第10話「人生最後の、『一生のお願い』」

『AIをフリーズさせるって言うけどさ、そもそも「一生のお願い」を管理してるのはそのAIなの? ゲームシステム自体をフリーズさせることになったりしない? そうなったら、俺たちみんな死んじゃうんじゃないの?』


 …………うん。

 あえて言わなかったけど、その可能性も十分にある。

『アフロディーテ物語』が崩壊し、私たち全員が死ぬ――消滅してしまう可能性が。


「それの」


 私は、言う。

 こういう問いが来たときのために、あらかじめ用意していた答えだ。


「何が問題ですか?」


『は?』

『え』

『いや、問題だろ』


「逆に聞きますが皆さん、このまま一生死に続けたいですか? 未来永劫終わらない、地獄の3年間をループしてループしてループしてループしてループしてループしてループしてループしてループしてループしてループし続けたいですか? 何千回、何万回、死んで死んで死に続けたいでですか? 本気でそう思ってます?」


『それは』

『う』

『いやまぁ』


「これは、賭けです。私たちは全員死ぬかもしれない。逆に、地獄のループから解放されて、4年目以降を生き、ヘラとして天寿を全うできるかもしれない。肉体が生きている一部の方は、現世に復活できるかもしれない」


『成功してもヘラのままじゃなぁ。男の人生が恋しいよ』

『それな』

『俺も、どうせなら男に生まれ変わりたい』


 男ユーザーさんたちの、切実なコメント。


「上手いことAIアフロちゃんをクラックできたら、好きなキャラでリスタートさせてもらえるかもしれませんよ? まぁ、全ては憶測ですが」


 否定的な意見が減っていき、肯定的な意見が増えていく。


『そうよ。こんな地獄はすぐにでも終わるべきだわ。結果として私が死んでしまっても、地獄が続くよりずっとマシよ』

『ですよね。それに、死ぬと決まったわけじゃないし』

『やろう!』

『そうね!』


 やがて意見は、『一生のお願い攻撃』でAIアフロちゃんをオーバーフローさせよう、という方針で一致する。


「それではみなさん、いいですか!?」





『『『『『一生に一生で一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の一生の――』』』』』





   ◇   ◆   ◇   ◆





『『『『『――一生のお願いです! この地獄を終わらせてくださいまし!!』』』』』


 とたん、『バチンッ』という大きな音とともに、目の前が真っ暗になった。

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