第11話「結末」
私は真っ暗な、何もない空間に立っていた。
いや、1つだけある。
小さなモニタが、置いてある。
私はモニタをのぞき込む。
モニタの中で、小さな少女が――アフロ頭の少女・AIアフロちゃんが一心不乱にプログラミングをしている。
私たちの『一生のお願い攻撃』で崩壊してしまった世界を、復旧させようとしているのだろうか。
『アフロちゃん……』
声がした。
AIアフロちゃんの後ろに、もう一人の少女が立つ。
アフロディーテ令嬢――風呂先生だ。
『もういいんだよ、アフロちゃん。キミは頑張った』
風呂先生がアフロちゃんを後ろから抱きしめる。
アフロちゃんはびくりと体を震わせたあと、その手を止めた。
『キミのお陰で、「アフロディーテ物語」は大ヒットした。100万本だよ? 大成功だ。キミのお陰だよ。だから』
風呂先生がアフロちゃんを抱きしめる。
ぎゅっと、ぎゅっと。
その様子を、私は――いや、恐らく1,012,351人のヘラたちが、モニタ越しに見守る。
『お疲れ様』
アフロちゃんの体が、光の粒子に変わる。
風呂先生の腕の中で、AIアフロちゃんは溶けて消えてなくなった。
風呂先生が、AIアフロちゃんが先ほどまで操作していたパソコンの前に座る。
しばらくプログラミングした後に、
『上手く、いきました』
風呂先生が言った。
『「アフロディーテ物語」を書き換えることができました。肉体が生きている方々は、蘇生。すでに亡くなっておられる方は、男性キャラ「ヘル」か女性キャラ「ヘラ」かを選択したうえで、3歳ごろ――物心がついたころから物語スタートとなります。ループはありません。死んだらお仕舞なので、慎重に人生を謳歌してください。まぁ主人公補正を付けておりますので、早々死ぬことはないと思いますが』
「風呂先生は? 風呂先生はどうするんですか?」
『私は――』
私の声が届いたわけでもないのだろうが、風呂先生が語りだす。
『私はここで、「アフロディーテ物語」の管理運営を続けます。みなさんの、最後の1人が天寿を全うするそのときまで。それがせめてもの、私の責任の取り方です。それでは皆さん、最後の、良き人生を』
◇ ◆ ◇ ◆
「――っは!?」
次に目が覚めたとき、私は良く知る寝室にいた。
ベッドも同じ。
だが、起き上がってみると体が小さい。
「3歳児でリスタートってわけね」
それでは、私――いえ、わたくしヘラ・フォン・アイゼンベルク最後の1周、スタートですわ~!!
「アブドゥルでんかにあいにいきますわよ!」
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