Side アブデュル
(な、なんっ、何なんだこの女は!?)
アブデュル・ムラマハト・トゥルクは混乱していた。
(空から降ってきた!?)
「アブデュル殿下! アブデュル殿下アブデュル殿下アブデュル殿下アブデュル殿下アブデュル殿下アブデュル殿下アブデュル殿下――」
五歳くらいだろうか。
金髪碧眼の少女が空から降ってきて、こちらの腕の中にすっぽりと納まったのだ。
その金髪少女が、こちらに頬ずりをしてくる。
(ヒッ――怖い!)
「無礼者! 殿下から離れろ!」
護衛騎士のバース――身の丈3メートルの虎人族が、ナゾの少女の首根っこをつかんで、アブデュルから引き剥がした。
少女はそのまま、勢いよく宙へと放り投げられる。
「あっ」
アブデュルは思わず声を上げてしまう。
護衛のバースにとって、アブデュルの身の安全を守ることこそが最上の使命。
だから、バースの行動は正しい。
だが、あんな小さな女児が放り投げられてしまっては、大ケガをしてしまう!
「これは、大変失礼をいたしましたわ」
だが、心配は杞憂のようだった。
少女がくるりと身をひるがえし、鮮やかに着地したからだ。
ふわり、とスカートが舞う。
そのまま、流れるような所作でカーテシーをひとつ。
「わたくし、この家の長女のヘラ・フォン・アイゼンベルクと申します」
大人びた笑みを浮かべ、少女が目礼した。
汗ひとつかいていない。
(何だ、何なのだこの娘!? 虎人族の血でも入っているのか!?)
少女の驚くべき身体能力に、アブデュルは開いた口が塞がらない。
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