第3話「アフロディーテの中の人、判明する」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」


 アフロディーテがぽかん顔になってる。

 まぁ、そりゃそうだよね。

 宿敵から『一生のお願い』で『親友になって』とお願いされたんだから。

 私――ごほんっ、わたくしだって、我ながらコレはない、と思っておりますわ~。

 ですが恐らく、コレこそが最適解。


 何といいますか、初めてアフロディーテの顔を間近で見た気がいたします。

 この子、こんな年相応の顔もできるんですのね。

 何百年と対峙し続けてきたのに、わたくしはこの子とまともに言葉を交わしたことすらなかったのですわ。


「ねぇ、どうかしら? お願い、聞いてくださらない?」


「なっ、なっ、なっ、何をバカな――」


 混乱しながらも、懐からナイフを取り出すアフロディーテ。

 ですがどうしても、わたくしに敵意を向けることができないらしく、刃先が上がりません。

 ……というかこの子、常時武装してるんですの?

 物騒すぎますわ~。


「わたくし、貴女のことが知りたいんですの」


「わ、わた、私なんかを――」


 アフロディーテがナイフを落としました。


「許してくださるというのですか? 貴女を何度も何度も殺してきた、私を」


「許します。わたくしも貴女を殺してしまいましたから、おあいこですわ」


 ずいぶんと殺伐とした『おあいこ』ですけれど。


「それに」


 さぁ、ここからが本題だ。


「わたくし、どうしても貴女と話をしなければなりませんの。『貴女』――アフロディーテの中の人、





 風呂浴み子先生と!」





「!? なんでそれを――」


「あぁ、良かった。やっぱりわたくしの予想は合っていたのですね。外していたらとんだ大恥をかくところでした。でも、アフロディーテが誰かの憑依・転生だとしたら、風呂先生以上の適任者なんて絶対にいませんもの。先生のアフロ・デ・アフロディーテのコス写真、最高でしたわ」


「あ、あはは……初めて実績コンプした方がアフロ・デ・アフロディーテスキンをTwitterにUPした、その翌日に投稿したやつですね。実はずっと前から準備してたやつでして。十万バズして嬉しかったなぁ」


「聞かせていただけますか? どうしてこんなことになってしまったのか」


「はい。きっと、貴女の『一生のお願い』のお陰なのでしょう。あれほど強かったはずの貴女に対する殺人衝動が、すっかり消え去っています。今なら、全てをお話しできると思います――」

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