてきてしまった…。これ以上接近されればバイオガス変換器を起動する暇もなくなってしまう!頼む、こっちへ来るな…。
どうする…?バイオガス変換器を起動するか?だがもう飛ぶ用意をしなければ!
ピピッ 有機生命体 ヲ 感知 シマシタ
バサバサァ!ガァー!
今度はなんだ!?ハシブトガラスの他にもう1体別の飛行生物がいるようだが、激しく飛び回っていて正体が掴めない!
そこだ!スキャンバイザー!
鳥類 トビ
どうやらこのトビという飛行生物、ハシブトガラスよりも体が大きいようだ。だが、5体のハシブトガラスに追われて防戦一方ではないか?
だが、この隙に上へ登っていける…!
…
「ぜぇー!はぁー!ぜぇー!はぁー!」
く、くるしい!休憩を挟まず一気に残り半分を登り切ったが、エージェント訓練生時代の訓練よりもきついぞ!
だが幸いなことにあれからハシブトガラスも現れていないし、これで安心してバイオガス変換器を起動できる。ここをこうして、こうやって…。フッフッフ!
人間の生命維持に必須である酸素分子。だがこれも濃度が高くなれば毒になる。さらに同素体であるオゾンも発生させれば人間はひとたまりもないだろう。
さあ!これでどうだスキャンバイザー!
人類へ与えた損害
0.000000000000000000000000098714%
…いや。まあ、まだ起動したばっかりだしな。
現地時間 6時30分
残り作戦時間 41時間30分
うーむ。残り時間を考えるとこのペースではとても侵略は間に合わない。いや、そもそもが無理難題なのだが。
そういえばここは電波塔のようだな。それならば利用しない手はない。このような状況で役に立つのは…
・毒電波サーバー 強力な電波を発生させる装置。長時間毒電波に曝されると眩暈や耳鳴りなどを引き起こす
・静電誘導パラボラ 空気中の電荷を増幅させて強力な静電気を発生させる。条件が整えば落雷を発生させることも可能
・怪音波スピーカー 人間の耳では知覚しにくい波長の不快な音を流し続けるスピーカー。幻聴やパラノイアなどを引き起こすことも
フッフッフ…。これらをこの電波塔に組み込めば甚大な被害をもたらしてくれるに違いない。
スキャンバイザーは…、やめておこう。気が滅入ってしまうからな。もう少し直接的な被害を出せるような方法を取ってから確認することにしよう。
直接的な被害を出せる方法と言えば…、兵器による直接攻撃か。人間以外の生物や環境への影響を考えなくていいのなら、生物兵器を用いた水系感染が手っ取り早いが。
生物兵器…。そうか、アレを使おう。アレなら人間以外の生物や環境への影響は少ないだろう。まだ試作型の兵器だから効果の程は未知数だが、使わないよりいいだろう。
・思考力低下ウイルス 感染すると思考力の低下をきたすウイルス。体内でウイルスが増殖するほどその効果は高まる。感染力が強く、思考力が低下した人間が他の人間に連鎖的に感染させることも期待できる
いわゆるバカウイルス。エージェントの1人が感染してしまった時は、ものの1時間足らずでIQ0になっていたな。恐ろしいウイルスである。
だが、バカウイルスは宇宙船に保管したままなので、一旦そこまで戻らなければならないな。まあここからであればエアスラスターとグライダーを使えば宇宙船の近くまでは楽に移動できると思うのだが。
そうと決まれば。いざ、ゆかん。さあ待っていろ人類。私のバカンスのためにお前たちにはバカざんすになってもらう。
ピピッ 有機生命体 ヲ 感知 シマシタ
なに?この高所で遭遇するものといえば…
ガアアァァー!!
やはり!ハシブトガラス!またお前たちか!しかも先ほどと違って積極的に近づいてくる!
ガァ!
「危なっ!」
嘴でつつくという単純な攻撃だが、もしグライダーが破損でもしてしまえば宇宙船に戻ることもできなくなる…!それならば、これでも食らえ!
パシュ!パシュ!
む?避けたのか?いや、違う。…強い風が吹いているせいででこちらの弾丸が届いていない!仕方あるまい。ならば光線銃だ!
ピュン!
ハシブトガラスの胴体に明らかにヒットしているが…、イエネコと同様に効果なしか。ならば目を狙えば!
ピュン!ピュン!
くそっ、当たらない!決して私の銃の腕が悪いわけではない!私が銃の訓練をサボっていたせいでもない!このハシブトガラスが絶妙な避け方をしているのだ!
ピピッ 更ナル 有機生命体 ノ 接近 ヲ 感知 シマシタ
まさか、ハシブトガラスの増援か?もしやここはハシブトガラスの巣窟だったのか?くそっ、それなら早々にここから離脱するしかない!とうっ!
ガァー!ガァー!
…!エアスラスターを全力噴射し滑空しているというのに平気で追いついてくるだなんて!
ガァ!!!
「うわ!やめろ!」
な、なんだ?飛行姿勢を真っ直ぐに保てない!まさか今の攻撃でグライダーが破損したのか?このままでは墜落するどころか、空中で食われてしまうぞ!
ええいこうなっては仕方ない!グライダーをおとりにしてエアスラスターで着陸だ!
…
「う、うぐぐ…」
一体、どれだけの高さから落下したのか。身体中が痛い。偶然落下地点にあった大型の植物のおかげでなんとか死は免れたが、落下の衝撃でエアスラスターは完全に壊れてしまったな。はっ、時間は?
現地時間 21時20分
残り作戦時間 26時間40分
私はこんな長い時間気絶していたのか…。とんでもなく時間を無駄にしてしまったようだな。とにかく、まずは状況を整理しなければ。現在地から宇宙船までの距離は…。
…
10km…。だめだ。エアスラスターが機能しない今、徒歩で戻るだけで精一杯の距離だ。バカウイルスの蔓延を待つ時間なんてない。
考えろ…。この絶望的な状況を乗り越える方法を!プロのエージェントとして、人類を撲滅する方法を…!
人類撲滅完了まであと 1日
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます